プロ野球独立リーグのルートインBCリーグは、コンテンツ制作会社のOceansと組み、同リーグ傘下の選手を紹介する番組のネット配信を始めた。番組では掛布、田尾、川相といった球界のレジェンドが選手のプロモートに一役買う。3人のレジェンドに、BCリーグと選手への思いを聞いた。

ルートインBCリーグと「KIZUNAプロジェクト」協業記者会見より。左から村山哲二ジャパン・ベースボール・マーケティング社長、堀主知ロバートOceans社長、掛布雅之・阪神タイガース オーナー付シニアエグゼクティブ・アドバイザー、田尾安志・東北楽天ゴールデンイーグルス初代監督、川相昌弘・読売新聞スポーツアドバイザー、司会進行役を務めたお笑いタレントのそうすけ氏
ルートインBCリーグと「KIZUNAプロジェクト」協業記者会見より。左から村山哲二ジャパン・ベースボール・マーケティング社長、堀主知ロバートOceans社長、掛布雅之・阪神タイガース オーナー付シニアエグゼクティブ・アドバイザー、田尾安志・東北楽天ゴールデンイーグルス初代監督、川相昌弘・読売新聞スポーツアドバイザー、司会進行役を務めたお笑いタレントのそうすけ氏
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プロ野球のレジェンドたちが選手を応援

 熱心な野球ファンを除けば、ジャパン・ベースボール・マーケティング(東京・練馬)が運営するプロ野球独立リーグ「ルートインBCリーグ(以下BCリーグ)」を知っている人はそれほど多くないだろう。そのBCリーグが、創立から13年を経てドキュメンタリー番組「Dreamers~夢を追いかける男達~」のネット配信を開始した。この番組は、アスリートとファンをつなぐことを目的としたSNS「KIZUNAプロジェクト」を運営するOceansとの協業による生配信で、コンテンツ専用アプリ「KIZUNA LIVE!」で視聴できる。

「KIZUNA LIVE!」アプリ。アーカイブではBCリーグの選手たちがプレーする姿を見ることができる
「KIZUNA LIVE!」アプリ。アーカイブではBCリーグの選手たちがプレーする姿を見ることができる
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 「Dreamers」では、球界のレジェンドたちが未来のスター選手を取材する中でイチオシの選手を選び、彼らが2019年プロ野球ドラフト会議の日を迎えるまでを追う。レジェンドには元阪神タイガースの掛布雅之、元中日ドラゴンズの田尾安志、元読売ジャイアンツの川相昌弘といった面々がそろう。

レジェンドには写真の3人(左から掛布、田尾、川相)の他、元広島の川口和久、元ヤクルトのギャオス内藤、元日本ハムの嶋田信敏、元DeNAの古木克明、元西武の新谷博らが名を連ね、今後も増える予定
レジェンドには写真の3人(左から掛布、田尾、川相)の他、元広島の川口和久、元ヤクルトのギャオス内藤、元日本ハムの嶋田信敏、元DeNAの古木克明、元西武の新谷博らが名を連ね、今後も増える予定
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 ジャパン・ベースボール・マーケティングの村山哲二社長は、今回の取り組みの理由について「BCリーグの選手はそれぞれ、(プロにならなかった、なれなかったという)ストーリーを持っている。そういった背景を知ってもらい、応援してもらえる仕組みを作りたい」と説明する。野球のプレーだけでなく、夢の実現に向けて頑張る選手たちの姿を紹介することで、野球ファン以外の層にもBCリーグの存在を訴えかけようというわけだ。

「KIZUNAプロジェクト」を運営するOceansとの協業について語る村山社長
「KIZUNAプロジェクト」を運営するOceansとの協業について語る村山社長
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 実際、18年のドラフト会議では6人のBCリーグ所属選手が指名されているだけに、レジェンドの眼鏡にかなった選手がプロ入りする可能性は十分にある。レジェンドの一人である田尾氏は「毎年、数人ながらプロに入ってくる選手がいる。そういう選手をプロになる前から応援し、後で『プロになる前はこんな選手だったんだよ』と言えるのはうれしいのではないか。自分の家族のような感覚で応援してもらえる可能性は大きい」と語る。

堀主知ロバート氏が社長を務めるOceansが「KIZUNAプロジェクト」を運営。このSNSは、アスリートたちと直接チャットできるのが特徴だ
堀主知ロバート氏が社長を務めるOceansが「KIZUNAプロジェクト」を運営。このSNSは、アスリートたちと直接チャットできるのが特徴だ
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鍵を握るのは地域やプロとの連携と選手の“覚悟”

