「婚活」という言葉が当たり前のように聞かれる今日、相手とのマッチング方法にDNAを用いた新たなサービスが登場。医学的にもDNAと嗜好性の相関は高く、学術誌『ネイチャー』に掲載されるほど。パートナー選びの新基準として定着するのかを探るべく、DNAを導入した婚活パーティーを取材した。

結婚相談所ノッツェが新たに遺伝子検査を用いた婚活サービスを行っている。希望条件にとらわれない婚活が始まった(写真/Shutterstock)
結婚相談所ノッツェが新たに遺伝子検査を用いた婚活サービスを行っている。希望条件にとらわれない婚活が始まった(写真/Shutterstock)

 結婚相談所「ノッツェ」を運営する結婚情報センター(東京・新宿)が、2019年1月に業界で初めて「DNAマッチング」サービスを開始した。それに伴い5月18日、同サービスの会員向けにマッチングパーティーを行った。年収や学歴、職種など希望条件で選ぶ婚活とは異なり、事前に行った遺伝子検査結果で相性数値を算出し、その数値のみを公表した状態で行うお見合いパーティーだ。

 サイバーエージェント子会社でマッチングサービスを手掛けるマッチングエージェント(東京・渋谷)の調査によると、インターネット上で恋愛や結婚のパートナーを探す「マッチングサービス」の2019年の国内市場規模は530億円になる見通し。前年度比37%増の成長市場で、24年には1000億円を超えると予想している。

唾液を採取して遺伝子を検査

 ノッツェの従来コース(ベーシックコース)は、入会金3万円(税別、以下同)、初期活動費用4万7500円のほか、月2人にお見合いを申し込めるプランで月会費が4500円かかる。一方DNAマッチングコースは、入会金3万円、DNA検査費用5万円、お見合いが成立したときのみ発生するマッチング料1万5000円、成婚料10万円となっている。初期活動費用がDNA検査費用に置き換わったと考えれば、それなりに納得がいく。

 遺伝子検査を請け負うのは、遺伝子検査など各種検査を実施する医道メディカル(東京・品川)。ノッツェのDNAマッチングコースに登録した会員には、遺伝子検査キットが届き、自身の唾液を採取して返送すると1カ月ほどで結果が出て、遺伝子の相性によるお見合いが可能となる。

 DNA婚活では、移植のドナー決定に使われるHLA(ヒト白血球抗原)遺伝子を検査している。HLAはヒトのほぼすべての細胞表面に存在する糖タンパク質で、その組み合わせは数万通り、全人類で約1万6000種類あるといわれている。

 スイスのベルン大学の研究では、男性4人、女性2人(21~25歳)に2日間同じTシャツを着続けてもらい、女性58人(平均26.0歳)、男性63人(平均25.7歳)がそのTシャツの匂いを評価した。その結果、男女ともにHLAタイプが異なる人の匂いを好ましく感じる傾向がみられた。

学術誌『ネイチャー』に掲載された、米シカゴ大学の研究では、男性6人(23~47歳)に2日間同じTシャツを着続けてもらい、未婚女性49人(13~56歳)にTシャツの匂いを嗅いでもらい、最も好ましい匂いと好ましくない匂いを選んでもらった。その結果、先に述べた研究結果と同様に、HLAタイプの違いが大きい人の匂いを好ましく感じる傾向がみられた。また、HLA遺伝子は両親から受け継ぐものだが、父親から継承されたHLA遺伝子と似たHLAタイプの人の匂いを好む傾向もみられた。

 DNAマッチングでは唾液からHLA遺伝子の配列を算出し、医道メディカルが作成したデータに配列をタイピングすると数値が出る仕組み。タイピングした配列が100%一致していれば相性0%、一致度が0%であれば相性100%として相性を割り出した。つまりDNAが「一致していない」ほど相性が良いというわけだ。「相性が良いとパートナーの体臭を魅力的と感じる度合いが高まり、パートナーに対する満足度が高まる」(医道メディカル代表の陰山康成氏)。

実際に参加者に配布されたDNA検査結果のサンプル。相手との相性結果のみ、参加者に知らされた
実際に参加者に配布されたDNA検査結果のサンプル。相手との相性結果のみ、参加者に知らされた

条件で選ぶお見合いに新しい風を

 通常のDNAマッチングコースでは、ノッツェ側が相性数値の良い人を利用者に紹介し、1対1でお見合いを行う。会うまで相手の写真や年収などの情報を一切知らせないのがこのコースの特徴だ。相性数値も、お見合い後に発表するという。

