「好きなブランド」を聞いたとき、思い浮かべるものは人それぞれだろう。洋服が好きな人はファッションブランド、クルマが好きな人はメーカーや車種を思い浮かべるかもしれない。2019年4月22日、好きなブランドと好きな理由という条件だけで、「ブランド力」を測った調査結果が発表された。
ディズニーが圧倒的な支持率
「ブランド生態調査 Brand Seitai 2019」はビジネスフォーラム「丸の内ブランドフォーラム」と東京大学、大阪大学が共同で実施(調査期間2019年2月4~6日)。同フォーラム代表の片平秀貴氏は「どのくらいの人の脳内に、鮮明に『アマゾンが好き』と刻印されているか。それを1万人当たり何人いるのか数えれば、それがアマゾンの『ブランド力』といえるのではないかと考えた」と今回の調査の動機を語る。
一般的なブランド調査は、あらかじめ調査側が選んだブランド名を好きかどうか聞くことがほとんど。だが今回の調査では、好きなブランドと好きな理由を思いついたまま答えてもらうという方法を採った。
約7400人に好きなブランドを聞いたところ、衣食住や情報、メディア、街までおよそ1万9000個の固有名詞が上がった。調査ではこの回答を基に、1万人当たりでそのブランドを純粋に想起した延べ人数を総合スコア化してランキングしている。総合スコアの1位は「ディズニー」で、特に目立ったのは女性からの支持だ。そのブランドを好きな理由として、「夢の国」など「夢」という言葉に関連付けて答えた人が目立った。
2位の「イオン」が好きと答えた人は、回答者全体の平均年収よりも比較的低いゾーンに位置し、性別・年齢に偏りがないのが特徴。関西圏と首都圏で店舗数はほとんど変わらないが、関西圏のほうが2倍以上、支持が高かった。
「好き」でブランド同士の相関関係が見える
また、「好きなブランドを聞くことで、ブランドの相関関係も見えてくる」と片平氏。例えばクルマ・交通の領域で「メルセデス・ベンツ」が好きと答えた人は、家電・通信のカテゴリーで「ダイソン」が好きと回答。これはメルセデス・ベンツ以外のクルマが好きと答えた人の、約4倍に当たる。「メルセデスが好きな人は突出してダイソンが好きといえる」(片平氏)。
他にも生活雑貨・日用品の領域で無印良品が好きと答えた人は、ファッション、住まいの領域でも、無印良品が好きと回答している。これによって「無印良品の雑貨が好きな人は、全ての領域で無印良品が好きともいえる」(片平氏)。
では、今回の調査結果を企業はどう生かせばいいのか。
「『どこと組むか』を考えたとき、自社のブランドを好きと答えた人が選んだものを参考にするといい」と片平氏。コラボ商品やキャンペーンなどで、ブランドやカテゴリーを横断して提携するのはよくあること。そんなとき、自社ブランドのファンが同じように好む多ジャンルのブランドであれば間違いないのかもしれない。
仕掛ける側が気づきにくいコメントもあったと片平氏は話す。
「具体的な社名は言えないが、似通ったタイプの企業で、好きな理由を見比べると一方の企業にだけ『人間力がある』『温かみがある』という回答があった。そうした違いは企業側には分からないのではないか」(片平氏)
量販店でもコーヒーショップでも、人によって好きなブランドは異なるだろう。そこには価格や利便性だけでなく、単なる直感や利用時に受けた印象など、目には見えにくい要素も影響しているのかもしれない。