九州を中心にディスカウントストアなどを展開するトライアルホールディングス(福岡市)は、2019年4月19日にリニューアルオープンするフラッグシップ店舗「メガセンタートライアル新宮店」に小売りに特化したAI(人工知能)カメラ1500台を設置する。人物や商品を認識させ、購買分析などに生かす。

左からRetail AIの永田洋幸社長と同社取締役CTO兼トライアルグループCTOの松下伸行氏
左からRetail AIの永田洋幸社長と同社取締役CTO兼トライアルグループCTOの松下伸行氏

 メガセンタートライアル新宮店が導入するのは、トライアルホールディングスが2018年11月に設立した子会社Retail AI(東京・港)の「リテールAIカメラ」(関連記事:「【特報】九州のスーパーがAIカメラメーカーに トライアルが量産」)。スマートフォンをベースに同社が中国・深センで独自に開発した。1300万画素のカメラを搭載し、静止画やハイビジョン動画を撮影できる。通信は無線LANと有線LANに両対応。HDMI、USBの端子を搭載している。

 メガセンタートライアル新宮店では、このカメラ1500台を商品棚のプライスレールに設置。向かい合った棚に並んだ商品を認識させ、棚ごとの売り上げ状況を分析する。POSでは店舗全体での商品売り上げしか分からないが、棚ごとの動向が分かれば、陳列場所や方法の工夫にもつながる。欠品状況を随時把握して、バックヤードから商品を補充するタイミングも適正化できる。

 19年4月15日に開催した発表会では、店舗を模した棚を置き、デモを披露した。そこでは、棚の様子を静止画で撮影して、バックヤードのディスプレーに表示していた。説明員によると、リテールAIカメラはハイビジョン動画も撮影できるが、必ずしも動画で撮影する必要はない。「来店客の数や商品の稼働状況に応じて、10分に一度、30分に一度などの間隔で撮影した画像でも、状況把握には十分だ」という。

棚のプライスレールに設置した「リテールAIカメラ」。あまり目立たない
棚のプライスレールに設置した「リテールAIカメラ」。あまり目立たない
バックヤードでカメラが撮影した画像を見たイメージ
バックヤードでカメラが撮影した画像を見たイメージ

サイネージと連動し、顧客別の広告を出す

 合わせて、210台のデジタルサイネージを導入し、これらとも連動させる。リテールAIカメラをサイネージに取り付けて、前を通る顧客を認識。顧客ごとに表示する商品のプロモーション映像を変えるなどの取り組みを行う。「例えば、カートを押している人には箱売りの商品を、手ぶらの人にはバラ売りの商品を薦めるといったことができる」(Retail AI 取締役CTO兼トライアルグループCTO 松下伸行氏)。

リテールAIカメラを取り付けたデジタルサイネージ。画面の上に付いているカメラは顧客を認識、下に付いているカメラはセット・トップ・ボックスとして機能している
リテールAIカメラを取り付けたデジタルサイネージ。画面の上に付いているカメラは顧客を認識、下に付いているカメラはセット・トップ・ボックスとして機能している
セット・トップ・ボックスとして使う場合、HDMIケーブルでデジタルサイネージに、USBケーブルで電源に接続
セット・トップ・ボックスとして使う場合、HDMIケーブルでデジタルサイネージに、USBケーブルで電源に接続

 なお、デジタルサイネージと連動させる際は、リテールAIカメラをセット・トップ・ボックス(STB)として使うこともできる。リテールAIカメラをHDMIケーブルでデジタルサイネージと接続すると、リテールAIカメラ経由で映像を配信できるという。

 1台で複数の機能を果たすリテールAIカメラだが、「価格は1台1万円程度に抑えた。量産すれば、もっと安くなるはず」と松下CTO。トライアルでは、福岡市にある「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」、福岡県大野城市にある「トライアル Quick大野城店」に以前からスマートカメラを導入しているが、「今回開発したリテールAIカメラのほうが低価格で導入できる」(松下CTO)。まずはトライアルの店舗に導入し、小売業界の他社にも販売を拡大する方針だ。

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