ソフトバンクとトヨタ自動車の共同会社、モネ・テクノロジーズの事業推進部長・上村実氏が、5月末に開催された日経BPの技術イベント「テクノロジーNEXT2019」に登壇。「モビリティサービスを共創し、移動における社会課題の解決」を目標に掲げる同社の今後の取り組みや、実証実験の経過などを報告した。

テクノロジーNEXT2019に登壇したモネ・テクノロジーズの事業推進部長・上村実氏
テクノロジーNEXT2019に登壇したモネ・テクノロジーズの事業推進部長・上村実氏

 講演の冒頭で上村氏は、日進月歩のテクノロジーの世界では5年後を見通すことも難しいと指摘しつつ、「モネ・テクノロジーズは、20年後の日本で役立つ会社でありたい」と展望を述べた。

 また、トヨタが開発中の自動運転の次世代電気自動車「e-Palette(イーパレット)」が、数年後にも実用化される可能性に言及した。上村氏によると、e-Paletteの使用例として、移動型コンビニやオフィス、フードデリバリー、診察前に検診を受けながら病院まで患者を輸送する“病院シャトルサービス”としての役割が挙げられるという。

「e-Palette」は主にBtoB市場での活用を想定している
「e-Palette」は主にBtoB市場での活用を想定している

 上村氏によると、モネ・テクノロジーズは、「最新テクノロジーを駆使した独自のモビリティプラットフォームを提供することで人・モノ・サービスの動きを最適化し、スマートシティの実現を目指している」という。具体的にはIoTで渋滞を予測し、信号の制御などでクルマの流れを最適化したり、専用モビリティを導入して移動需要に合わせて連結数を増減したりといった施策を想定している。

 一方で、スマートシティ実現のために解決しなければならない都市部の交通問題や地方の社会課題についても指摘した。高齢化や免許返納者の増加、地方部の買い物困難者やバス会社の赤字化、無医市町村の増加など、「日本は非常に厳しい状況が続いている」(上村氏)という。

都市や地方での課題解決を目指す
都市や地方での課題解決を目指す

 このような課題を解決して地域を活性化するため、モネ・テクノロジーズは、(1)オンデマンドのモビリティサービス、(2)様々なデータの解析サービス、(3)自動運転車両を使った様々なサービスの提供を目指す。

 また、活動目的については、(1)事業実現に向けた日本の法制度改革への取り組み、(2)自治体の協力の下、オンデマンド交通の事業化、(3)自動運転車両を用いたMaaSそのものの事業化の3つを挙げた。

 サービス提供の基盤としては、独自のMONETプラットフォームを構築する。「トヨタの他にも新しく資本参加したホンダ、日野自動車の車両を用いて、サービサーと呼ばれる参加企業とAPI連携で色々なサービスを提供する」(上村氏)といい、プラットフォームに蓄積されたデータは共有するとのこと。

MONETプラットフォームの概要
MONETプラットフォームの概要

地方自治体との連携にも注力

 MONETプラットフォームを用いた地方自治体との連携にも力を入れる。19年2月には17の自治体との連携を発表しており、さらに同年5月時点で200以上の自治体からのアプローチがあるという。

 今回は3月に1週間かけて行った横浜市での実証実験について報告した。スマホを活用した乗り合いバスの配車サービスの実証実験で、利用者がiOSアプリで予約をすると指定の場所にバスが発着するというもの。30~70代以上の地域モニター30人が参加した。

 実施エリアは横浜市旭区若葉台の団地で、既存のコミュニティバス停留所と自宅付近が対象となる。若葉台の地域課題として上村氏は、「高齢化、子育て世代の取り残し、郊外特有の高低差」を挙げた。「若葉台の高齢化率は日本平均の倍以上。コミュニティバスのユーザーは高齢者が占め、子育て世代の利用が難しい。郊外の大規模な住宅団地特有の高低差もある」(上村氏)。

 子育て世代の利用を考慮し、玩具やチャイルドシートなどを置いて車内空間にも気を配った。延べ100人が利用し、ピーク時は1時間に7人が乗車した。全体の満足度は80%以上で、おおむね好評だったという。

 上村氏によると今回の実験で収集したデータから、バス停留所の利用に偏りがあることが分かった。「63ある停留所のうち、実際には半分くらいしか乗り降りされていない」(上村氏)。7月以降には大型病院や保育園などエリア内外とも連携し、全住民を対象にした実証実験を視野に入れているという。

横浜市旭区若葉台での実証実験プラン。7月には第2段階を予定している
横浜市旭区若葉台での実証実験プラン。7月には第2段階を予定している

 5月には、長野県伊那市と医療分野でのMaaS事業について業務連携協定を締結した。看護師と運転手だけで患者の元へ行き、モニター画面を通して遠隔で診察を受けられるようにする「移動診察車」の実証実験を19年に実施する予定だ。「医師が同乗すると、往復の移動も含めて2~3時間かけて1人しか診察できず効率が悪い。慢性疾患から始めて徐々に広げていきたい」(上村氏)。この取り組みでは、遠隔の服薬指導や医薬品の配送なども視野に入れているという。

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