ゲーム企画会社のポケモン(東京・港)は2019年5月29日に事業戦略発表会を開催し、睡眠がテーマのスマホゲーム「Pokemon Sleep」と専用端末「Pokemon GO Plus +」を発表した。ニンテンドースイッチとスマホ向けのクラウドサービスも2020年に始める計画だ。

2019年5月29日の「ポケモン事業戦略発表会」で発表された新しいゲーム「Pokemon Sleep」。サービス開始予定は2020年
2019年5月29日の「ポケモン事業戦略発表会」で発表された新しいゲーム「Pokemon Sleep」。サービス開始予定は2020年

「歩く」の次は「睡眠」のエンターテインメント化

 Pokemon Sleepは就寝時間や睡眠時間など睡眠に関するデータを利用したゲームアプリで、2020年にサービスを開始する予定。加速度センサーを内蔵した専用デバイス「Pokemon GO Plus +」を枕元に置いて、計測したデータをBluetoothでスマホに転送する。

 ポケモンの石原恒和社長は、「『ポケモンGO』で現実世界をポケモンと共に冒険する体験を生み出し、歩くという基本的動作をエンターテインメント化した。睡眠のエンターテインメント化が次のチャレンジだ」と話す。ポケモンGOを共同開発した米ナイアンティックと再びタッグを組む。

 詳しい内容は明かさなかったが、「睡眠に関するいろいろなデータで、次の日スマホを開いたらうれしいことが待っている」(石原社長)とのこと。自分の眠りがゲームの進行に影響を与える仕組みになっているようだ。

 子供がゲームで夜更かししてしまうことを防ぐ目的もある。発表会では「子供が夜通しゲームを意識してしまうのでは、といったクレームは想定しているか」との質問に対し、石原社長は「それとは真逆の発想。子供たちが快適に眠れることを目指している。いかに安らかに夢を見られるか(という発想)」(石原社長)と答えた。

ポケモンの石原恒和社長は、「ポケモンGOで、より多くの人が歩くことに時間を費やすようになった。次のチャレンジは睡眠のエンターテインメント化」と話す
ポケモンの石原恒和社長は、「ポケモンGOで、より多くの人が歩くことに時間を費やすようになった。次のチャレンジは睡眠のエンターテインメント化」と話す

 最近は睡眠不足の解消を目指したサービスが続々登場するなど、企業の眠りに対する関心が高まっている。ネスレ日本は19年3月に「睡眠カフェ」をオープンし、エアウィーヴとボディワークホールディングスは高級マットレスで施術を受けた後睡眠もとれる「夏のグッスリーピングコース」を同年6月から期間限定で始める(関連記事「コーヒーと睡眠?ネスレが意外な組み合わせで挑むカフェの勝算」)。Pokemon Sleepは子供が主な対象だが、ストレスを抱えた大人がはまる可能性も高い。

 米ナイアンティック最高経営責任者(CEO)のジョン・ハンケ氏は、「健康的なライフスタイルに欠かせないのは歩くことに加えてよく休むこと。世界を自らの足で冒険するためには、それに備えてしっかり休息して元気を蓄えることが大切だ」と、あちこち歩くことでゲームが楽しめるポケモンGOをからめながら、睡眠をエンターティンメント化する意義を強調した。

米ナイアンティックCEOのジョン・ハンケ氏は「どのような形で良質な休息とポケモンを結び付けるのか、健康的なライフスタイルの増進を念頭に開発している」と語る
米ナイアンティックCEOのジョン・ハンケ氏は「どのような形で良質な休息とポケモンを結び付けるのか、健康的なライフスタイルの増進を念頭に開発している」と語る

 Pokemon GO Plus +は「Pokemon GO Plus」同様、周囲のポケモンやポケストップ情報をランプと振動で知らせてくれる。任天堂ハードウェア開発部の丸山和宏氏は、「昼間はPokemon GO Plusとしても使える」と話す。石原社長によると、現段階ではPokemon SleepとポケモンGOは別のゲームで、連動しないとのこと。

