ロボティクスとデザインのトップ人材が集結

 スヌーの開発に当たっては、カープ氏の妻とビジネスパートナーに加え、全米からロボティクスとインダストリアルデザインのトップ人材を探し、ドリームチームを編成した。「最も難しかったのは、夜通し安全で安定的に心地よく揺らすことと、外部音を乳児から遮断するホワイトノイズの技術。これらを高いレベルで、しかも6カ月間にわたって安定的に実現させるために、開発には2年かかった」とカープ氏は話す。研究開発の終盤では、実際に何百人もの乳児でテストを繰り返し、明らかに効果が出ていることに自信を持ったという。

 また、スヌーはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)や同サンディエゴ校(UCSD)などさまざまな大学でも研究され、スヌーが実現する安全でより長い乳児の睡眠が、母親の産後鬱(うつ)の防止に大きな効果があることを実証している。

 スヌーは、乳児の状態に応じて、4段階の揺れと音の組み合わせで、自動的にあやすことができる。乳児が興奮して泣いたりしているときは、より細かい揺れと子宮内にいるときに近い音を発し、乳児が落ち着くと最低限の揺れとホワイトノイズで眠りをサポートする。スマートフォンと連携が可能で、スマートフォンから揺れなどを調節でき、日々の睡眠の長さも自動で記録してくれる。

 多くの要望を受けて、19年1月から、スヌーは新たにレンタルプランを開始した。専用のお包み、マットレス、ベッドを覆うネットは新品で、利用期間が終わったら本体だけを返却する。買い取るより手軽に、月額98ドル(1日当たり約3ドル)で利用できるようになったため、利用者が急速に拡大しているそうだ。

 筆者が住むサンフランシスコ市ベイエリアの子育てコミュニティーでも、このスヌーが度々話題になっている。筆者も生後2カ月の娘の夜の“ぐずり泣き”に悩まされていたため、ちょうどこのレンタルプランが始まったタイミングで、スヌーを利用することにした。利用前に比べると、睡眠時間が1~2時間伸びただけでなく、就寝前にぐずる娘を何時間も抱っこして歩き回っていた時間も短縮できた。さらに、夜間授乳後も娘をスヌーに寝かせて揺らしているうちに眠ってくれるので、筆者自身の睡眠状態も大幅に改善した。

 ここ数年の間に筆者が使ったあらゆるテクノロジープロダクトの中で、スヌーは生活に最も良い方向へ大きな変化をもたらしてくれたと感じている。筆者の娘は朝まで通しで眠るまでには至ってないが、スヌーを利用する生後3カ月以上の赤ちゃんの多くが9時間睡眠するという。

 米国では近年、子供を授かるまでの不妊をサポートするプロダクト、妊娠中の胎児モニタリング、ウエアラブル搾乳機など、母親の負担を軽減するジャンル──ベビーテックと呼ばれる──が盛り上がっている。現代社会は、子供を持つことにさまざまな不安や負担が生じやすい。こういった革新的なプロダクトの誕生によって、少子化の流れが少しでも変わっていくことが期待される。

 スヌーを開発したハピエストベイビーは、2018年にスヌーのために開発したお包みをベースに、新たに5秒で乳児を包める「Sleapea(スリーピー)」という単体で使えるお包みを、第2の旗艦商品として発売、18年12月には2300万ドルの資金調達を行った。カープ氏は、次なる秘密のアイデアにも取り組んでいると明かしている。現在、スヌーは米国だけで販売されているが、今後は海外への展開も視野に入れているという。

(写真提供/ハピエストベイビー)