ネット広告事業のインタースペースは2019年5月15日、月額500円(税別)で、どの加盟店でも1杯目のドリンクが無料になるサブスクリプションサービス「welnomi(ウェルノミ)」を始める。加盟店は手数料がかからず、会員の集客が見込めるのが特徴。新たなビジネスモデルで、「食べログ」などのグルメサイトに挑む。

インタースペースは、月額500円(税別)で加盟する200店舗にて1日1杯以上無料で飲めるサービス「welnomi(ウェルノミ)」の提供を開始する(写真/Shutterstock)
インタースペースは、月額500円(税別)で加盟する200店舗にて1日1杯以上無料で飲めるサービス「welnomi(ウェルノミ)」の提供を開始する(写真/Shutterstock)

 welnomiの会員は、加盟店への来店1回につき、1杯目のドリンクが無料になる。同日でも、別の加盟店を訪れれば、その店舗でも1杯無料で飲めるため、加盟店をはしご酒すればその分お得になる、今後加盟店が増えれば月額制の、飲み歩きサービス、としても使えそうだ。インタースペースは3年で会員数10万人、売上高4億円を目指す。

 月額500円(税別)という価格は、およそビール1杯の価格。月に2回以上、加盟店に行けば元が取れる計算だ。「コスト優位性」をサービス価値と定めたため、非常に安価な価格設定となっている。ただし、インタースペースは飲食店と会員の仲介役であるプラットフォーマーにすぎないため、コストがほとんどかからない。会員料金の大半が利益になるため、低単価でのサービス提供が実現した。

 サービスはブラウザーで利用する。会員登録後にwelnomiのサイトから、訪問予定の加盟店ごとのページを訪れる。加盟店が指定するドリンク一覧から、飲みたい商品を選び注文ボタンをタップする。その画面を該当店舗の店員に見せるだけで、ドリンクが1杯無料で提供される。支払いにはクレジットカード決済が利用できる。

ウェブサイト上で注文する。今後はアプリ展開も視野に入れてるという
ウェブサイト上で注文する。今後はアプリ展開も視野に入れてるという

 加盟店はサービス開始当初、東京都内を中心に約200店舗。横浜や大阪など、全国主要都市にも加盟登録を拡大しつつある。ジャンルはイタリアン、居酒屋、バーなどさまざま。会員が訪れたくなる店舗をそろえなければ、サービスの継続利用は見込みにくい。そこで、インタースペースはクチコミで評価が高い人気店を中心に営業活動して、加盟店を拡大する。

 個人経営のような小規模店舗だけではなく、居酒屋チェーンの養老乃瀧も一部店舗の加盟が決まっている。ジャンルや規模にとらわれず、飲食店を選んで無料で1杯飲める体験価値を作ることで、これまで行ったことのないお店に行くきっかけ作りを狙う。提供するドリンクは、アルコール、ソフトドリンク問わず加盟店側で決められ、10種類まで登録できる。「ドリンクメニューのうち『久保田 萬寿』以外なら(他のドリンク全部)提供可能という」太っ腹な店もある(インタースペース取締役広告事業・新規事業管掌の塚田洋平氏)。

グルメサイトに挑戦、広告の代替に

 飲食店が加盟するメリットは集客効果だ。「既存のグルメサイトの広告枠は来店があろうとなかろうと広告費がかかるため、小規模な店舗は活用しづらいという悩みを抱えている店舗が多い」(塚田氏)。welnomiの加盟店は、会員の来店につき1杯分のドリンク代金を受け持つだけでよいため、低リスクで集客チャネルを拡大できる。

 広告費などは一切かからないため、「既存のグルメサイトと比較されることなく、加盟を募れる」と塚田氏は説明する。「食べログ」や「ぐるなび」とは異なる新たな集客チャネルとしての地位の確立を狙う。

「welnomi」のビジネスモデルの仕組み。利用者は月に500円(税別)、加盟店はお酒の原価のみ負担する
「welnomi」のビジネスモデルの仕組み。利用者は月に500円(税別)、加盟店はお酒の原価のみ負担する

 その目標達成には、大きな会員基盤と店舗に誘導する集客力が求められるだろう。インタースペースはサービス開始に先立ち、2019年4月8日から1ヵ月、事前登録キャンペーンを実施した。登録者が増えるごとに、無料利用期間が延びるキャンペーンだ。登録者数は2週間で2000人を突破。キャンペーン終了時3000人弱で順調に増加している。19年7月末までサービス利用料は無料だ。

 回遊施策では開発中の次のバージョンで、加盟店を地図から探せるようにする。「近くの店舗」で探せる機能を加えることで加盟店を探しやすくする。また、メーカーなどのスポンサー企業を募り、加盟店にドリンクやお通しなどを提供してもらい、広告費を分配する広告商品の開発も視野に入れる。

 加盟店にとっては、安価なコストで集客できるのが大きなメリットだが、welnomiのようなサービスは参入障壁が低い。加盟店の開拓力がある営業会社なら、早期に参入することも可能だろう。インタースペースは早期に会員を集め、加盟店拡大のスピードを上げ、競合が現れる前にサービスの地位を確立できるかどうかが鍵となりそうだ。

(写真提供/インタースペース)

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