小さな不満や気付きが、ヒットにつながる

 なぜ、錦糸町パルコ店から編み機のサービスをスタートさせたのか。19年4月4日にオープンした新旗艦店の銀座店や、大阪の堺北花田店など、売り場面積の広い店舗は他にもあるが、この店でスタートさせたこだわりとは何なのか。

 「錦糸町パルコ店は、売り場面積が関東で最大級。無印良品が展開する全てのサービスがある。買い物中に親子で遊べる『木育広場』、飲食店の『Café&Meal MUJI』、本を扱う『MUJI BOOKS』、紙製品などに押してオリジナルのアイテムができる『スタンプサービス』、布製品に刺しゅうができる『刺繍工房』などだ。その1つとして、『靴下工房』がある。お客により良いサービスを提供するには、ある程度の規模が必要。全てのサービスがそろうなかでの編み機設置は、抜群の集客効果があったと思う」(石川氏)

子供売り場も広々としている
子供売り場も広々としている

 錦糸町パルコがある東京都墨田区は、江戸時代からもの作りの町として発展してきた。そんな地域だからこそ、より多くのお客に靴下を試してもらいたいという思いがあった。

 「無印良品には、直角靴下という人気商品がある。無印の靴下のかかとは全て直角になっていて、靴下へのこだわりが強い。“もの作り”として直角靴下で何かできないか、という話になったのが、編み機を設置することになったきっかけ」と石川氏は話す。

履き心地に定評のある直角靴下(提供/良品計画)
履き心地に定評のある直角靴下(提供/良品計画)

 靴下工房はSNSでも話題となった。拡散させるための戦略はあったのか。

 「戦略的にやっていた、というほどではない。販売員スタッフの協力を得ながら、店舗のブログやSNSで発信を続け、それがどんどん広まっていった」と石川氏。他にはないサービスだからこそ、自然と話題を呼んだようだ。

 また、無印良品の商品開発では小さな不満や気付きを見逃さないという。

 「お客が不満に思うこと……例えば、履き口がかゆい、丈が短い、パンプスの中で脱げてしまうなどを、どう解消していくかを念頭に置いている。チームとしてお客に役立つ商品作りをしているので、履き心地のいい靴下ができて、その思いもお客に伝わって、リピーターになってくれるのだろう」(石川氏)

 店舗への問い合わせや、モニタリング、アンケートなどで、お客の声を吸い上げているという。そして何より、無印良品の商品を日ごろから自分たちで身に着けている。チームのメンバーや社内からも声を集めているそうだ。

 「無印良品のもの作りは、暮らしの困っていることを改善するという考えが基になっている。お客の声だけでなく、実際に自分たちが使って、『ここが気になる』『もっとこういったものがあったらいいんじゃないか』という普段の気付きからも、サービスが生まれる。これが無印良品の商品開発の基本的な流れ」(石川氏)

 大規模なマーケティングを基にサービスを立ち上げたり、プロジェクトを成功させるために調査をしたり、ということはあまりないとのこと。あくまでも、自分たちの普段の気付きや、ユーザーの声を大事に拾い上げたもの作りやサービスが、ヒットにつながっている。これが無印良品が長く愛される商品を生み出している理由のようだ。

編み機で作られた、愛らしい子供サイズの靴下
編み機で作られた、愛らしい子供サイズの靴下

(写真/梶塚美帆、写真提供/良品計画)