アジアで最も優れた書店と評される台湾の誠品生活が2019年9月、日本に初上陸することが決まった。場所は、東京・日本橋に誕生する新商業施設「コレド室町テラス」。同じビルにはトヨタ自動車が立ち上げた新会社などがオフィスを構え、東京のビジネス地図をも塗り替えるインパクトを秘めている。

東京・日本橋に2019年9月27日、「コレド室町テラス」がオープンする。日本初進出となる誠品生活に加え、集客力のあるテナントが多数入居。写真は地下1階の飲食店フロアのイメージ
東京・日本橋に2019年9月27日、「コレド室町テラス」がオープンする。日本初進出となる誠品生活に加え、集客力のあるテナントが多数入居。写真は地下1階の飲食店フロアのイメージ

 東京都心の日本橋にこの秋、また1つランドマークが増える。1万平方メートルを超す一等地の再開発で生まれる「コレド室町テラス」だ。三井不動産が開業日を2019年9月27日と発表した。

 コレドとは「CORE(核)」と「EDO(江戸)」を組み合わせた造語。三井不動産が三井グループ発祥の地である日本橋で推し進めるプロジェクトで、江戸時代に商業の中心地だった日本橋のにぎわいを現代によみがえらせるという使命を帯びる。

 04年3月にまずは「コレド日本橋」が誕生し、10年10月に「コレド室町」(現在の「コレド室町1」)を、14年3月に「コレド室町2」と「コレド室町3」をオープン。コレドのブランド力は絶大で、関東広域から人を呼び寄せる、まさに東京の商業の新たな“核”となった。

 畳み掛けるように登場するコレド室町テラスは、“5棟目のコレド”では終わらない。三井不動産の旗艦プロジェクトというべき存在で、伝統と最先端が融合したショールームのような場所になる。

 建物は高さ約140メートル。地上26階、地下3階建てで19年3月28日に完成した。ビルの名は「日本橋室町三井タワー」。実は大部分がオフィスフロアで、コレド室町テラスはこのうち、地下1階から地上2階の3フロア。商業施設としては小粒ながら、その集客力は侮れない。

日本橋室町三井タワーの全景。低層の3フロアが商業施設「コレド室町テラス」で、その上はすべてオフィスフロアだ
日本橋室町三井タワーの全景。低層の3フロアが商業施設「コレド室町テラス」で、その上はすべてオフィスフロアだ

 目玉は、メインテナントとして2階のワンフロアを丸々使う「誠品生活日本橋」だ。誠品は1989年、台北市に1号店を構えた。台湾と中国・蘇州、香港に40店以上を展開し、今回が中華圏以外で初進出となる。

 その土地の文化が薫る、世界に二つとない独創的な店づくりと、良質な選書力に定評があり、米タイム誌が「アジアで最も優れた書店」に選出。蔦屋書店が参考にしたことでも知られる、名実共に台湾を代表するブランドだ。三井不動産が日本橋に足りないと考えていた滞在型の「サードプレース」として、4年掛かりで誘致した経緯がある(「蔦屋書店が見習った「アジア最高の書店」が上陸 何がスゴい?」)。

 日本橋で展開するのは、書籍だけでなく、ライフスタイル全般。毎日のようにワークショップなどのイベントを催し、台湾の美食を集めたレストラン、雑貨や食の物販を加えた、いわば百貨店型の店舗として運営する。書店部分は有隣堂(横浜市中区)が担当し、日本ならではの選書に力を入れる。

誠品生活は文化が薫る店づくりに定評がある。写真は台中の中友店
誠品生活は文化が薫る店づくりに定評がある。写真は台中の中友店

ナポリピザの名店も日本初上陸

 コレド室町テラスのコンセプトは「『価値ある時間』を、過ごす場所。」(三井不動産)。その狙い通り、国内外から数々の美食をえりすぐったことが見て取れる。店舗数は全部で31。誠品生活以外にも、行列必至の顔ぶれになった。

 イタリアのグルメガイド「ガンベロロッソ(Gambero Rosso)」で最高評価に輝いた「Gino Sorbillo Artista Pizza Napoletana」も日本に初上陸する。創業80年を超すナポリピザの名店で、「イタリア人が待ってでも食べたいと列をなす」(三井不動産)。店名に冠するジーノ・ソルビッロ氏(Gino Sorbillo)はナポリピザ業界のカリスマとして知られ、日本でも開業直後から、何時間待ちという光景が広がりそうだ。

 福岡からは、手土産の定番「だしいなり」の専門店「海木(かいぼく)」と、九州料理酒場「博多ニューコマツ」が上陸。北海道からは、白い恋人でおなじみの石屋製菓が道外初のカフェ「(仮称)ISHIYA NIHONBASHI」を構え、道産素材をふんだんに使ったパン、洋菓子で人気のカフェ「フェルム ラ・テール 美瑛」が進出する。熊本からは、南阿蘇発のハーブティー専門店「南阿蘇TEA HOUSE」がお目見えする。いずれも、関東初出店だ。

