ソニーは2019年4月23日、薄型テレビ「ブラビア」シリーズの新製品6シリーズ19モデルを発表し、4Kテレビのラインアップを刷新した。販売戦略として力を入れているのが、構成比、出荷台数ともに増えている55型以上の大型テレビへの買い替え需要の促進だ。
テレビの4分の1は50型以上
大型テレビの売れ行きが好調だ。JEITA(電子情報技術産業協会)の民生用電子機器国内出荷統計によると、テレビの全出荷台数に占める50型以上の製品の構成比は、年々増加し2018年には23%に到達した(下図)。出荷台数も14年の71.5万台から18年には105.2万台となった。
メーカー側も“大型化”の動きへの対応を強めている。ソニーは4月23日に発表した「ブラビア」シリーズの新製品で、中型のテレビから、55型以上の大型テレビへの買い替えを訴求する。大画面でも映像のアラが目立たないように映像の処理性能を向上させた他、大画面化に伴い画面と音が聴こえてくる位置がずれて違和感が出ないようにスピーカーの配置を工夫した。
また、4K放送チューナー搭載モデルを増やし、4Kコンテンツが増えているネット動画の視聴機能やGoogleアシスタント対応といったスマートTV機能にも力を入れている。
住宅の変化と高齢化が大型化を推進
大型テレビが売れているのは、映像や音の迫力が増すからだけではない。“見やすさ”がもたらす実用性が大きなポイントになっている。
画面が大きいと、画面に対して斜めから見ても色や明るさの変化が少なくなるため、テレビの真正面に座っていなくても見やすい。「キッチンからリビングルームが見渡せるキッチンスルーの住宅が主流になり、料理や洗い物をしながらテレビを見たいという人が増えている。キッチンからでも見やすい大型テレビが好まれる」(ソニーマーケティングジャパンの古瀬隆昌氏)という。
利用者の高齢化も要因だ。「高齢化でそれまで使っていたテレビの画面サイズでは文字が見づらくなり、大型テレビに買い替えたいというユーザーが増えている」(同氏)。大画面テレビはそうした実用性や利便性でも選ばれている。
大型テレビを壁掛けする人も増えつつある。テレビ台が不要で部屋を広く使うことができることや、テレビの裏側にたまったホコリを掃除する手間がかからないことなどがメリットで、「壁掛けテレビには、女性への訴求力がある」(同氏)という。ソニーでは有機ELテレビ向けに、見やすい角度に調整できる首振り機能つきの壁掛け金具を新たに用意した。
日本市場はポテンシャルがある
ソニー以外の有力テレビメーカーも大型化に力を入れてくるのは想像に難くない。市場の拡大には消費者が「自宅のリビングルームに55型以上の大型テレビは大きすぎる」という考えをいかに払拭するかにかかっていると言えるだろう。
実は4Kテレビの最適な視聴距離は画面の縦の長さの1.5~2倍程度とされている。日本の住宅に多い10畳ほどのリビングルームなら、「55型以上の65型や75型などのテレビを設置しても視聴距離の観点からは問題ない。日本市場は大型テレビが売れるポテンシャルがまだまだある」(同氏)。
店頭でも消費者を“大型化”にいざなう工夫がされている。テレビを提案するときは、使っているテレビの画面サイズを聞くのではなく、まずリビングルームの広さを聞くようにしているという。広さに適した画面サイズのテレビを提案すると、「ほとんどの人がそれまで使っていたものより大きい画面のものを選ぶ」(同氏)ようだ。
これから20年にかけてはテレビの買い替え需要が大きく見込まれている。内閣府の消費動向調査によるとテレビの平均使用年数は9.7年で、2011年のアナログ放送終了に合わせてテレビを購入した世帯の買い替え需要が始まっている。また、19年10月には消費税増税が予定されており、20年の東京五輪・パラリンピックの開催をにらみ駆け込みでの買い替え需要も期待できる。テレビの“大型化”がますます進みそうだ。
(写真提供/ソニー)