お土産ニーズを掘り起こした「ご当地キットカット」

 そもそもキットカットのご当地シリーズは、2002年に北海道の夕張メロンを支援しようという流れから始まった商品だ。同シリーズを担当するネスレ日本コンフェクショナリー事業本部マーケティング部マーケティングスペシャリストの井上翔氏は、「夕張メロンフレーバーのキットカットの販売を始めてみると、日本人だけでなく、外国人客がわざわざ北海道まで買いに来たり、北海道在住の人が手土産として買っていくことが分かった。スーパーなどで売る商品とは違い、キットカットを『お土産』として購入するという、新しいニーズを掘り起こせる可能性があると考えた」と話す。

 特に訪日外国人については、14年は500万人程度だったが20年は4000万人まで拡大すると言われているため、インバウンド事業に大きな可能性があるといえる。ネスレ日本常務執行役員コンフェクショナリー事業本部長のセドリック・ラクロワ氏は「キットカットのカラフルな見た目やパッケージ、多彩な味や食感などは遊び心があり、それも海外の人にも受け入れられている理由の1つ」と語る。

 以降、08年ごろから現在のご当地シリーズの本格展開を開始。各地域に根差した原材料・特産品を使用する老舗や企業とコラボレーションし、さまざまなフレーバーを開発した。今では日本人の旅行客だけでなく、中国や韓国をはじめ訪日外国人観光客の定番土産になっているとのこと。

ネスレ日本コンフェクショナリー事業本部マーケティング部マーケティングスペシャリストの井上翔氏(左)と同社常務執行役員コンフェクショナリー事業本部長のセドリック・ラクロワ氏(右)
ネスレ日本コンフェクショナリー事業本部マーケティング部マーケティングスペシャリストの井上翔氏(左)と同社常務執行役員コンフェクショナリー事業本部長のセドリック・ラクロワ氏(右)

新しいもの好きの日本人だからイノベーションが必要

 日本のキットカットは「メイドインジャパンキットカット」と呼ばれ、累計350種類・常時40種類を超えるフレーバーを展開している。それを可能にしているのが、工場数と日本が“島国”であるという点だ。

 「現在、ネスレの世界全体の工場数は14で、そのうちの2つが日本にある。海外は地続きになっているケースがほとんどで、1つの工場で作った製品が複数の国に展開されていく。国によって裏面の表示方法や法規制などの制約が異なり、すべてをクリアしたものでないと販売できないため、バラエティーを増やすのは難しい。その点、日本には工場が2つあるので、さまざまなニーズに合わせた商品を作りやすく、日本で作った製品は日本にしか流れないので、ハードルが低い」(井上氏)

 今回のイベントは日本酒とチョコレートのペアリングがテーマだが、この施策を通じてご当地キットカットの種類の豊富さを知ってもらいたいという目的もあった。

 「日本のチョコレートは、毎年全製品の約3割が新しい製品に切り替わる。つまり3年で、ほぼすべての製品がリニューアルするということ。日本人は新しいものが好きで、受け入れるという性質があるため、イノベーションが必要になってくる。そのため新しいフレーバーを常に模索している」(ラクロワ氏)

 そこで出会ったのが中田英寿だ。16年に「CRAFT SAKE WEEK」で出会い、中田が350以上の酒蔵を回っていることや、知識が豊富なことを知る。ネスレ日本がチョコレートの専門家として中田をサポートし、日本酒のキットカットを共同開発。そして、今回のプロジェクトが始動した。

 「商品として一番売れているのは『梅酒 鶴梅』と『日本酒 満寿泉(ますいずみ)』。酒は土産として持ち帰るのは大変だが、キットカットなら手軽に試せるので、日本人はもちろん海外の人からも評判がいい」(井上氏)