ヤマト運輸は2019年5月30日、24時間いつでも誰とも顔を合わせることなく荷物の受け取りや発送ができるセルフ型店舗「クロネコスタンド」を東京江東区にオープンした。ユーザーの利便性を高めるとともに、再配達を減らし、人手不足の解消に役立てたい考えだ。
経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2018年の日本国内の消費者向け電子商取引の市場規模は、18.0兆円(前年16.5兆円、前年比8.96%増)に拡大。インターネットを使って物品を購入することは、もはや珍しいことではなく、人々の日常に浸透している。
ネット通販が年々増加する一方で、物流業界の慢性的な人手不足が問題になっている(関連特集「再配達撲滅 ネット通販「物流」革命」)。受取人の不在による再配達の増加が最大の要因だ。今回のクロネコスタンドを利用すれば、配達員が何度も再配達に訪れたり、利用者と電話でやりとりする必要がなくなり、人手不足の解消につながる可能性がある。
ヤマト運輸 宅急便戦略部 宅急便戦略課長の中西優氏は「ネット通販や個人売買サイト利用者の荷物が急速に増えている。その一方で、一人暮らしや共働きの人を中心に仕事などで家にいない時間の長い人が増えており、いつでもどこでも荷物を受け取りたいというニーズが高まっている。宅配ボックスを設置できない住宅も多く、その代わりとして利用できる。荷物を受け取れないというストレスを軽減したい」と設置の狙いを語った。
クロネコスタンドの利用には、近隣住民以外は会員制サービス「クロネコメンバーズ」の登録が必要だ。配達予定や不在連絡のメールを受信したときに、受け取り場所にクロネコスタンドを選択すると、荷物がクロネコスタンド内のロッカーに収められる。あとは好きな時間にクロネコスタンドで荷物が受け取れる。
ヤマト運輸は宅配ロッカー「PUDOステーション」での受け取りも進めているが、そこで取り扱えないゴルフバッグやスーツケースといった大きい荷物も受け取れる。セルフで「メルカリ」や「ヤフオク!」の荷物の発送も可能だ。無人なので、ヤマト運輸のスタッフと顔を合わせずに済む。
もうひとつの特徴は、荷物を受け取った際にかさばる空き箱や梱包材をその場で処分できる資材回収ボックスを店内に設置したこと。利用者は、受け取った荷物をその場で開けて、中身だけを持ち帰れる。個人情報が記載された送り状は荷物から剥がして専用の回収ボックスに入れると、ヤマト運輸が処理してくれる。通勤・通学の途中にあるクロネコスタンドを受け取り場所にすれば、受け取った荷物の箱はその場で処分して、中身だけをバッグに入れて勤め先や学校に行ける。
「荷物が届いたあと、箱や梱包材を捨てる手間を面倒に感じる利用者が多い。個人情報を適切に処理しつつ、空き箱を回収してリサイクルする仕組みを用意した」(中西氏)
今回オープンしたのは試験用の店舗で、利用者の反応をみてクール宅急便の受け取りに対応するなど、機能を拡張していく。宅配業界初というセルフ型店舗には、ヤマト運輸がかける意気込みが感じられる。