ソニーが2019年4月12日に発売した1型センサー搭載カメラ「RX0 II」が人気だ。動画の自撮り需要に応えたことも奏功し、5月下旬の出荷分まで注文が埋まっている状態。一見アクションカムに見えるが、「そうではない」とソニーが“言い張る”この製品、いったい誰がターゲットなのか。
クリエーターから若年層まで、ターゲットは3つ
ソニーのRX0シリーズは、高い防水性能や堅ろう性を備えた小型ボディーに、コンパクトデジカメとしては大型の1型センサーを採用しているのが特徴だ。2017年10月発売の初代モデル「RX0」に続くRX0 IIでは、新たに可動式液晶を搭載して自撮りニーズなどに対応した。
その外観やハードな用途にも耐え得る仕様から、スポーツなどアクティブなシーンの撮影を主な目的とするアクションカムの一種と思われがちだが、ソニーはRX0から一貫してその見方を否定する。それは想定しているユーザー層や用途が、アクションカムのそれとは異なるからだ。では誰がターゲットなのか、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの越智龍氏に聞いた。
RX0 IIがターゲットとしているユーザー層は大きく3つあるという。1つは、複数台ならべてバレットタイム撮影やスポーツ撮影などに使える業務用カメラを求めるクリエイター層だ。アクションカムをそうした撮影に使う人もいるが、「RX0シリーズはセンサーサイズが大きく、高画質なレンズとあいまって、ひずみの少ない映像が撮れるところが大きな違い」(越智氏)。
2つめはカメラ好きに向けたサブカメラとしての用途だ。スマートフォンに比べてセンサーサイズが大きく、携帯しやすいコンパクトさが強みになる。「ソニーのαシリーズなどを使っているレンズ交換式カメラのユーザーでも満足できる画質で、ポケットやバッグに忍ばせておいてサっと取り出して撮影できる」(越智氏)。
そして3つめは、普段ほとんどスマホだけで生活しているような、高価なカメラを知らない若年層だ。「スマホで育ってきて、スマホのカメラの画質に不満を感じ始めた人がターゲット。スマホのユーザーは世界的にみて爆発的に増えている。そのうちのごくわずかでもつかめれば十分ビジネスになる」(越智氏)という目算だ。
動画の自撮り需要に応える
若年層の使い方としてソニーが特に注目したのは動画撮影だ。何か情報を検索するとき、検索サイトではなく動画配信サイトでまず検索し、動画から情報を得るという人が増えている。インスタグラムも人気だが、特に伸びが期待できるのはYouTubeに動画を投稿している層とみている。
「米国でYouTubeに動画を投稿するユーザー数が急増している。日本では製品レビューをする人が人気だが、米国ではそれだけでなく、自撮り動画で自分の考えを述べるような、自己主張のための動画を投稿するユーザーが増えている」(越智氏)
そうしたユーザーの自撮り需要に応える形で、RX0 IIでは液晶画面を確認しながら撮影できるように背面液晶を可動式にしたほか、最短撮影距離を初代モデルの50センチから20センチに短くした。オプションの動画撮影ボタンとシャッターボタン、デジタルズームのコントローラーが付いたグリップ兼スタンドも人気だ。本体購入時に、メモリーカードよりも高い割合で同時購入されているという。これを使うと手持ちで長時間撮影しやすくなる。
可動式液晶により、カメラを高く掲げての撮影や、ローアングル撮影などもやりやすくなった。頑丈なボディーはハードな撮影に耐えられるだけでなく、カメラの扱いに慣れていない初心者にも向いている。
「自撮りしやすく、小さいのでカメラを別の場所に固定した撮影もやりやすい。頑丈で、IP68相当の防塵・防水性能により水中撮影もできる。スマホ以上の画質で、ここぞというときに使える、普段は邪魔にならないカメラ。スマホ世代に向けた、動画や写真素材を作るためのツールを目指した」(越智氏)
初代モデルも同様の3つのユーザー層をターゲットにしていたが、若年層に向けては手探りの部分が大きかった。実際、初代モデルの販売は苦戦したという。それを踏まえてユーザーの要望を聞き、可動式液晶などを盛り込んだRX0 IIは発売直後から人気を集めている。スマホのカメラ機能に不満を感じた層がデジタルカメラに目を向けたときに、受け皿になるカメラとして存在感を増しつつあるようだ。