iPad miniは18年に刷新された、アップルの電子書籍サービス「Apple Books」との相性もいい。片手である程度長い時間持ち続けられるiPad miniのサイズ感が、ここでも生きている。Retinaディスプレイは精彩感が高い。反射率をiPad Proと同じ1.8%に抑えた光の映り込みが少ない画面は、屋外で電子書籍やWebをチェックするときに有効だ。

 iPad mini、iPad Airともに、周辺環境の光に画面の色合いを自動で合わせる、「True Toneテクノロジー」も初めて採用した。電子書籍の画面は紙に近いホワイトなど、常時ナチュラルなカラーバランスに整えてくれるので目に優しく感じた。電子マガジンサービスの「Apple News+」の日本上陸発表はないが、北米やカナダ、オーストラリア、英国など提供が決定している地域では、iPad miniでサービスを楽しむユーザーが増えるだろう。

Ture Toneテクノロジーにより周りの環境に合わせて最適な画面の色合いが得られる。電子書籍コンテンツが見やすい
Ture Toneテクノロジーにより周りの環境に合わせて最適な画面の色合いが得られる。電子書籍コンテンツが見やすい

 アップルの独自制作コンテンツを含む動画配信の「Apple TV+」も、iPad miniと相性が良さそうだ。本機は4KやHDRなど最先端のディスプレー技術を搭載していないが、7.9インチのRetinaディスプレイは視認性が高い。コンパクトな端末サイズは、飛行機や電車による長時間の移動時にオフライン視聴を楽しむのに適している。イヤホン端子が使えるメリットは、動画再生でも生きるだろう。

新サービスに向け、iPad Airも処理速度を向上

 iPad Airは14年に最初のモデルが登場し、17年にいったん生産を完了したものと見られていたが、このほど久しぶりに復活を遂げた。10.5インチのiPad Proも生産完了となったため、一時的に欠けていた「10.5インチのiPad」の穴を本機が再び埋め戻した格好だ。

10.5インチのiPad Air。Apple Pencilの他、充電やBluetooth接続の要らないアップル純正キーボード付カバー「Smart Keyboard」に対応した。アップル直販サイトの最安販売価格は5万4800円(税別)から
10.5インチのiPad Air。Apple Pencilの他、充電やBluetooth接続の要らないアップル純正キーボード付カバー「Smart Keyboard」に対応した。アップル直販サイトの最安販売価格は5万4800円(税別)から

 17年に生産を完了した「iPad Air 2」に比べると、SoCが当時の「A8X」から世代が大きくジャンプアップしてA12 Bionicになり、処理性能が飛躍的に高まった。その恩恵はiPad miniと同様、Apple ArcadeやApple TV+、Apple News+といった3つの新サービスで得られるのは間違いない。本体の重さは456~464グラムと、300.5~308.2グラムのiPad miniより重いものの、この程度であればどの新サービスにもフィットするだろう。むしろ画面が大きいぶん、動画や電子書籍を楽しむにはこちらのほうが適しているかもしれない。

iPad Air、iPad miniともに本体の厚みは6.1ミリメートルに抑えている
iPad Air、iPad miniともに本体の厚みは6.1ミリメートルに抑えている

 iPad Airで、NetflixやAmazonプライム・ビデオで配信されている動画コンテンツを視聴してみた。明るさ500ニッツ、DCI-P3の広色域をカバーする10.5インチのRetinaディスプレイで、十分鮮やかな映像が楽しめた。強いて言えば、iPad Airは本体のLightning端子側に2つのスピーカーしか積んでいないため、内蔵スピーカーによるサウンドの迫力や立体感は、4つのスピーカーを搭載するiPad Proにかなわない面がある。また画面占有率の高いフルディスプレーデザインのiPad Proのほうが、映像に深く入り込めるかもしれない。

Lightning端子の側に2つのスピーカーを内蔵した
Lightning端子の側に2つのスピーカーを内蔵した
iPad AirにSmart Keyboardを装着。モバイルノートパソコンの代わりにiPad Airを選ぶケースが増えるだろう
iPad AirにSmart Keyboardを装着。モバイルノートパソコンの代わりにiPad Airを選ぶケースが増えるだろう

今後iOSデバイスはコンテンツと一緒に進化する

2019年3月25日にアップルが開催した新サービスの発表会で、ティム・クックCEOは「ハード・ソフト・サービス」による三位一体のビジネス改革が今後のAppleのテーマであると語った
2019年3月25日にアップルが開催した新サービスの発表会で、ティム・クックCEOは「ハード・ソフト・サービス」による三位一体のビジネス改革が今後のAppleのテーマであると語った

 今回2つの新製品が加わったことで、上位のiPad Proと18年3月に発売された第6世代のiPadを合わせて、現行のiPadシリーズは全4種類になった。現在タブレットにこれほどバラエティーに富んだラインアップを展開しているメーカーはアップルしかない。

 すべてのiPadが、Apple Pencilによる入力操作に対応したことも見逃せない。現在クリエイティブやビジネス系を含む、iPadに最適化されたiOSアプリが続々と増え続けており、その数は100万件を超えたとアップルは発表している。米アドビや米マイクロソフトが本格的にiPad対応アプリを展開する他、「CLIP STUDIO」「MediBang Paint」などイラストレーターやマンガ制作に携わるプロ・アマが注目するアプリも出そろいつつある。

 19年秋にApple ArcadeやApple TV+などのサービス開始後は、日本でも5Gによる高速通信サービスの本格商用化が話題になるのは間違いない。5G対応の端末やインフラが一般に普及するタイミングは、商用サービスの開始後しばらくたってからだろう。しかしそのときに向けて、多種多様なオンラインコンテンツが快適に楽しめるハイパワーで比較的安価なiPadを今回商品ラインアップに加えたことは、いよいよアップルがコンテンツサービスのプラットフォーマーとしても、本腰を入れてきたことを意味している。

(写真/山本 敦)