ANAは6月から東海・北信越地方とコラボした機内サービス・空港サービスをスタートする。11月までの半年間にわたり、特産品を食材として使った機内食やラウンジでの食事メニューなどを展開。有名店や身近なチェーン店とのコラボメニューよりも訴求が難しそうな素材にあえてチャレンジする理由は。

 「Tastes of JAPAN by ANA -Explore the regions-」と銘打って行われる今回のキャンペーン。実は2017年12月に第1弾として北海道が取り上げられ、その後半年ごとに、九州、中国・四国地方が実施されてきた。今回の東海・北信越地方は第4弾となる。地域との取り組みは機内食にとどまらず、機内誌や機内で放映されるオリジナル番組で特集を組んだり、ANAが運営する通販サイトで名産品や特産品を販売したりするなど多岐にわたる。

 例えば欧米路線のビジネスクラスの場合、6月の日本発だと和食では三重県四日市市の名物である「とんてき丼」、伊勢醤油を使ったサワラの焼き物などを提供。洋食でも三重県産スズキのソテー、福井県産のフルーツトマトを練りこんだブレッド、富山県産のえごまのみを原料として使ったえごま油のフォカッチャなどが用意される。

三重県からは海産物などを使ったメニューが登場
三重県からは海産物などを使ったメニューが登場
福井県産のフルーツトマトを使ったブレッドは多くの路線で提供される
福井県産のフルーツトマトを使ったブレッドは多くの路線で提供される

 ファーストクラスだとさらにコラボメニューが増え、和食では先付けに静岡県産のアワビの煮物、汁物に石川県産のニギスつみれと加賀太きゅうり、ご飯には愛知県産のミネアサヒを使用。甘味にも静岡県産の抹茶のアイスクリームが添えられる。酒のおつまみとして新潟県産の「越の鶏」を使った唐揚げ、好きなときに注文できるセットメニューには愛知県産「三河赤鶏」の白味噌焼きをラインアップ。洋食ではアペタイザーに愛知県産「三河山吹うずら」を使ったテリーヌ、メインのオマール海老のローストには長野県産塩尻メルローワインを使ったソースが合わせられ、子羊のグリルには岐阜県産のアンディーブ(チコリ)という葉野菜をトッピング。ブレッドには福井県産コシヒカリの米粉が使われ、デザートには長野県産の日本酒をしみこませたカステラが提供される。

加賀野菜を使った汁物
加賀野菜を使った汁物
長野県産の食材を使った洋食メニュー
長野県産の食材を使った洋食メニュー

 日本人にもあまり知られていないような食材をどうやって発掘しているのか。実は各県に協力を仰ぎ、地元お勧めの食材や料理、菓子などのリストを送ってもらっているのだ。それを基にANAのシェフが使いたい食材を選ぶ。ただし各地の特色ある食材は、どうしても単価が高くなる他、大量に安定的に供給できるとは限らない。そのため、国際線のファーストクラスやビジネスクラス、空港ラウンジなど、どうしても上級クラス向けのサービスに限られてしまうという。

エコノミークラスでは“ご当地カレー”を提供

 それでも、エコノミークラスでも提供する試みは行われている。6月は福井県産のソースを使ったカツカレーを日本発の欧米路線で、7月は富山県産の白海老をだしに使ったカレーを日本発東南アジア・東アジア路線で提供する。8月は長野県産のリンゴジュースでマリネした鳥もも肉を添えたカレーが日本発東南アジア・南アジア路線で出される予定。素材そのものを味わえるわけではないが、何とか地域の名前を押し出そうという努力が感じられる取り組みだ。

 Taste of JAPANの狙いは、日本の魅力を国内外に発信することにより、地域活性化や訪日観光客の増加に貢献しようというもの。つまり、知名度の高い有名店の“看板”を使ってANAの搭乗客を増やそうという一般的なコラボとは逆で、ANAの機内を使って地域をアピールすることが目的なのだ。和食だけでなく、洋食にも積極的に地域の食材を取り入れているのは、訪日客にも関心を持ってもらうためであり、「ヨーロピアンオマールブルーのロースト 長野県産塩尻メルローワインソース」であれば、メニューにもきちんと「Roasted European homard blue with Nagano Shiojiri Merlot wine sauce」と産地名を記載してある。日本通であっても「Shiojiri」と聞いて場所が分かる外国人がそう多いとは思えないが、「メニューだけでなく、機内誌や機内番組などで多面的に魅力を伝えられるのが強み」とANAは話す。

機内番組でも各県を特集していく
機内番組でも各県を特集していく
会見にはゆるキャラが大集合した
会見にはゆるキャラが大集合した

 5月に開かれたメニューのお披露目会には、各県の担当者とゆるキャラが大集合。地域からの期待の大きさをうかがわせた。ANAにとっては直接的な集客効果は望みにくいものの、地域に関心を持つ観光客が増えれば、まわりまわって乗客増も期待できる。したたかな取り組みと言えそうだ。

(写真提供/ANA)