「Pokemon GO Plus +」は内蔵の加速度センサーで睡眠データを計測する
「Pokemon GO Plus +」は内蔵の加速度センサーで睡眠データを計測する
任天堂ハードウエア開発部の丸山和宏氏。「Pokemon GO Plus +は、昼間はPokemon GO Plusとしても使える」という
任天堂ハードウエア開発部の丸山和宏氏。「Pokemon GO Plus +は、昼間はPokemon GO Plusとしても使える」という

すべてのポケモンを家に集められるクラウドサービス

 発表会では「すべてのポケモンが集まる場所」をコンセプトにしたクラウドサービス『Pokemon HOME』を、20年にスタートすることも明らかになった。ニンテンドー3DSソフト『ポケットモンスター』シリーズやポケモンGOで捕まえたポケモンを預けたり、各連携ソフトへ連れていったりできる。

 『Pokemon HOME』では、スマホを通じて時間や場所を問わずポケモンの交換も可能。複数人での同時交換機能も実装する予定だ。

 開発を手掛けるゲームフリークの増田順一常務は、多様なソフトやデバイスで楽しめるようになったことで、ポケモンを取り巻く環境が大きく広がり複雑化したことを指摘。それを踏まえ「多様化した世界が1カ所に集まる場所を作り、そこを起点としてさまざまなソフトとポケモン、さらには人と人をつなぐ新たな体験を提供していく」(増田常務)とのこと。

「ポケモンがソフトを超えハードを超え、ずっと一緒に冒険をするかけがえのない存在になっている。ならではの世界観を形成してきた」と話すゲームフリークの増田順一常務
「ポケモンがソフトを超えハードを超え、ずっと一緒に冒険をするかけがえのない存在になっている。ならではの世界観を形成してきた」と話すゲームフリークの増田順一常務
Pokemon HOMEは2020年にリリースされる予定
Pokemon HOMEは2020年にリリースされる予定

DeNAとの共同アプリや渋谷パルコの新ポケモンセンターも

 他にも新作ゲームや新事業の発表が続いた。東宝の松岡宏泰常務は、2019年5月現在公開中の映画『名探偵ピカチュウ』が世界でヒットしていることを報告し、「日本発の知的財産として『ゴジラ』と並んで大きな数字を稼いでいる」と述べた。

発表会に登壇した東宝の松岡宏泰常務
発表会に登壇した東宝の松岡宏泰常務

 また、映画の原作となったニンテンドー3DS『名探偵ピカチュウ』の完結編がNintendo Switchで開発中であることも発表された。

 DeNAと共同で新作アプリゲーム『Pokemon Masters』も開発中だという。Android/iOS向けで、19年6月ごろに公開予定。

19年6月公開予定の新作アプリゲーム『Pokemon Masters』
19年6月公開予定の新作アプリゲーム『Pokemon Masters』

 世界2位の中国のゲーム企業「NetEase」とは、18年に始めた『ポケモンクエスト』の中国配信に向けて動いているという。NetEaseのゲーム部門パブリッシュ責任者Ethan Wang氏は「事前予約はすでに170万件を突破した」と報告した。

『ポケモンクエスト』の中国配信をポケモンと計画するNetEaseのゲーム部門パブリッシュ責任者Ethan Wang氏
『ポケモンクエスト』の中国配信をポケモンと計画するNetEaseのゲーム部門パブリッシュ責任者Ethan Wang氏

 19年秋開業予定の渋谷PARCOに、新たなポケモンセンターを出店する。同ビルに出店する「Nintendo TOKYO」との相互送客を見込んでいる。

 また、ウェブサイトから初期に登場した151種類のポケモンがモチーフのオリジナルデザイン生地を用いて、デザインをカスタマイズしたり注文できる「ポケモンシャツ」の販売地域も拡大するという。アジアの一部のみから、欧米など世界に向けても販売する。

渋谷PARCOに出店予定の新しいポケモンセンターのイメージ。最新鋭技術との調和を目指す
渋谷PARCOに出店予定の新しいポケモンセンターのイメージ。最新鋭技術との調和を目指す
ポケモンシャツは販売地域を拡大する
ポケモンシャツは販売地域を拡大する

(写真/酒井 康治、写真提供/ポケモン)

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