 この他、東銀座に本店を置き、ミシュランガイド東京で4年連続ビブグルマンを獲得した「OSAKAきっちん。」など、人気と実力を兼ね備えた飲食店が多数、商業施設デビューを果たす。日本橋人形町で130年以上の歴史を誇る老舗ハンカチ専門店「CLASSICS the Small Luxury」など、日本橋らしい手仕事の専門店も集う。

 全31店のうち、日本初上陸2店、関東初出店5店、商業施設初出店10店、新業態10店(重複も含む)と、初顔ぞろいのラインアップとなった。

にぎわいを呼び込む4つのゾーン

 東京メトロ三越前駅、JR新日本橋駅直結の地下1階は、ライブ感がテーマ。モーニング、ランチ、ちょい飲み、ディナー、テークアウト、2次会まで、いつ訪れても多様なニーズに応えられる個性豊かな9店を集めた。

コレド室町テラスの表玄関となる1階のイメージ
コレド室町テラスの表玄関となる1階のイメージ

 表玄関となる1階は、4つのゾーンで構成。大屋根付きの約1500平方メートルに及ぶ広場に面した一角を「広場ゾーン」とし、中央通り、江戸通り、日銀通りに面した区画をそれぞれ「中央通りゾーン」「江戸通りゾーン」「パサージュゾーン」と命名した。

1階は4つのゾーンに分かれている。緑が広場ゾーン、青が中央通りゾーン、紫が江戸通りゾーン、オレンジがパサージュゾーン
1階は4つのゾーンに分かれている。緑が広場ゾーン、青が中央通りゾーン、紫が江戸通りゾーン、オレンジがパサージュゾーン

 広場ゾーンには日本初上陸のナポリピザ店をはじめ、開放的なカジュアルカフェやダイニング5店が軒を連ねる。中央通りゾーンには、手土産にも最適な雑貨と食のセレクトショップを中心に8店が集結。江戸通りゾーンには、会食や接待など、落ち着いて食事が楽しめるレストラン2店を配した。パサージュゾーンは、その名の通り、人々が行き交い、夜まで活気があふれる飲食店で構成する。

 特別感のある美食やセレクトショップを地下1階から積み上げていくフロア構成は、三井不動産が18年3月に開業し、計画を大きく上回る年間2200万人を集めた東京ミッドタウン日比谷でのノウハウが生きている。コレド室町テラスは、コレド室町1~3やYUITO、日本橋三越本店といった大型商業施設と地下道で行き来できるため、店舗数以上の集客が見込める。

イベントでの活用も想定した約1500平方メートルの大屋根付き緑の広場
イベントでの活用も想定した約1500平方メートルの大屋根付き緑の広場

トヨタ新会社、ボスコンが日本橋進出

 コレド室町テラスだけでなく、5~26階に広がるオフィスフロアのインパクトも大きい。

 三井不動産、三井不動産レジデンシャルの三井グループに加え、このビルには、トヨタ自動車が自動運転ソフトの開発に取り組むべく設立したトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)、世界3大戦略コンサルティングファームの一角を占めるボストン・コンサルティング・グループなどが入る。TRI-ADには、アイシン精機、デンソーも参画し、将来的には1000人規模の開発体制を構築する。渋谷や六本木に比するビジネス街として、日本橋の存在感が増す。

 6階には20年秋、世界50カ国4000人近くの会員を擁する東京・麻布台の「東京アメリカンクラブ」が、初のサテライトクラブとして「東京アメリカンクラブ日本橋(仮称)」をオープン。7階には、東京ミッドタウンクリニックなどを運営するミッドタウンクリニックが英語対応の外来診療、人間ドック、健康診断を備えたメディカルサービス施設を開業することが決まり、日本橋のグローバル化が一気に進む。

自由な働き方を実践する場に

 5~6階の共用スペースでは19年6月から、三井不動産がテナント企業向けに会員制サービスを展開。5階には、カフェ併設の無料ラウンジ「mot. Park & Cafe」と、社外向けの講演会やセミナーにも使える貸会議室「mot. Conference」を開設する。ラウンジには1948年に日本橋で創業した「ミカドコーヒー」の直営喫茶店が出店し、植栽の緑が映えるスカイテラスを併設。ちょっとした来客対応や集中して作業したいときに重宝する個室型スペース「mot. Personal」も設ける。

 6階にはフィットネススタジオ「mot. Fitness」と「mot. Member’s Lounge(仮称)」を設置する。仮眠を取ったり、シャワーやサウナでリフレッシュしたり、仕事の前後に運動したりと、自由な働き方を体現できる場所となる。

 「mot.」は、三井不動産のオフィス向けブランド。働き方改革が叫ばれる中、“もっと”こういうものがあったらいいな、“もっと”こうしたいという働く人々の思いに応えた施設として今後、同社が開発するビルに順次導入していく考えだ。再開発の進展とともに日本橋から全国へ、新しい働き方が広がる可能性もある。

