AI(人工知能)を活用したSNS分析サービスベンチャーのAIQ(アイキュー、東京・千代田)は2019年5月29日、Instagram分析サービス「AILINK」にInstagramストーリーズの分析機能を加えた。Instagramの標準機能では分析できなかった、視聴者数の推移などを分析できる。

AIQ(アイキュー、東京・千代田)は、Instagramで利用者が急拡大するストーリーズの分析機能を開発した
AIQ(アイキュー、東京・千代田)は、Instagramで利用者が急拡大するストーリーズの分析機能を開発した

 国内でも月間利用者数が3000万人に迫るなど、Instagramの利用者拡大に伴い、自社の公式アカウントを開設して情報を発信し、マーケティングに活用する企業が増えている。SNSのアカウントを運用するうえでも、フォロワーの反応を分析しながらコンテンツの充実を図り、より効果を高めるPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回すことが重要になる。

 ところが、Instagramで提供されている標準の分析機能は「フォロワー数の単なる累計の推移などしか分からないなど、機能が不十分だ」とAIQの渡辺求副社長は指摘する。AIQのAILINKは、より多角的に自社のアカウントをデータで分析するために開発された分析サービスだ。

AIQが提供するInstagram分析サービス「AILINK」を活用すると、自社のアカウントのフォロワーの男女比や「いいね!」の推移などを分析できる
AIQが提供するInstagram分析サービス「AILINK」を活用すると、自社のアカウントのフォロワーの男女比や「いいね!」の推移などを分析できる

 AILINKを使うと、自社のInstagramアカウントのフォロワーの男女比、年代の内訳、増加・減少数の推移、投稿に対して付けられた「いいね!」の推移などが分析できる。また、よく利用されているハッシュタグを一覧できる機能は、他社の分析ツールにはない特徴の1つだろう。一覧は毎日更新されるため、フォロワーのトレンドが分かる。例えば、「母の日」「ギフト」といったハッシュタグが増加すれば、自社商品のギフトコンテンツを投稿するといった具合に活用できる。

ストーリーズには毎日700万件の投稿

 AIQはこのAILINKに新たな機能として、Instagramのストーリーズ分析を加えた。Instagramストーリーズは写真や動画を投稿できる機能だが、24時間で消える特徴を持つ。この特徴により、より気軽に投稿できる機能として、利用が急拡大。国内でも1日に700万件がストーリーズに投稿される規模になっている。撮影などにこだわった写真は従来の投稿機能を使い、日常の何気ない動画や写真をストーリーズに投稿するというように使い分ける人が多い。

 国内ではストーリーズ内に掲載される広告枠に出稿する広告主は増えているものの、「企業の公式アカウントで、ストーリーズを活用できている企業はまだ少ない」(渡辺氏)。だが今後はフォロワーとの関係性を強化するうえでストーリーズの活用は、欠かせなくなっていくだろう。AIQはそのニーズを見越して、ストーリーズの分析機能を開発した。

自社のストーリーズをよく閲覧するリピート視聴層の分析も可能だ
自社のストーリーズをよく閲覧するリピート視聴層の分析も可能だ

 解析機能ではストーリーズの投稿ごとに、時間単位の視聴者数の推移、視聴者におけるフォロワーの比率、直近5投稿のリピート視聴者層の分析などができる。これらのデータを生かすことで、よく見られる時間帯を見極めて次の投稿に生かしたり、フォロワー以外の視聴者、つまり新規率の高い投稿の傾向を分析して、新規フォロワーの獲得につながる投稿を増やしたりするといったストーリーズの運用に活用できる。ただし、現時点ではストーリーズの視聴者の男女比などは分からない。今後、視聴者層をより詳細に分析できるように、機能を改善していく方針だ。

 AILINKの利用料金は月額20万円で、ストーリーズの分析機能を使うには5万円のオプション料金が必要となる。

 Instagramの解析ツール市場は、18年に大打撃を受けた。米フェイスブックが情報漏洩問題を受け、傘下のInstagramのAPI (アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の仕様を18年12月に変更。この変更により第三者はAPIを通じて、データを取得しづらくなったからだ。AIQもInstagramのAPIで利用者のアカウントのデータを取得し、解析データとして提供しているが、取得できるデータには制限がある。

 そこで、AIQはデータを補うために、AIを活用する。700万を超えるアカウントの投稿内容や付けるハッシュタグ(#)、プロフィルに設定するアイコンなどの傾向から男女や年代の違いをAIに学習させることで、詳細な分析データの提供を可能にした。アパレルメーカーのオンワード樫山、リノベーション物件販売のリノベる(東京・渋谷)など、約100社が活用している。AIQは新たな機能の提供で、企業のInstagram活用を後押しする。

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