ダイエットしたい人や血圧、血糖値が気になる人を中心に、その手軽さから広がりを見せる特定保健用食品の飲料。そんな“トクホ飲料”の「伊右衛門 特茶(以下、特茶)」が2019年4月2日にリニューアル。プロモーションで注目は、発売に併せてリリースしたスマホアプリ「特茶スマートアプリ」だ。
飲料と健康系アプリを結び付けた
特茶スマートアプリは、特茶を手がけるサントリー食品インターナショナルが独自に開発したもの。食事や運動の記録や、特茶購入でたまるポイントでキャンペーンに応募できる。同社は18年9月に行った特茶の大規模キャンペーン「特茶プログラム」(関連記事「サントリー『特茶』大規模キャンペーンの2つの狙い」)で当選した500人を対象に、食や運動をサポートするコーチングプログラムを提供していた。そのプログラムで得た知見を基に、新たにアプリを開発した。
だが、特茶の中心購買層は40~50代。アプリを使いこなすには若干年齢が高めという印象がある。食事や運動を記録するアプリも珍しくない。健康への関心が高い人は、すでに別のアプリを使っている可能性もある。
「特茶スマートアプリのポイントは、飲料と組み合わせたこと」と特茶ブランドマネージャーを務める、サントリー食品インターナショナル ブランド開発事業部の溝本将洋課長は話す。
「食事中やそれ以外でも、誰もが毎日必ず水分をとる。どこでも手軽に買えるペットボトル入り飲料と健康系アプリを結び付けたことに意味がある」(溝本課長)。アプリダウンロードのハードルを下げるため、商品本体に2次元コードを付け、スマートフォンで読み取るだけでダウンロード画面にアクセスできるようにした。
「健康を提案してサポートする」ブランドへ
アプリをリリースしたのは、キャンペーンへの誘導や販売促進のためだけではない。トクホ全般に共通する「なかなか続かない人」をサポートする目的もある。
健康のためにジムに入ろうと思っても、入会手続きの煩雑さや入会金で断念することもある。一度やめてしまうと、再開するのは腰が重いという人も多いだろう。それに対し、「飲料の良さは、一度やめてもいつでもまた始められるところ」と同社ジャパン事業本部の沖中直人戦略企画本部長は分析する。
18年9月の大規模キャンペーン実施後に、特茶の売り上げはV字回復。前年比100%を上回った。特茶プログラムで、利用者の9割が女性という健康系アプリ「FiNC(フィンク)」と手を組んだことで、女性の新規ユーザーが獲得できたことに加え、「一度脱落したユーザーが戻ってきた」(沖中本部長)のが大きな要因だ。
同じ500ミリリットル入りの緑茶「伊右衛門」と比較すると、特茶の価格はおよそ1.2倍。あまり効果が実感できない人にとって、毎日のように飲む飲料のこの価格差は小さくない。そこで同社は、付加価値の高い商品をただ並べて売るのではなく、アプリ提供やキャンペーン強化でユーザーに健康な生活を提案し、それを支援する方針に転換したというわけだ。
アプリ提供に併せ、500ミリリットル入りペットボトルを購入して応募した人を対象に、アプリと連動するオリジナルのスマートウオッチや体組成計が当たるキャンペーンも実施。初年度のアプリのダウンロード数は40万件が目標だ。
(写真/樋口可奈子、写真提供/サントリー食品インターナショナル)