ぜいたくな仕様で「新幹線のファーストクラス」とも呼ばれる、JR東日本・北海道の特別車両「グランクラス」がリニューアルを実施。1車両わずか18席のゆとりと、アメニティー配布や軽食や飲料のサービスが売りだが、今回洋軽食を廃止し、和軽食一本に絞った。サービス低下のリスクはないのか。

 今回、グランクラスが実施した主な変更点は軽食。これまではサンドイッチなどの洋軽食と和軽食の2種類から選べたが、2019年4月1日から洋軽食を廃止。和軽食のみに絞った。だが「ファーストクラス」のサービスであるなら、選択肢があったほうが乗客に喜ばれるのではないだろうか。

北陸新幹線(上り)で提供される和軽食。沿線で取れる素材を使い、3カ月ごとに内容を変更する
北陸新幹線(上り)で提供される和軽食。沿線で取れる素材を使い、3カ月ごとに内容を変更する
東北・北海道新幹線(下り)で提供される和軽食
東北・北海道新幹線(下り)で提供される和軽食

余った軽食を全て廃棄していた

 リニューアルの背景には、余った軽食の「廃棄ロス」問題があった。「乗客が和と洋のどちらの軽食を選ぶのか事前に把握できないため、乗客1人に対して2個の軽食を用意する必要があった。余った軽食は廃棄しなければならず、廃棄ロスの問題を抱えていた」(東日本旅客鉄道営業部宣伝グループの深見真悟課長)。予備として乗客数プラスアルファで用意していた軽食を含めると、廃棄率は50%を超えていただろう。和軽食に絞れば、廃棄率はぐっと低くなる。もともと洋軽食より和軽食を選ぶ人が多かった、ということも実施を後押しした。

 しかし廃棄ロスの問題だけで軽食の選択制を廃止すれば、サービス低下と受け取られかねない。そこで料理の監修を有名日本料理店「一凜」の橋本幹造氏に依頼し、質の向上を図った。さらに献立の紙に印刷した二次元コードをスマートフォンで読み取ると、橋本氏による詳しい料理の解説動画が見られる仕掛けをほどこした。

軽食に付いている「お献立」の二次元コード。スマートフォンで読み取ると橋本氏による料理の解説動画が見られる
軽食に付いている「お献立」の二次元コード。スマートフォンで読み取ると橋本氏による料理の解説動画が見られる

 旅の目的は食という人も多い。到着後すぐに食事を楽しめるよう、従来よりもボリュームを控えめにした。往復乗車する人が飽きないように、上りと下りで軽食の内容も変えている。新幹線の利用者には訪日客も多いが、「日本に来る外国人は箸の使い方に慣れており、和食を食べたいという人も多い」(深見課長)。箸が苦手な人のために、フォークも用意している。

リニューアルで認知度の向上に期待

 グランクラスが初めて導入されたのは、11年3月5日。しかし「直後に発生した東日本大震災の影響もあり、大々的なPRができなかった」と深見課長。その後、15年3月に開業した北陸新幹線にも導入され、19年3月16日のダイヤ改正によって上越新幹線にも導入された。導入路線が広がっている今だからこそ、新たな軽食の話題でグランクラスを盛り上げたいという思いがある。

グランクラスの車内。日本酒やビールなどのアルコールやソフトドリンク、茶菓子の提供やブランケットや靴べら、アイマスクなどの貸し出しを行う。アテンダントサービスがない路線もある
グランクラスの車内。日本酒やビールなどのアルコールやソフトドリンク、茶菓子の提供やブランケットや靴べら、アイマスクなどの貸し出しを行う。アテンダントサービスがない路線もある

 ここ数年、JR各社で食のサービスを売りにした列車が次々と登場している。JR東日本が手掛ける観光列車「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」も、車窓を眺めながら本格的なコース料理が食べられるというのが人気を集めている。グランクラスが「食へのこだわり」を打ち出すのにはいいタイミングだ。

 2時間程度の乗車なら軽食はいらないという人や、弁当を持ち込めば十分と考える人もいるだろう。だが「一流料理人の監修した和食」であれば、ビジネスや帰省の移動時に、追加料金を払ってでも食べてみたいと考える人が増えるかもしれない。

(写真/樋口可奈子、写真提供/JR東日本)