マーケティング支援企業のイーライフ(東京・渋谷)が2019年2月に始めた訪日中国人向けのキャンペーン型マーケティングサービス「#日本购购go#(#日本gogogo#、以前の仮称は#JAPANBuyBuyBuy#)」が、成果を上げている。想定の9倍以上のPV(ページビュー)を達成し、実際の商品の購買にもつながっている。
イーライフが始めた、新たなキャンペーン型マーケティングサービス「#日本gogogo#」の具体的な仕組みはこんな具合だ。同社は、SNSなどを使って口コミを拡散・収集するプラットフォーム「buzzLife」を運営し、興味のある商品やサービスについての情報などをこのプラットフォームに無償で投稿する「buzzリーダー」を、約55万人抱えている。
今回はまず、このうち在日中国人であるbuzzリーダー100人超に対して、訪日中国人にアプローチしたい日本企業7社から預かった8つの商品を提供。実際に使ってもらった感想を、中国版Twitterといわれる「微博(Weibo、ウェイボー)」に、「#日本gogogo#」のハッシュタグ付きで投稿してもらい、フォロワーへの拡散を図った。


次いで、フォロワーから得られた投稿の中から、訪日中国人に対して購入を促せそうな内容を選んで商品・ブランド別にまとめ、イーライフのウェイボー公式アカウントにLP(ランディングページ)として投稿。さらに、このまとめ記事の一部を、訪日を検討していたり、実際に訪日したりした中国人に対してターゲティングしたうえで、広告コンテンツとして配信した。
さらに、今年春に再来日できる旅行プランなどを抽選でプレゼントする投稿キャンペーンも実施した。広告(コンテンツ)などに触発されて実際に商品やサービスを購入した訪日中国人に、その商品やサービスの写真を撮影してもらい、ハッシュタグ「#日本gogogo#」付きで口コミと共にウェイボーに投稿してもらうというものだ。
7社8商品でキャンペーンを展開
実際のキャンペーンは、2019年1月18日から2月12日まで、アサヒグループ食品や江崎グリコ、明治、三井農林、日清食品、森永製菓、資生堂という広告主企業7社から8つの商品の提供を受けて、実施された。
「成果は想定をはるかに上回っていた」とイーライフの藤原誠一郎代表取締役CEOは語る。広告主に提示した今回のキャンペーン全体の想定PV数は1200万だった。ところが実際は、ウェイボーに記事体裁で出稿したタイムライン広告のPV数が約2600万、buzzリーダーとフォロワーによる投稿や広告などから流入してきたLPのPV数が約5400万、LPの手前に当たる「#日本gogogo#」のPV数が約3700万で、合計PV数は想定の9倍以上の約1億1700万PVに達したのだ。
しかも、抽選でプレゼントが当たる投稿キャンペーンによって、「1万4000を超える中国人からのコメントが集まった」(イーライフの杉山麻喜取締役CMO)。うち、8.9%は、実際に購入した商品の画像を添付しており、「購買促進に役立っている」(杉山氏)ことも見て取れる。
なぜイーライフの新しいマーケティングサービス「#日本gogogo#」はこのような成果を上げられるのか──。最大の理由は、「マーケティングの起点となったbuzzリーダーやそのフォロワーの投稿コンテンツの質が高かった」(杉山氏)ことだ。
「KOL発の情報よりも内容の信ぴょう性は高い」
杉山氏は続ける。「投稿に対して対価を求め、自分も有名になりたいという志向が強い一般的なインフルエンサーに対して、buzzリーダーは自分の気に入った商品やサービスを無償で広めたいという考えの持ち主。今回は日本語や英語、中国語を交えながら、何とかして訪日中国人に商品の良さを伝えようと努めてくれた人もいた。説明の言葉や使用する写真には、そうした強い思い入れが反映されており、投稿を見たフォロワーやユーザーからの信頼は高くなることが多い」。
今回のキャンペーン実施に伴い、イーライフは、buzzリーダーやフォロワーからの投稿、まとめ記事を掲載したLPなどを見た中国人の多くに対して、インタビュー調査を実施した。すると、日本でいうユーチューバーのような存在として中国のSNSマーケティングをけん引しているKOL(キー・オピニオン・リーダー)の発信情報と比べ、ほとんどの人が「buzzリーダーの発信する情報のほうが信ぴょう性がある」と口をそろえたという。


また、buzzリーダーやそのフォロワーの投稿だけでなく、これらを見たりLPや広告を見たりした訪日中国人たちが、自らもその商品を取り上げて投稿するケースが多かった。「こうした動きも、キャンペーンの拡散を後押ししたようだ」と杉山氏。実際、キャンペーン期間の終了後も、#日本gogogo#を付けた投稿は続いている。
イーライフでは、訪日中国人観光客の数が増えそうな時期、例えば秋の紅葉や来年の春節の時期などに、同様のキャンペーン型マーケティングサービスを展開する考え。今回の成果を踏まえ、コンテンツのまとめ方や、コミュニティー化している#日本gogogo#ページの活用などを、新たに検討することになりそうだ。