無料で小説が読める仕組み

 掲載作品(一般ユーザーからの投稿作品は除く)は1~3話を無料で公開し、4話以降を有料にする。現在のところ1話当たりの値段は未定。アプリ配信時に発表する予定だ。さらに読書時間に応じて、4話以降(有償コンテンツ)が無料となるチケットも配布する。読書時間が長いほど多くの無償チケットを手に入れる仕組みで、1週間継続すると、小説1冊を無料で読めるという。

読書時間に応じて課金コンテンツが無料になるチケットをもらえるというもの。読書時間の蓄積は1週間ごとにリセットされる。読書が習慣化すれば、毎日無料で読むことも可能
読書時間に応じて課金コンテンツが無料になるチケットをもらえるというもの。読書時間の蓄積は1週間ごとにリセットされる。読書が習慣化すれば、毎日無料で読むことも可能

 これらの施策によって、LINEユーザーが小説に親しむ機会を増やす、つまり「小説の習慣化」が同社の狙いだ。

 しかし「話売り」については、「既存の出版社に提案しても、なかなか『うん』と首を縦に振ってもらえない」(森氏)という。現状、マンガのデジタル市場は拡大したが、小説のデジタル市場はそれほど伸びていない。「デジタル小説の(読書の)習慣化ができているユーザーが増えれば、話売りできない小説でも読んでもらえる可能性が高まり、市場の裾野が広がる」と森氏は期待する。

いきなり“メジャーデビュー”も夢ではない

 アプリでの作品公開に先駆けて、LINEは2019年4月16日から投稿サービスを先行スタートさせた。これに伴い、KADOKAWA、講談社、新潮社、集英社、文藝春秋など出版9社がLINEノベルに参画した。

 これまでも「小説家になろう」や「魔法のiらんどNOVEL」など、自由に小説を投稿できるサイトはあった。LINEノベルがこれらの投稿プラットフォームと異なるのは、出版業界の主な枠組みである「投稿作の独占出版」を行わず、LINEノベルに参画するすべての出版社が投稿者の情報を共有する点だ。

 優れた投稿作品があれば、参画する出版社は投稿者にLINEノベルを通じて書籍化のオファーを出すことができる。ある出版社がオファーを出したという情報は、参画するすべての出版社に共有され、他の出版社も同じ投稿者にオファーを出すことが可能。複数社からオファーを受けた投稿者は、各社の条件を踏まえて最適な出版社を選べる。

 投稿者は自分の作品が複数の出版社の目に触れる機会を得るため、出版のチャンスが高まる。投稿作品が優れていれば、より好条件を獲得できる可能性もある。逆に出版社側も、“新しい才能”を発掘する機会が増える。この循環がうまく機能すれば、良質な小説が次々と生まれるプラットフォームになり得る。なお、LINEと出版社間の収益分配を含む取引条件に関しては非公開とのこと。

 現在のところパソコンでしか投稿できないが、今後はスマートフォンでも投稿できるようにするという。

投稿者自ら書籍化する出版社を選ぶことができる
投稿者自ら書籍化する出版社を選ぶことができる

 新たな才能の発掘を目的に、LINE、日本テレビ、アニプレックスの3社共同で「第1回 令和小説大賞」を開催する。プラットフォーム立ち上げに際し、投稿作品数を増やす狙いがある。

 アンバサダーには、自身初の長編小説「トラペジウム」で20万部の売り上げを突破した、乃木坂46の高山一実氏が就任。大賞受賞作品には賞金300万円に加え、作品の書籍化および映像化の権利が贈呈される。応募は2019年9月30日まで、大賞発表は2020年3月を予定しているという。

 小説の生産から流通、販売、消費まで、一気通貫で提供する新プラットフォームで、テキストコンテンツの事業化に本腰を入れ始めたLINE。「LINEスタンプ」や「LINEマンガ」、「LINE MUSIC」などに続く、新たなコンテンツ事業の柱に成長するかどうか注目したい。

新設される「令和小説大賞」の第1回アンバサダーに就任した、乃木坂46の高山一実氏
新設される「令和小説大賞」の第1回アンバサダーに就任した、乃木坂46の高山一実氏

(写真/古立康三、松野紗梨)