政府も普及を後押しするキャッシュレス決済。これを受けて、PayPay、LINE Pay、d払いなどを提供するコード決済各社は、「還元率20%!」など顧客拡大に向けたキャンペーンでしのぎを削る。主な大型キャンペーンの内容をまとめた。
日本ではクレジットカードや電子マネーなど、さまざまなキャッシュレス決済の手段があるにも関わらず、経済産業省の「キャッシュレスの現状と今後の取組」によれば、その普及率は2割程度とされている(※)。偽札がほとんど出回っていない、治安がいいなど、現金を携帯し現金で支払うことへの不安が小さいことなどが、普及率が低い要因として挙げられる。だが、社会全体の効率化に果たす役割が大きいとして、近年は政府もキャッシュレス決済を推進。2025年に普及率40%を目指している。
そんな状況の中、最近注目されているのがスマートフォン(スマホ)を使ったコード決済。クレジットカードや銀行口座などにひも付いたスマホのアプリを使って、店内やレジなどに表示されたQRコードやバーコードを読み取ったり、アプリに表示したコードを読み取ってもらったりするだけで支払いが完了する。2014年にLINEが参入して以降、楽天やNTTドコモなど有力企業が続々と対応を表明している。
やや乱立気味のコード決済サービスだが、こうなってくると熱くなるのが顧客の争奪戦だ。コード決済各社は少しでも自社の決済サービスを使ってもらおうとあの手この手のキャンペーンを実施。特に「最大○○%還元」をうたうポイント還元キャンペーンは社会現象になるほどの盛り上がりを見せている。主要なキャンペーンをまとめた。
PayPay~100億円の第2弾キャンペーンを実施
2019年2月12日~5月31日
【キャンペーン概要】
・決済利用金額の最大20%をポイント還元(PayPay残高[銀行接続]やYahoo!マネーで支払った場合)
・支払い1回あたりの最大還元額は1000円相当
・キャンペーン期間全体の1人あたりの最大還元額の上限は5万円相当
PayPayは、ソフトバンクとヤフーが出資した会社が提供するコード決済サービス。18年10月にサービス開始と、楽天やLINEに比べると後発なため、顧客獲得のキャンペーンにもっとも力を入れている。18年12月には「100億円還元キャンペーン 第1弾」を実施した。大勢の利用者が家電量販店に押しかけ、その様子がSNSなどで話題になった。
第1弾キャンペーンでは、PayPay側の想定を大きく超えるスピードで100億円分の決済が行われたため、10日間という短期間で終了してしまった。そこで2月から第2弾キャンペーンを開始。第2弾キャンペーンでは、「最大20%還元」は変わらないが還元の上限額が「1カ月あたり5万円」から、「支払い1回あたり1000円、キャンペーン期間中合計で5万円まで」に変更された(関連記事「PayPay100億円キャンペーン第2弾 渋い条件の狙いは利用の定着」)。
また、PayPayは19年4月17日から関東地方と山梨県の計32店舗のイオンに導入することを発表した。同時に「イオンでPayPayはじまるキャンペーン」を実施。こちらも還元額が最大20%となっている。
LINE Pay~専用アプリ投入、決済時の使い勝手向上
2019年4月18日~4月30日
【キャンペーン概要】
・決済利用金額の最大20%のポイント還元(前月に合計10万円以上を決済した利用者で、コード決済を利用した場合)
・キャンペーン期間中のポイント還元の上限は5000円相当
・「LINE Payアプリ」で決済すると、ポイント還元の上限が1万円にアップする
LINE Payは19年4月17日、決済専用の「LINE Payアプリ」をリリースするとともに、新キャンペーン「平成最後の超Payトク祭」を発表した。キャンペーン期間中は決済額の最大20%を還元する(関連記事「LINE Payが決済専用アプリ投入 還元率20%のキャンペーンも実施」)。
LINE Payアプリ利用者には特典も用意した。通常はキャンペーン期間中の合計還元額は最大5000円だが、アプリの利用者はこれが1万円に拡大される。
なお、LINE Payアプリには、LINE Payが使える近くの店舗を検索する機能や、すぐ見つかるクーポンページ機能も実装されており、通常のLINEアプリから決済機能を利用するよりも使い勝手がいいのが特徴だ。
d払い~キャンペーンはエントリー制
2019年4月24日~5月7日
【キャンペーン概要】
・決済利用金額の最大20%のポイント還元(キャンペーンにエントリーし、指定の店舗を利用した場合)
・キャンペーン期間中のポイント還元の上限は1万円相当
「d払い」は、NTTドコモが18年4月から提供するコード決済サービス。ドコモの利用者であれば、毎月の携帯電話料金と合わせて支払う電話料金合算払いが使える。ちなみにドコモのスマホの利用者でなくても「dアカウント」を取得すればd払いが利用できる。
今回のキャンペーンは、他社と違い参加にはエントリーが必要となっている。その理由は「キャンペーン内容や注意事項をご理解いただいた上で参加いただきたい」(NTTドコモ広報)とのこと。また、キャンペーンで獲得したポイントは、携帯料金の支払いに使えないなど、用途や期間が限定される点に注意したい。
NTTドコモによれば6月10日からも「dポイント スーパー還元プログラム」を実施する。こちらも用途や期間は限定されるが、購入金額の最大7%がポイント還元される。
au Pay~対象者を限定して長期キャンペーンを実施
2019年4月23日以降の毎月3の付く日(終了時期は未定)
【キャンペーン概要】
・決済利用金額の最大20%のポイント還元(有料のauスマートパスプレミアム会員だけ。au STAR会員は5%)
・ポイント還元の上限は5000円相当/月
KDDIが提供するコード決済サービス「au PAY」は19年4月9日にスタート。4月23日から早速キャンペーンを実施した。ユニークなのがキャンペーンを実施する日で、「三太郎の日」と呼ばれる毎月3日、13日、23日が実施日となっている。
対象者は、同社の電子マネーサービス「au WALLET」の会員で、かつau STARまたは月額499円のauスマートパスプレミアムに加入している人だが、最大20%の還元を受けるにはauスマートパスプレミアムに加入している必要がある。
コード決済サービスは、今後もファミリーマートやセブン-イレブン・ジャパンが参入を明らかにしており、これに“楽天経済圏”を擁する楽天ペイ、店舗は限定ながら半額キャンペーンで地道に利用者の心をつかんでいる「Origami」などを加えて、顧客獲得競争はますます激化する。金融系でもすでにみずほとゆうちょが参入済み。どのコード決済サービスが生き残るのか、目が離せない。