健康に気を遣う40~50代の男性に支持される特定保健用食品(トクホ)飲料。中でも食事に合わせやすい緑茶は人気だ。「伊右衛門 特茶」のスマホアプリのリリースや大規模なキャンペーンで積極的に仕掛けるサントリーに対し、コカ・コーラは慎重な姿勢を見せる。
トクホ茶の味の選択肢を増やしたかった
2019年4月1日、日本コカ・コーラは「綾鷹 特選茶」のパッケージをリニューアルした。主な変更点は2つ。トクホのロゴマークを従来品より大きな表示にしたことと、効果・効能をパッケージ表面に分かりやすく表記した点だ。18年9月24日の発売からわずか半年。認知度が高まってきたタイミングで、なぜパッケージを一新したのか。
「リニューアルは早ければ早いほうがいい。半年でも遅いくらいだ」と、同社マーケティング本部ティーカテゴリー緑茶グループの助川公太グループマネージャーは言い切る。これまでの綾鷹 特選茶はトクホマークがやや小さめ。効果・効能もパッケージに印字してあるものの、こちらも表示が小さくて分かりにくかった。そのためトクホであることが伝わりにくいという声があり、視認性を高める必要が出てきたのだ。
同社のトクホ茶には14年4月に発売したブレンド茶「からだすこやか茶W」があり、シェアトップのサントリー「伊右衛門 特茶」を追いかけている。しかし、ひとくちにお茶といっても、ブレンド茶を好む人もいれば緑茶を好む人もいる。「トクホの緑茶を開発することで、自社商品の中での選択肢を増やしたかった」と助川グループマネージャーは話す。
13年10月の発売以来、2ケタ成長を続けてきた伊右衛門 特茶も、17年は前年比98%、18年は前年比90%に落ち込み、トクホ飲料市場全体が低迷した。「だが、これをチャンスと捉え、既存のトクホ茶にはなかったニーズを掘り起こそうと考えた」(助川グループマネージャー)。
離脱を防ぐより「認知を広げたい」
そこで、日本コカ・コーラが目を付けたのは、飲用シーンの強調だった。「食事と一緒に飲む」ことを訴求し、食との関係を結び付けやすいスーパーマーケットでの販売を強化。トクホ飲料、特に茶のユーザーは40~50代男性が中心だが、家族の健康を気遣う女性の目も意識した。パッケージリニューアルと同時に、1リットル入りをラインアップに追加。販売数量などは公表していないが「計画通り順調に進んでいる。特に味に対して高い評価を得ている」と助川グループマネージャーは胸を張る。
サントリーが市場の再拡大を目指して積極的な戦略を展開する一方で、「綾鷹 特選茶は『間口を広げる』ことが最も重要」と助川グループマネージャーは考える(関連記事「スマホアプリで「トクホが続かない人」を引き留めるサントリー」)。
「現ユーザーの離脱を防ごうと考えるよりも、認知度を高めることを優先したい。トクホ飲料は一定数のユーザーがいるので、機能性を正しく伝えることができれば(綾鷹 特選茶の)シェアは広がるはずだ」(助川グループマネージャー)
(写真/北川聖恵、写真提供/日本コカ・コーラ)