鍵を握るのは地域やプロとの連携と選手の“覚悟”

 BCリーグでは北陸・信越地方5県と関東地方4県、東北地方1県、近畿地方1県の計11球団が活動しており、前後期各36試合でリーグ戦が行われている。18年度優勝の群馬ダイヤモンドペガサスなど、各球団名に県名が入っているのは、BCリーグのコンセプトが「ふるさとの全力プロ野球」だから。「野球事業で(地方の)町が元気になる、(地方の)人々が元気になる仕組みを作るのがゴール」(村山社長)。

 16年から18年にかけて巨人の3軍監督を務め、BCリーグのチームと何度も対戦している川相氏は、「プロの3軍はリーグがなく、順位が出ないのでモチベーションが上がりにくい。3軍もBCリーグに参加して順位を争うようになれば、お互いにもっと盛り上がると思う」と話す。それを受けて掛布氏も「プロ野球を頂点としたピラミッド型の組織(の土台)になれば、状況は変わってくる。プロ野球側からいろいろな提案もできるだろうし、集客にもいい影響が出るはず」と付け加えた。

川相氏が持つ通算533本の犠牲バントは世界記録。通算犠打成功率は9割を超え、「バント職人」「バントの神様」の異名を持つ
川相氏が持つ通算533本の犠牲バントは世界記録。通算犠打成功率は9割を超え、「バント職人」「バントの神様」の異名を持つ

 BCリーグは年に72試合しかないため、プロとはいえ経済的な事情で副業を持つ選手がほとんどだ。日本野球機構(NPB)の選手と違い、野球に100%打ち込めないことが課題となっている。しかし、その点に対するレジェンドの目は厳しい。

 「BCリーグの選手の中にはプロを目指す人たちもいるが、プロの選手に比べるとまだ自分に甘い。(プロになれなくてもいいという)逃げ道がたくさんあるから。その逃げ道を全部ふさいで野球に取り組むという“覚悟”がどれだけあるか。その覚悟を感じさせる選手が観客を呼べる選手だ」と掛布氏。

阪神の主力選手として活躍した現役時代は「ミスタータイガース」と呼ばれていた掛布氏。現役生活は通算15年で1625試合に出場、通算打率2割9分2厘、通算本塁打数は349本。本塁打王3回、ベストナインにも7回選ばれている
阪神の主力選手として活躍した現役時代は「ミスタータイガース」と呼ばれていた掛布氏。現役生活は通算15年で1625試合に出場、通算打率2割9分2厘、通算本塁打数は349本。本塁打王3回、ベストナインにも7回選ばれている

 また田尾氏も「BCリーグの指導者になったプロ選手は多いが、彼らからも“甘い”という話はよく聞く」と言う。「BCリーグの選手にはもっと上を目指してほしい。『俺はまだ上にいける』と自信過剰なくらいでちょうどいい。今回のプロジェクトで“みんなが応援してくれている”と選手たちが感じることが“頑張ろう”という気持ちになってくれれば」(田尾氏)。「草野球に“毛が生えた”程度のプレーを観客は見に来ない、もっとプロ意識が必要」と、掛布氏、田尾氏は口をそろえた。

「安打製造機」と呼ばれた現役時代の田尾氏は、甘いマスクで女性ファンも多かった。現役生活は通算16年で1683試合に出場、通算打率2割8分8厘、通算本塁打数は149本。1976年の新人王、ベストナインにも3回選ばれている
「安打製造機」と呼ばれた現役時代の田尾氏は、甘いマスクで女性ファンも多かった。現役生活は通算16年で1683試合に出場、通算打率2割8分8厘、通算本塁打数は149本。1976年の新人王、ベストナインにも3回選ばれている

 では、レジェンドたちはBCリーグの選手に対して何ができるのか。それは「グラウンドに立つまでの努力がどれだけ大切かを伝えること」と川相氏。

 それを受けて村山社長は「BCリーグの全選手約250人を4会場に分けて講習会を開いたのですが、そこで重要だったのは、プロの厳しさ、グラウンドに立つまでの努力について話してもらうこと。それを誰に話してもらうかとなったとき、満場一致で川相さんが選ばれたんですよ」と話した。

 「Dreamers」という番組が選手たちの励みになり、また選手たちがレジェンドからプロの技術や経験を学び取っていけば、BCリーグの魅力も増し、集客力も向上するだろう。

(写真/酒井康治)