ヤフーとインドのホテル運営会社OYO(オヨ)は合弁会社を設立し、不動産賃貸サービス「OYO LIFE(オヨ ライフ)」を開始した。このサービスでは物件探しから契約、支払いまでをスマートフォン1つで済ませられるという。ヤフーは今回の提携で、オフライン事業の拡大を図る考えだ。

引っ越しに伴う煩わしい手続きや高額な入居費用を排除し、「旅するように暮らす」ライフスタイルを提案する「OYO LIFE」
引っ越しに伴う煩わしい手続きや高額な入居費用を排除し、「旅するように暮らす」ライフスタイルを提案する「OYO LIFE」

24時間以内に入居可。スマホ1つで物件探しから決済まで

 ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーと世界7位の規模を誇るインドのホテル運営会社OYOが合弁で設立した新会社、OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN(オヨ テクノロジー アンド ホスピタリティ ジャパン、東京・千代田)は2019年3月28日、住宅シェアリングサービス「OYO LIFE」を開始した。同サービスが提供するすべての部屋は、家具・家電付きでWi-Fiも完備。スマートフォンアプリで「OYO LIFE」が提供する物件を探して予約すれば、24時間以内に入居できる。

 「OYO LIFE」が提供する物件の場合、敷金・礼金・仲介手数料も、電気や水道といった公共料金の手続きも必要ない。書面のやりとりが一切無い上、家賃などの支払いもスマートフォン上でクレジットカード決済する仕組みなので、まさに“スマホ1つ”で入居から退去までが完結する。

「OYO LIFE」を利用すれば、部屋探しから入居までにかかる時間と費用を大幅に削減できる
「OYO LIFE」を利用すれば、部屋探しから入居までにかかる時間と費用を大幅に削減できる

 同じソフトバンクグループの投資ファンド、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)との連携による「新たな事業の創造」を掲げているヤフーにとって、SVFが投資しているホテルベンチャーOYOとの協業は、18年10月にサービス提供を開始したスマホ決済サービス「PayPay」に続く第2弾となる。ヤフーは「Yahoo!不動産」をはじめとする関連サービスを活用し、OYOの日本市場進出を支援することでオフラインの事業を拡大したい考えだ。

「Yahoo!検索」「Yahoo!不動産」「Yahoo!トラベル」など、「OYO LIFE」の支援に役立ちそうなサービスは多い。将来的には「PayPay」による決済も可能になるという
「Yahoo!検索」「Yahoo!不動産」「Yahoo!トラベル」など、「OYO LIFE」の支援に役立ちそうなサービスは多い。将来的には「PayPay」による決済も可能になるという

主な家電は完備、ホテル住まい感覚

 「旅するように暮らす」をうたい文句としているだけあって、「OYO LIFE」が提供するサービスは、感覚的にはホテル住まいに近い。ホテル利用と大きく異なる点は2つ。31日以上の居住を条件にしている点と、91日以上の長期滞在の場合に定期建物賃貸借契約書による契約が必要になる点だ。

 このサービスについてOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPANの勝瀬博則CEO(最高経営責任者)は、「敷金・礼金・仲介手数料などを入居時に支払う従来のシステムでは、長く住まないと実質的な家賃が高くついてしまう。『OYO LIFE』の場合、そうした初期費用が月々の家賃に分散されるため、短期で転居する場合でもロスがない」と、そのメリットを説明する。

「OYO LIFE」のメリットについて語る勝瀬CEO
「OYO LIFE」のメリットについて語る勝瀬CEO

 各部屋にはテレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、掃除機など、生活に必要な物が一通り備わっている。新生活を始める際、「家具や家電を買いそろえる費用も抑えられる」と勝瀬CEO。

 家賃はマンションタイプが月額10万~100万円、一軒家タイプが月額30万~100万円、シェアハウスタイプが月額5万~8万円となっており、共益費や清掃費が別途かかる。また退去時には清掃費が発生する。

2019年3月28日段階での「OYO LIFE」の事前登録者数は1万3205人。契約室数は1008室、稼働室数は470室で、稼働率は114%。稼働率が100%を超えているのは、まだ稼働していない部屋への予約も含むため
2019年3月28日段階での「OYO LIFE」の事前登録者数は1万3205人。契約室数は1008室、稼働室数は470室で、稼働率は114%。稼働率が100%を超えているのは、まだ稼働していない部屋への予約も含むため
入居費用などがかからない分、家賃は相場より少し高く設定されている(「OYO LIFE」のウェブサイトより)
入居費用などがかからない分、家賃は相場より少し高く設定されている(「OYO LIFE」のウェブサイトより)

参画企業を巻き込んだ事業展開に注目

 「OYO LIFE」のサービスで特徴的なのが、不動産業界を越えた他業界・他業種との協業だ。入居者に提供するサービス「OYO PASSPORT」は、家事代行サービスやカーシェアリングサービスなどが1カ月間無料で利用できるというもの(利用可能回数は各企業の規定による)。それらのサービスを提供するパートナー企業にとっても、自社のサービスを実体験してもらえるというメリットがある。

入居から1カ月間は各種サービスが無料。「OYO LIFE」を利用して引っ越した場合は、新たに1カ月間の無料利用が可能になる
入居から1カ月間は各種サービスが無料。「OYO LIFE」を利用して引っ越した場合は、新たに1カ月間の無料利用が可能になる

 家事代行サービスのベアーズ(東京・中央)、個人間カーシェアリングサービス「Anyca」を提供しているDeNAなど、既に複数の企業が協業を表明しており、「今後も参画企業を増やすことでサービスを充実させていきたい」と勝瀬CEOは話す。

 「不動産業界に現れた“黒船”のように思われるかもしれないが、そんなことはない。今、不動産業界に必要なのは流動性を高めること。(OYO LIFEは)そのソリューションを提供する」(勝瀬CEO)

 物件に関しても「仲介業者を介して仕入れている」(勝瀬CEO)とのこと。物件のオーナーや不動産会社にとって、物件を長期で借り上げてくれる「OYO LIFE」は、空室リスクを減らし、安定的な家賃収入を保証し、定期的に保全もしてくれる存在というわけだ。OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPANでは「OYO LIFE」の物件を取り扱う不動産会社との連携も進めており、提携を希望する不動産会社を募集している。

 スーツケースに着替えなどを詰め込むだけで、生活拠点を簡単に変えられるのは、いかにもシェアリングエコノミー時代らしいサービスといえる。こうしたサービスが定着していくと、日本の賃貸住宅事情が大きく変わる可能性もある。

OYOのパートナーとなる不動産会社にもさまざまな特典が付与される
OYOのパートナーとなる不動産会社にもさまざまな特典が付与される
左からヤフー代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏、OYO CEOのリテシュ・アガルワル氏、勝瀬博則氏
左からヤフー代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏、OYO CEOのリテシュ・アガルワル氏、勝瀬博則氏