アップルは「活字媒体の常識」をぶっ壊す?

 雑誌・新聞記事の定期購読「Apple News+(アップルニュースプラス)」についても、俯瞰(ふかん)的に見ればアップルが「5G時代」を勝ち抜くために用意した、コンテンツ系サービスの1つと考えられる。

 Apple Newsも15年のサービス開始後、米国を中心に雑誌の“月定額・読み放題”の、いわゆるサブスクリプションサービスとして成長してきた。今回、大手新聞社の記事購読を加えたほか、ユーザーインターフェースも改善した。月額料金は9.99ドル(約1100円)である。米国ではサービス名に「+」を付けて、リニューアルを強調した。またカナダでも、2つの公用語である英語とフランス語のサービスを始めた。19年内にはオーストラリアと英国に、サービス地域を広げる。日本への導入については、本稿執筆時点でまだ明らかになっていない。

Apple News+には、米国内で販売されている300以上の一般誌、カナダで販売されている30以上の一般誌のデジタルコンテンツが加わる
Apple News+には、米国内で販売されている300以上の一般誌、カナダで販売されている30以上の一般誌のデジタルコンテンツが加わる

 本件の発表会リポートでは、「Apple New+が日本を含む世界各地で成功するためにはコンテンツのローカライズを丁寧に進めていくことが大事」と書いた(「アップルが定額制サービスで攻勢 キャッシュレス決済でも新戦略」の記事参照)。しかし発表会から数日たった現在、このサービスに対する見方が少し変わりつつある。もしかするとアップルは、グーテンベルクが発明したと言われる活版印刷に端を発する「活字メディア」の常識を、エキサイティングな意味で“ぶっ壊そう”としているのではないだろうか。

 というのも、発表会のプレゼンテーションでチラ見せしていた「マガジンの表紙が動画で見せられる」という、モバイルアプリならではのギミックを上手に使いこなせば、出版元やクリエイターが新たな表現媒体を手に入れることもできるからだ。もちろん似たようなテキストや動画による、“メディアミックス”ができるプラットフォームは今までにもあったが、これからは5Gの高速・大容量といった通信インフラも一緒に使える。時代が移り変わろうとする今、アップルはApple News+というプラットフォームを足場にニュース・雑誌媒体の“突然変異”を起こすつもりなのかもしれない。

iPad ProやiPhone最新モデルの大画面を生かした、動画とテキストを交えたダイナミックな表現もApple News+の特徴
iPad ProやiPhone最新モデルの大画面を生かした、動画とテキストを交えたダイナミックな表現もApple News+の特徴

 そう考えるとApple News+のほうは、アップルがメディアやコンテンツクリエーターに対して“空っぽの入れ物”を渡すだけではなく、動画やAR(拡張現実)による表現が生かせる「コンテンツ製作のノウハウ」を、ある程度手取り足取りレクチャーする必要があるだろう。「開発キットをオープンに提供する」だけでなく、例えば現在Apple Storeで展開している「Today at Apple」のセミナーやレクチャーより本格的なプロ対象講座を開設して、資格認定やアイデアソンをアップルが主催しても面白そうだ。製作者のすそ野が広がり、人数が増えれば、メディア表現の変革は一気に加速するだろう。5G時代のコンテンツクリエーションを、アップルが音頭を取りながら仕掛ける時代が来るかもしれない。