地域性のマーケティングを読み誤る

 「そうしたら、その日じゅうにネットニュースが流れて、Yahoo!ニュースに転載され、翌日の『デイリースポーツ』朝刊の芸能・社会面に大きな記事が出ました」(佐藤氏)

 その後、テレビ、新聞、ネットニュースなどから取材が殺到。それらの宣伝効果もあり、当面は最初の配本で足りるが、在庫が切れる可能性も見えてきたため、2月中旬、さらに2万部を増刷した。

 結果、『三省堂国語辞典 第七版 阪神タイガース仕様』は4万部発行という辞典では異例のヒットとなった。この「阪神タイガース仕様」の成功に続く形で生まれた「広島東洋カープ仕様」も、発売1カ月足らずで初版2万部の半分以上を売り上げるヒット商品となった。

 「あくまでも『WIN』の指標だが、19年4月2日現在、出荷に対してのPOS(販売時点情報管理)の売り上げ(消化率)が全国で58.2%、広島県では88.8%という高い数値で、現在、三省堂の社内在庫はほぼ底をついている状態」と佐藤氏は話す。続けて、今回のマーケティング戦略における反省点も口にした。

 「出荷全体の約25%は広島県に割り当てたが、営業も人間なので、ある書店さんに何百冊と入れる勇気がなかった。結果的にそれくらい入れても良かった所もあり、勉強になった。地域性をもう少しマーケティング的に見ておけば、もっと集中的な配本ができたかもしれない」(佐藤氏)

次のコラボは市場の声で決める

 「阪神タイガース」「広島東洋カープ」とヒットを連発して、次はどんなコラボを計画しているのか最後に尋ねた。

 奥川氏は言う。

 「読者の意見をいただきながらの二人三脚という感じ。市場の動向、需要、読者の気持ちが一番大事なため、今回のはがきを熟読し、ヒントや発想が得られればと思っている」

 また佐藤氏はこう話す。

 「2球団出すと『ぜひ12球団コンプリート』という声もあるだろう。サッカーのJリーグでも『サンフレッチェ広島版を』と広がっていくものだ。そうしたお客様の声を聞きながら、決めていきたい」

 今後、市場からどんな声が上がり、どんなコラボ国語辞典が生まれるのか、今から来年の春が楽しみだ。

『三省堂国語辞典 第七版 広島東洋カープ仕様』を前に笑顔を見せる奥川氏と佐藤氏
『三省堂国語辞典 第七版 広島東洋カープ仕様』を前に笑顔を見せる奥川氏と佐藤氏

(写真/荒井貴彦、写真提供/三省堂)