良品計画が展開するブランド・無印良品が、関東で最大級の「錦糸町パルコ店」をオープンした。店内に導入された、無印良品の人気商品「足なり直角靴下」の編み機が話題を呼んでいる。この編み機を使って、自分でデザインした世界で一足だけの靴下を作ることができるのだ。

靴下工房。中に設置された編み機が目を引く
靴下工房。中に設置された編み機が目を引く

「靴下」を商品として強くしていきたい

 2019年3月16日オープンの錦糸町パルコの4階に、ワンフロアでは関東最大級の売り場面積を持つ無印良品が開店した。注目は店内に導入された、無印良品のロングセラー商品「足なり直角靴下」を作っている編み機。これを使って、オリジナルの靴下が作れる「靴下工房」というサービスを始めた。

 紳士、婦人、子供用の全7サイズと、グレーとチャコールの2色から選べ、設置されたパソコンで絵を描けば、靴下に編み込むことができる。税込み価格は無地が1足400円、柄入りが同600円となっている。

柄は、白・黒・赤・青・緑・黄の6色を使って描くことができる
柄は、白・黒・赤・青・緑・黄の6色を使って描くことができる

 サービスがスタートすると、たちまちSNSで話題になった。同サービスの狙いを、良品計画衣服・雑貨部雑貨担当カテゴリーマネージャーの石川和子氏はこう語る。

 「無印良品には『直角靴下』という人気商品があり、靴下に力を入れている。店舗に編み機を導入して製造販売するのは、イベント以外では初の試み。靴下を商品として強くしていきたいという思いから、編み機を導入した」(石川氏)

靴下工房の中に設置された大きな編み機
靴下工房の中に設置された大きな編み機

 特にターゲットは絞っておらず、普段から無印良品を利用しているあらゆる年代の人に向けてスタートさせたとのこと。オープンから1カ月ほどたった時点で、30~40代の女性の利用者が多いという。プレゼントとしてのニーズも高く、子供と一緒に来店し、「パパだいすき」と描いた靴下を作る、といったこともあるそうだ。

店内に設置されたパソコンで絵を描く
店内に設置されたパソコンで絵を描く
写真のグレー部分に絵を描いていく。上が履き口、下がつま先となる
写真のグレー部分に絵を描いていく。上が履き口、下がつま先となる
こちらが完成した靴下
こちらが完成した靴下

 実際に出来上がった靴下を渡されたお客から、感動の声が上がることも。いずれはオーダーメードに近いサービスにしていきたいという。「一人ひとりに合ったサイズとデザインを提供できたら」と話す石川氏。次のステップとして、丈のバリエーションを増やしていく考えだ。

小さな不満や気付きが、ヒットにつながる

 なぜ、錦糸町パルコ店から編み機のサービスをスタートさせたのか。19年4月4日にオープンした新旗艦店の銀座店や、大阪の堺北花田店など、売り場面積の広い店舗は他にもあるが、この店でスタートさせたこだわりとは何なのか。

 「錦糸町パルコ店は、売り場面積が関東で最大級。無印良品が展開する全てのサービスがある。買い物中に親子で遊べる『木育広場』、飲食店の『Café&Meal MUJI』、本を扱う『MUJI BOOKS』、紙製品などに押してオリジナルのアイテムができる『スタンプサービス』、布製品に刺しゅうができる『刺繍工房』などだ。その1つとして、『靴下工房』がある。お客により良いサービスを提供するには、ある程度の規模が必要。全てのサービスがそろうなかでの編み機設置は、抜群の集客効果があったと思う」(石川氏)

子供売り場も広々としている
子供売り場も広々としている

 錦糸町パルコがある東京都墨田区は、江戸時代からもの作りの町として発展してきた。そんな地域だからこそ、より多くのお客に靴下を試してもらいたいという思いがあった。

 「無印良品には、直角靴下という人気商品がある。無印の靴下のかかとは全て直角になっていて、靴下へのこだわりが強い。“もの作り”として直角靴下で何かできないか、という話になったのが、編み機を設置することになったきっかけ」と石川氏は話す。

履き心地に定評のある直角靴下(提供/良品計画)
履き心地に定評のある直角靴下(提供/良品計画)

 靴下工房はSNSでも話題となった。拡散させるための戦略はあったのか。

 「戦略的にやっていた、というほどではない。販売員スタッフの協力を得ながら、店舗のブログやSNSで発信を続け、それがどんどん広まっていった」と石川氏。他にはないサービスだからこそ、自然と話題を呼んだようだ。

 また、無印良品の商品開発では小さな不満や気付きを見逃さないという。

 「お客が不満に思うこと……例えば、履き口がかゆい、丈が短い、パンプスの中で脱げてしまうなどを、どう解消していくかを念頭に置いている。チームとしてお客に役立つ商品作りをしているので、履き心地のいい靴下ができて、その思いもお客に伝わって、リピーターになってくれるのだろう」(石川氏)

 店舗への問い合わせや、モニタリング、アンケートなどで、お客の声を吸い上げているという。そして何より、無印良品の商品を日ごろから自分たちで身に着けている。チームのメンバーや社内からも声を集めているそうだ。

 「無印良品のもの作りは、暮らしの困っていることを改善するという考えが基になっている。お客の声だけでなく、実際に自分たちが使って、『ここが気になる』『もっとこういったものがあったらいいんじゃないか』という普段の気付きからも、サービスが生まれる。これが無印良品の商品開発の基本的な流れ」(石川氏)

 大規模なマーケティングを基にサービスを立ち上げたり、プロジェクトを成功させるために調査をしたり、ということはあまりないとのこと。あくまでも、自分たちの普段の気付きや、ユーザーの声を大事に拾い上げたもの作りやサービスが、ヒットにつながっている。これが無印良品が長く愛される商品を生み出している理由のようだ。

編み機で作られた、愛らしい子供サイズの靴下
編み機で作られた、愛らしい子供サイズの靴下

(写真/梶塚美帆、写真提供/良品計画)