5階にはカフェ併設のラウンジスペースやスカイテラスを設置する
5階にはカフェ併設のラウンジスペースやスカイテラスを設置する

周辺のビルにも電気と熱を供給

 エレベーターホールのセキュリティーゲートや、三井不動産が入居するフロアの入り口には、顔認証技術を導入。パナソニックと共同開発したシステムを採用し、カードの貸し借りによるなりすましや不正入場を防ぐ。建物内には、鹿島が開発した最新の制震オイルダンパー「HiDAX-R(ハイダックスレボリューション)」を採用した。地震そのもののエネルギーを蓄え、揺れを軽減させる画期的な製品で、震度7の大地震にも対応。震度4~5クラスの地震や超高層ビル特有の長い揺れには、特に高い効果を発揮するという。

 さらに日本初の取り組みとして、ビル内に加え、周辺のオフィスビルや商業施設にも、電気と熱を供給するエネルギープラントを設置。供給する延べ床面積は100万平方メートルにも及び、これにより、築90年を迎える重要文化財の三井本館など、多くの既存ビルがBCP(事業継続計画)対応ビルへと生まれ変わる。都心型スマートシティーのモデルケースにもなりそうだ。

電気と熱を生み出すコージェネレーションシステム
電気と熱を生み出すコージェネレーションシステム

東京駅、神田駅へと広がる日本橋

 日本橋室町三井タワー(コレド室町テラス)は、日本橋エリアの北端にあり、中央通り、江戸通りという2つの幹線道路が交差する角地に立つ。目と鼻の先には神田駅があり、少し足を延ばせば東京駅にもたどり着く。日本橋と東京、神田両駅をつなぐ結節点として、日本橋エリアを北へ西へと広げるランドマークになる。単なる商業施設、オフィスビルを超える存在になるのは、間違いない。

神田駅だけでなく、東京駅にも徒歩圏内のロケーションだ
神田駅だけでなく、東京駅にも徒歩圏内のロケーションだ

 コレド室町テラスの出店テナントは以下の通り。

2階

  • ▼誠品生活日本橋(ライフスタイル)【日本初】

1階
<中央通りゾーン>

  • ▼海木(お稲荷)【関東初・商業施設初】
  • ▼CLASSICS the Small Luxury(ハンカチ)
  • ▼土屋鞄製造所(鞄・革小物)
  • ▼日本百貨店 にほんばし總本店(和雑貨、和グローサリー)
  • ▼能作(ライフスタイルショップ)【新業態】
  • ▼85 [ハチゴウ] (発酵食物販)
  • ▼フェルム ラ・テール 美瑛(ベーカリー&パティスリーカフェ)【関東初】
  • ▼南阿蘇TEA HOUSE(ハーブティー)【関東初】

<江戸通りゾーン>

  • ▼(仮称)いい乃じ(和食)【商業施設初・新業態】
  • ▼東京焼肉 一頭や(焼き肉)【商業施設初】

<パサージュゾーン>

  • ▼あげづき(とんかつ)【商業施設初】
  • ▼ソバキチ(そば居酒屋)
  • ▼Tables steam hot pot(蒸し料理、薩摩串揚げ)【商業施設初・新業態】
  • ▼ににぎ(創作すし、米粉天ぷら)【商業施設初・新業態】
  • ▼(仮称)FOOD ARCHITECT LAB新業態(ビストロ)【商業施設初・新業態】
  • ▼やきとり お㐂樂(焼き鳥・親子丼)【商業施設初】

<広場ゾーン>

  • ▼Gino Sorbillo Artista Pizza Napoletana(ナポリピザ・イタリアン)【日本初】
  • ▼(仮称)ISHIYA NIHONBASHI(カフェ・スイーツ)【関東初】
  • ▼(仮称)AURORA Burger(グルメバーガー)
  • ▼CRAFTROCK BREWPUB & LIVE(ブリュワリーレストラン)【新業態】
  • ▼green bean to bar CHOCOLATE(チョコレート)

地下1階

  • ▼魚盛(海鮮居酒屋)【新業態】
  • ▼(仮称) Good Morning Bangkok(エスニック)【新業態】
  • ▼CRISP SALAD WORKS(カスタムサラダ専門店)
  • ▼真不同 飲茶倶楽部(中華バル)
  • ▼スターバックス コーヒー(スペシャルティコーヒーストア)
  • ▼大金星(大衆酒場)【商業施設初】
  • ▼鉄板焼・お好焼 maido OSAKAきっちん。(鉄板焼き、お好み焼き)【商業施設初】
  • ▼博多ニューコマツ(現代版博多屋台)【関東初・新業態】
  • ▼Hakone Bakery Dining & Bar(ベーカリー、レストランバー)【新業態】

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