決済ベンチャーのカンム(東京・渋谷)は2019年5月13日、表面にカード番号の表記が無いVisaプリペイドカードを日本で初めて発行する。セキュリティーとデザイン性の向上を目指して開発した。安心して持てるカードとして若年層をターゲットに利用拡大を図る。

カンムが提供する表側にカード番号の無いVisaプリペイドカード
カンムが提供する表側にカード番号の無いVisaプリペイドカード
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 カンムは2016年から、Visaプリペイドカード「バンドルカード」の発行事業を展開している。このバンドルカードの新たなデザインとして、カードの表面に番号のエンボス加工や印字の無いデザインを追加する。これまで表面にあったカード番号と有効期限は、裏面に印字される。支払時に第三者からカード番号が見られにくいなど、これまでよりセキュリティーが高く安心して利用できる。

 バンドルカードは、銀行口座やコンビニエンスストアで必要な金額をチャージして利用できるプリペイドカード。他にも、NTTドコモの決済サービス「d払い」、仮想通貨の「ビットコイン」など、さまざまなチャージ方法に対応している。年齢制限、審査がなく、入会費や年会費が必要ないため、クレジットカードが持てない若年層でも手軽に作れるカードだ。

 利用には専用のアプリが必要になる。アプリをダウンロードし、生年月日や電話番号を登録すると、ネットショッピングなどインターネット上のVisa加盟店でのみ使える「バーチャルカード」が発行され、カード番号を持つことができる。アプリ内でチャージすると、すぐに利用が可能となる。希望者はアプリ内から手続きをすれば、プラスチックカードを発行できる。手数料300円で国内のVisa加盟店と海外のVisa加盟店(オンライン)で使えるカード「リアル」が発行され、同600円で国内外のVisa加盟店で使える「リアル+(プラス)」を発行できる。

 特徴的な機能としては、「ポチっとチャージ」が挙げられる。アプリで金額を入力すると即座にチャージされて買い物に利用できる後払いシステムだ。チャージした金額は、翌月末までにチャージ額によって変わる手数料と合わせて支払う。この支払いは、コンビニ、ネット銀行、銀行ATM(ペイジー)から選ぶことができる。

 バンドルカードは20代、30代が利用者層としては多く、コンビニやスーパーなどでの少額決済時によく利用されるという。バンドルカードの専用アプリは、ダウンロード数が120万件を超えている。

 このバンドルカードに、カード番号の表記が無いデザインが加わる。カード番号は裏面に表記されている。デザインは5色。リアルは白、黄の2色から選べる。リアル+(プラス)は赤、青、黒の3色から選べる。

リアルカードのみ、表側にカード番号の無いデザインを採用。バーチャルカードは既存のまま
リアルカードのみ、表側にカード番号の無いデザインを採用。バーチャルカードは既存のまま
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安心して渡せるカードへ

 カンム執行役員COO(最高執行責任者)の知久翼氏は「デザインとマーケティング、2つの観点から表面に番号が無いカードデザインを採用した」と開発背景を話す。

 新たなカードは表面に番号表記が無く、プリントされているのはバンドルカードとVisaのロゴのみと簡素化されている。高級感のあるクレジットカードデザインが多い一方、シンプルなデザインが少ない点にニーズが眠っていると目を付けた。「カードを店員などに手渡す際、表にカード番号が無いため安心して手渡しできる」とセキュリティー向上の利点もあると知久氏は説明する。

 一方、マーケティング観点ではソーシャルメディアとの連動キャンペーンなどが展開しやすくなる。例えば、カンムがYouTuberを起用したキャンペーンを実施する場合、動画では実際に買い物をする場面を撮影して利便性をアピールする必要がある。そのため、サンプルではなく実物のカードを使ってもらわなければならない。このとき表面にカード番号が掲載されている従来型のデザインでは、カード番号にモザイク加工を施したり、指で隠したりする必要があり、動画制作に手間がかかっていた。新たなデザインのカードは、この手間を省ける。

 また、カンムはTwitterを活用した「リアルカード届いた!キャンペーン」を積極的に実施してきた。リアルカードが届いたタイミングでTwitterにカードの画像を投稿してもらい、投稿者の中から抽選で月3人にキャッシュバックするという企画。ここでも同様に、カード番号は隠すように注意喚起をしても、カード番号を隠さずそのまま載せてしまう人がいた。表面のカード番号の表記がなくなれば、そのリスクも減らせる。

 カンムは11年に創業し、カード会社と連携して、クレジットカードの利用データを用いた広告サービスを提供してきたが、参画するカード会社を拡大できず、事業が伸び悩んだ。そこで、自らカードの発行事業を手掛けることでデータを収集し、分析することを狙いVisaのプリペイドカードの発行ライセンスを取得。16年に事業転換を果たした。

 デザインとセキュリティー面の高い新たなデザインのカードの提供で、さらなる利用拡大を図る。

(写真提供/カンム)