敵対するにしろ味方につけるにしろ、日本企業から見てBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの中国テック企業)はもはや無視のできない存在になっている。圧倒的な“巨人”たちを前に、私たち日本人のビジネスチャンスはどこに残されているのか。
- 1. ジャック・マーが見据える2つの「H」
- 2. 日本企業が持つ「B向け」のノウハウを求めている
- 3. ソフトウエアベースで考えればチャンスはある
- 4. 結局競争に勝つには「モーレツ」は避けられない?
2019年4月に開催した「BATH研究イベント」の後半では、吉川欣也氏が、富士通総研経済研究所上級研究員の趙瑋琳氏と対談した。日本企業がBATHとうまく付き合い、ビジネスに活路を見いだすための4つのポイントが見えてきた(イベント前半の記事=6月4日公開はこちら)。
1. ジャック・マーが見据える2つの「H」
吉川氏によれば、アリババの強さの一つは徹底したデータドリブンの姿勢にあるという。「彼らは、アリババ・グループのECサイトを通じてならばランボルギーニが瞬速で何台売れる、と即答できる」。それは生鮮食品などを扱うアリババのスーパーマーケット「フーマフレッシュ」(盒馬鮮生)においても変わらない。
「フーマフレッシュでは、スマートフォンのバーコードリーダーを通じて、陳列してある魚がどんなエサを食べて育ったのかということまでチェックできる。日本の養殖の魚はそこまでデータが取れていない。だから日本で獲れた魚は、仮に生産者が望んでもフーマでは扱ってもらえないという現状にある」
これは野菜も同様だ。どんな産地のどんな生産者が、どんな農薬や肥料を使って作った野菜なのかが分からなければ、どれだけおいしい野菜であっても陳列されることはない。「もはや、おいしいから売れる時代ではない。おかしな話だが『野菜のAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)』『食べ物のAPI』を提供できるかが、売れる売れないの前提条件になっている」と吉川氏は続ける。
ということは、日本の第1次産業はこの問題の解決を急がない限り、中国市場という巨大なマーケットから締め出される可能性がある。
趙氏は、アリババの創始者ジャック・マーを「戦略家」と評価する。そのマーが今、もっとも熱い視線を送っているのが2つの「H」。すなわち「ハピネス」(Happiness)と「ヘルス」(Health)の領域だという。
「生活水準が上がり社会が成熟してくると、ハピネスとヘルスの2つのHが重要になる。中国はいまだに医療分野のリソースが足りないなど、この領域に大きな問題を抱えている。一方、日本の医療は製薬会社も含めて世界一と言っていい。ここに協業のチャンスがある」(趙氏)
実は、スーパーマーケットの話とヘルスの話は密接に結びついている。
「シリコンバレーがフードテックに関心を寄せているのもその流れ。体に悪いものを食べていたのでは、いくらランニングして、いくら優れた体重計を作っても駄目。それよりも食べ物から変えて健康になるという予防の考え方が主流になりつつある。そうすると結果的に医療費が下がる。だからスーパーマーケットが大事という話になる」(吉川氏)
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