 今回のイベントでは、相手との相性数値を公開した状態で実施した。その代わり男性と女性の間にすだれでブラインドを作り、顔を見えなくすることで容姿による印象操作を減らしている。

 パーティーに参加したのは、男性13人(31~50歳)、女性13人(31~54歳)。参加のきっかけは「(イベントが)面白そうだったから」(女性)、「ダメ男に引っかかってばかりだったから。DNAの相性の良さが1つの安心材料になりそう」(女性)、「自分では見つけられない、気づけない相性の良い人に出会えるかもしれないから」(男性)など。究極の個人情報とも言えるDNA採取については、大半が「特に抵抗無かった」そうだ。

すだれごしにお見合い。全員と3分ずつ話した後、すだれを外し姿を見た状態で再度お見合い
すだれごしにお見合い。全員と3分ずつ話した後、すだれを外し姿を見た状態で再度お見合い

 結婚情報センター広報部長の藤村知氏は、今回のお見合いイベントの狙いを「先入観なく話ができる環境を作りたかった」と話す。

 従来の遺伝子検査の無いコースでは、相手の顔写真、学歴、年収などの情報がすべて開示されている。情報を確認した上でお見合いできる安心感はあるが、条件や容姿に固執してしまい、なかなかお見合いまでいかないケースも多々あるという。

 そこで18年夏頃、試験的にモニター数十人を募って遺伝子検査を行い、相性数値の高い者同士でお見合いをしてもらった。すると60%が次のデートにつながったという。通常コースの場合、次のデートにつながるのは30%以下というから、2倍以上の確率で次の段階へ進めることになる。モニターの反応も良かったことから、19年1月にDNAマッチングコースを本格的に導入した。

 HLA検査を基にお見合いパーティーをするのは今回が初めて。藤村氏は「他のイベントに比べ、(参加者が)集まりやすかった」と話す。

相性数値は話のネタに

 パーティーでは、お見合いが終わると気に入った相手を3人カードに記入する。相性数値を中心に相手を選んだかを尋ねると、26人中1人だけが「中心に選んだ」と答えた。ほとんどの人は参考程度にとどめ、話した雰囲気や容姿で決めたという。その結果、13組中4組のカップルが誕生した。

 成立したカップルの1組は相性が98%だった。お互い参加者の中で1番相性数値が高かったという。「(相性数値が良いと)意識してしまうが、話しやすさで決めた」(女性)とうれしそうに話してくれた。

 別のカップルは相性80数%だった。決め手は「話しやすく、雰囲気がステキだった」(男性)、「顔を見ていないときと見たときのギャップが、ほとんどなかったから」(女性)とのこと。相性数値は、「顔が見えていないときの話のきっかけ」としてのみ使ったという。

 同社会員様サポートセンターの川尻由紀氏は、「毎月のお見合い紹介では、相性数値とお互いの希望条件(地域や年収、年齢など)を基に紹介している」と話す。今回は相性数値の開示のみで、条件にとらわれず13人と会い、選べるのがポイントだ。

 DNAマッチングコースを開始してから、「従来のコースではあまり見られなかった希望地域以外の方とマッチングするケースが増えた」と川尻氏。相性数値がいいので、「希望地域外だが会ってみては?」と持ち掛けるそうだ。そこまで言うなら……と、お見合いし、次につながるケースもあるという。

成立したカップル、相性数値は80数%だったという
成立したカップル、相性数値は80数%だったという

 HLA遺伝子は生まれてから変わらない。一度検査すれば、その情報を何度もマッチングに利用できるのも魅力の1つだ。まだ利用者が少ないため、相性と希望条件が一致するケースは少ない(川尻氏)が、利用者が増えるに従ってマッチング精度も上がるだろう。

 一昔前は、ご近所の世話焼きな人や知人などの紹介を通して見合いをしていた。今ではインターネットを活用し、手軽に希望条件を指定して相手を選べる時代になった。こうしたサービスは、「利便性は高いが、口下手な人には出会いのきっかけにならない」と藤村氏。人が人を紹介するという原点に立ちつつ、新たな評価軸として科学的根拠を携えたDNAマッチングサービスは、まだサンプルが少ない。今後サンプルを増やし、婚姻したカップルも出てくれば、市場は広がるだろう。