 BCリーグでは北陸・信越地方5県と関東地方4県、東北地方1県、近畿地方1県の計11球団が活動しており、前後期各36試合でリーグ戦が行われている。18年度優勝の群馬ダイヤモンドペガサスなど、各球団名に県名が入っているのは、BCリーグのコンセプトが「ふるさとの全力プロ野球」だから。「野球事業で(地方の)町が元気になる、(地方の)人々が元気になる仕組みを作るのがゴール」(村山社長)。

 16年から18年にかけて巨人の3軍監督を務め、BCリーグのチームと何度も対戦している川相氏は、「プロの3軍はリーグがなく、順位が出ないのでモチベーションが上がりにくい。3軍もBCリーグに参加して順位を争うようになれば、お互いにもっと盛り上がると思う」と話す。それを受けて掛布氏も「プロ野球を頂点としたピラミッド型の組織(の土台)になれば、状況は変わってくる。プロ野球側からいろいろな提案もできるだろうし、集客にもいい影響が出るはず」と付け加えた。

川相氏が持つ通算533本の犠牲バントは世界記録。通算犠打成功率は9割を超え、「バント職人」「バントの神様」の異名を持つ
川相氏が持つ通算533本の犠牲バントは世界記録。通算犠打成功率は9割を超え、「バント職人」「バントの神様」の異名を持つ
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 BCリーグは年に72試合しかないため、プロとはいえ経済的な事情で副業を持つ選手がほとんどだ。日本野球機構(NPB)の選手と違い、野球に100%打ち込めないことが課題となっている。しかし、その点に対するレジェンドの目は厳しい。

 「BCリーグの選手の中にはプロを目指す人たちもいるが、プロの選手に比べるとまだ自分に甘い。(プロになれなくてもいいという)逃げ道がたくさんあるから。その逃げ道を全部ふさいで野球に取り組むという“覚悟”がどれだけあるか。その覚悟を感じさせる選手が観客を呼べる選手だ」と掛布氏。

阪神の主力選手として活躍した現役時代は「ミスタータイガース」と呼ばれていた掛布氏。現役生活は通算15年で1625試合に出場、通算打率2割9分2厘、通算本塁打数は349本。本塁打王3回、ベストナインにも7回選ばれている
阪神の主力選手として活躍した現役時代は「ミスタータイガース」と呼ばれていた掛布氏。現役生活は通算15年で1625試合に出場、通算打率2割9分2厘、通算本塁打数は349本。本塁打王3回、ベストナインにも7回選ばれている
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 また田尾氏も「BCリーグの指導者になったプロ選手は多いが、彼らからも“甘い”という話はよく聞く」と言う。「BCリーグの選手にはもっと上を目指してほしい。『俺はまだ上にいける』と自信過剰なくらいでちょうどいい。今回のプロジェクトで“みんなが応援してくれている”と選手たちが感じることが“頑張ろう”という気持ちになってくれれば」(田尾氏)。「草野球に“毛が生えた”程度のプレーを観客は見に来ない、もっとプロ意識が必要」と、掛布氏、田尾氏は口をそろえた。

「安打製造機」と呼ばれた現役時代の田尾氏は、甘いマスクで女性ファンも多かった。現役生活は通算16年で1683試合に出場、通算打率2割8分8厘、通算本塁打数は149本。1976年の新人王、ベストナインにも3回選ばれている
「安打製造機」と呼ばれた現役時代の田尾氏は、甘いマスクで女性ファンも多かった。現役生活は通算16年で1683試合に出場、通算打率2割8分8厘、通算本塁打数は149本。1976年の新人王、ベストナインにも3回選ばれている
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 では、レジェンドたちはBCリーグの選手に対して何ができるのか。それは「グラウンドに立つまでの努力がどれだけ大切かを伝えること」と川相氏。

 それを受けて村山社長は「BCリーグの全選手約250人を4会場に分けて講習会を開いたのですが、そこで重要だったのは、プロの厳しさ、グラウンドに立つまでの努力について話してもらうこと。それを誰に話してもらうかとなったとき、満場一致で川相さんが選ばれたんですよ」と話した。

 「Dreamers」という番組が選手たちの励みになり、また選手たちがレジェンドからプロの技術や経験を学び取っていけば、BCリーグの魅力も増し、集客力も向上するだろう。

(写真/酒井康治)