シンプルなデザインや素材を生かした商品に定評のあるブランド「無印良品」が、2019年4月4日、東京・銀座に旗艦店「無印良品 銀座」を開業した。売り場面積約4000平方メートルと無印良品単独としては世界最大。注目は世界3店舗目となる同ブランドのホテルを併設している点だ。
「『無印良品のホテル事業』という認識はない」
無印良品 銀座はビルの1~6階。地下1階はレストランで、ホテルは6~10階に入る。「1980年に無印良品を立ち上げた当初から、『ホテルをやってはどうか』という声があり、長年の夢だった」と、同ブランドを手がける良品計画の松崎暁社長は振り返る。
MUJI HOTEL GINZAは中国・深セン、北京に次ぐ世界3店舗目のホテル。木・石・土などの自然素材を使い、無印良品の世界観を生かした内装が特徴だ。アメニティー類は無印良品でそろえられ、一部は1~6階の店舗で購入できる。19年3月下旬から予約受け付けを開始したが、当面予約だけで満室状態。18年に開業した中国の2店舗も、好調に推移している(関連記事「中国・深センに開業したMUJI HOTEL1号店 稼働率80%と好調な訳」)。
だが、「良品計画がホテル事業を行っているという意識はない」(松崎社長)。良品計画は備品の提供やデザインに関わっているだけで、宿泊客に対するオペレーションは、ホテルの企画・設計、運営などを手掛けるUDSに任せているというのがその理由だ。ホテルについて、「数を増やすことを目標にしていない。ホテル経営は(協業する)相手があってできること。理想とするホテルを作れるパートナーが見つかるかどうかにかかっているので、次は考えていない」と松崎社長は話す。
今後も「食」に注力、初の弁当販売も開始
ホテルの今後は未定とする一方、無印良品として力を入れていくことを明言したのは、食に関する分野の充実だ。「無印良品は生活の基本領域を追求するブランドだが、食に関してはこれまでレトルトや菓子などが中心で、基本が欠落していた」(松崎社長)。
ここ数年、無印良品は食品のラインアップを強化している。17年には旗艦店だった有楽町店(18年12月に閉店)で、同ブランド初となる青果売り場を導入。また18年3月には、イオンモール堺北花田店に生鮮食品と総菜、食料品、ベーカリーなどを取り扱う食の大型売り場を設け、同年9月には冷凍食品にも進出した(関連記事「無印が“生鮮スーパー”に挑戦する理由は『アンチAI』」、「無印良品の冷凍食品 キンパ・カスレ…ユニークな品ぞろえのワケ」)。
旗艦店となる銀座店は、1階のワンフロア全てが食に関する商品。従来のレトルト食品に加え、冷凍食品の品ぞろえも多い。茶葉を組み合わせて好みのブレンドティーが作れるコーナーや、フルーツを使ったジューススタンドもあり、青果売り場では試食も行う。まずは旗艦店からスタートし、反響を見ながら全国に広げるサービスもあるだろう。
狙うのは観光や買い物の客だけではない。近隣のオフィスワーカーをターゲットに、同ブランド初となる弁当の販売も開始。店内で焼き上げるベーカリーは、午前7時半から営業を開始する。「銀座には朝食を食べられる店がほとんどない」(松崎社長)からだ。
大型の家具などに比べると、単価の低い食品は一見営業利益にはつながりにくいように見える。だが「食品を目当てにする人は、来店回数が増えるというデータがある。無印良品 銀座の開業をきっかけに、全世界の店舗で食の拡大を目指す」と松崎社長は意気込む。入館客数は年間230万人を見込んでいる。