買い物代行サービス「Twidy」を運営するダブルフロンティア(東京・千代田)は、日産自動車や東京電力のグループ企業と組んで集合住宅を対象にした「Twidy Mansion」の実証実験を開始した。日産の車両を使うことでサービスの効率を高め、有名企業と組むことでサービスの認知拡大を狙う。
地理に通じた電力検針員を活用
Twidy(ツイディ)は、スマホのアプリなどから利用できる買い物代行サービス。通常のネットスーパーと同じように生鮮食料品などを注文すると、買い物代行者が提携のスーパーで買い物し、配達スタッフが自宅まで届けてくれる。
今回のTwidy Mansion(ツイディ・マンション)は、対象を集合住宅にしたことに加えて、配達を日産の車両で行う点が従来のTwidyとの大きな違い。Twidyの配達担当のスタッフ(Twidyではクルーと呼ぶ)として提携する新聞配達員などのバイクや自転車では、配達する積載量に限度があり、複数人の注文を1度では運べなかった。車両を活用することで、1度に配達できる買い物の量も格段にアップ。加えて、買い物代行と配達のクルーを分ける必要がなくなり、サービスの運用が楽になった。
実証実験は、2019年4月に品川シーサイドにある高層マンションの住人を対象に実施。Twidy Mansionの提携スーパーであるライフコーポレーション東馬込店の商品を対象として、東電のグループ企業の電力検針員などがクルーとして買い物を代行し、日産の車両で配達する。
電力検針員は地理に通じているうえに、最近ではスマートメーター(次世代電力計)の導入で業務量が減り、検針作業が半日程度で終わるため、適任だと判断。車両は日産の「NV100 クリッパー」で、黒ナンバーでなく、黄色ナンバーの軽自動車だ。
車両はマンションの空いた駐車スペースに常設する。日産の利点としては、「将来的に自社のカーシェアサービス『e-シェアモビ』を(マンションに)設置できる」と、ダブルフロンティアの八木橋裕社長は話す。
代行料はオーダー1回につき500円。これをダブルフロンティア、日産、クルーの3者で分配する。
認知の拡大が課題
実証実験では対象の2棟800戸のうち15戸の住人が実際に登録した。八木橋社長によると、「(実証実験の)単価は2000~3000円で、生鮮食品の注文が多かった。オムツの注文も多かったので小さな子供がいる世帯がメインだと思う」と語った。
一方で登録が15戸にとどまった点について八木橋社長は、「スタートアップは知名度が低いので、Twidyに限らず、新規獲得が難しいのは事実」と話す。ただし、「1度使い始めるとリピート率が高く、お買い物代行サービス自体には満足頂けていると思っている」(八木橋社長)とも。実際、利用者アンケートでも満足度は高かったようだ。「愚直に新規獲得をやっていくしかない」と八木橋社長は決意を語った。
認知度を高める手段として、「住民に安心感を与えることができるマンションの管理会社の協力を得られると大きい」(八木橋社長)と話した。
大手企業での就業経験を生かす
Twidyは18年9月に運用を開始した。ダブルフロンティアが買い物代行サービスを始めたのは、ネットスーパーの問題点を解消したいという思いから。「ドライバー不足ですぐに注文枠が締め切られて、届くまで2~3時間というタイムロスが生じる」と、八木橋社長はネットスーパーの課題を指摘する。
そこで、専門のドライバーを確保せず、自分の買い物の“ついでに”注文者の分も買い、1時間以内に届けるという互助サービスに思い至った。時間設定は、同じく1時間以内で届けてくれる米国の買い物代行サービス「インスタカート」を参考にしたという。
とはいえ、「知らない人に買い物の内容を知られることを警戒する人が多いため、初めからCtoCで稼働するのは難しい。まずは有名な企業とタッグを組んで認知度を高めることにした」と、八木橋社長は話す。
八木橋社長は17年間、大手通信会社KDDIに勤め、独立後もNTTグループをはじめとする大企業とのコラボビジネスを推進してきた。この経歴から得た人脈が日産や東京電力など認知度の高い企業との提携につながった。
「大企業で働いた経験は大きい。KDDI時代には大企業側のプロジェクトリーダーとして、当時スタートアップ企業だったルクセンブルクSkype社とのコラボ案件『Skype auプロジェクト』を成功させた。その経験から、大企業の意思決定プロセスやスタートアップと大企業間の交渉ステップ、意識の違い、陥りやすい失敗などを心得ている」と、八木橋社長は自負する。
将来的には買い物代行や配達を、一般の登録者が互いに担い合うCtoCを理想としているという。日本人のプライバシー意識の高さをどう乗り越えるかが鍵となりそうだ。
(画像提供/ダブルフロンティア)