「カンロ飴(あめ)」でおなじみのカンロと、独自素材「プラズマ乳酸菌」事業を展開するキリンが手を組んだ。新発売の乳酸菌入りグミで、カンロは健康志向の高い30代以上の女性を狙う。独自素材の使用領域を広げたいキリンと、成長を続けるグミ市場の勢いに乗りたいカンロの思惑が一致した。
グミと乳酸菌の市場が拡大している
2019年4月2日、カンロとキリンは共同開発の「ピュレサプリグミ iMUSEプラズマ乳酸菌」を発売した。「ピュレグミ」は果実食感のオシャレなグミとして02年にカンロが開発。20~30代前半の女性をターゲットにした人気の商品だ。そこにキリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」を使用した「iMUSE(イミューズ)」を配合することで、ターゲットを拡大。既存商品より上の世代、情報や流行に敏感で健康や美容意識の高い30代以上の女性を狙う。
このグミはプラズマ乳酸菌を1000億個配合。味はヨーグルトと相性のいいアロエヨーグルト、ブルーベリーヨーグルト、ピーチヨーグルトの3種類。かばんに入れて持ち歩き、いつでもどこでも手軽にプラズマ乳酸菌を取れるという点をアピールする。他にもオフィスで小腹がすいたときや、毎日の健康習慣として親が子供に与える、といった需要も想定している。
今回、グミで商品化したのには理由がある。カンロマーケティング本部第1ブランド室長の木本康之氏は「あめやその他のキャンディーが減少していく中、グミ市場は10年近く成長を続けており、商品も定着した。16年ごろからは他社製品も増え、市場が飛躍的に拡大している」と話す。グミの市場規模は09年の289億円から18年には453億円に拡大し、21年には約550億円に膨らむとの予想もある。3年で約100億円の拡大とは、強気すぎないだろうか。
「グミは1980年代に登場した菓子。あめなどと比べて歴史が浅く、まだ食べたことがない人が多い。製法が自由で食感や味のアレンジが多様な点も、市場が伸びている理由の1つ。今後はグミを会社の成長エンジンにしたい」(木本室長)
一方、乳酸菌飲料の市場も拡大している。09年に約2500億円だった乳酸菌含有飲料市場の販売額は、18年(見込み)には約4000億円にまで成長。キリンは17年秋に乳酸菌事業に本格参入し、「iMUSE」ブランドで乳酸菌飲料やヨーグルト、サプリメントといった商品を展開中。カンロとのコラボは事業拡大の一環だ。キリン事業創造部部長の佐野環氏は、「市場参入初年度となる18年の売上額は55億円で、目標の1.5倍を達成した。これを21年には2.7倍の150億円、27年には230億円に拡大したい」と語る。
さまざまな商品に展開可能
一口に乳酸菌といっても多くの種類がある。キリンのプラズマ乳酸菌は、他の乳酸菌と何が違うのか。
プラズマ乳酸菌は、キリン・小岩井乳業・協和発酵バイオが共同で研究を進めてきた素材。佐野氏によると「『プラズマサイトイド樹状細胞』といって、免疫系に指令を与える上位の細胞の働きを活性化する働きがある、唯一の乳酸菌」とのこと。そのプラズマ乳酸菌を利用した商品ブランドがiMUSEだ。
iMUSE製品はピュレグミの他、キリン「iMUSE レモンと乳酸菌」、小岩井乳業「iMUSEヨーグルト・ドリンクヨーグルト」、協和発酵バイオから通販限定のサプリなどが販売されている。「乳酸菌は乳製品から摂取する場合がほとんど。iMUSEはさまざまな商品に展開できる無味無臭の粉末なので、乳アレルギーで乳製品を摂取できない人でも取れる商品としてお客様に喜ばれている」(佐野氏)。キリンは、医療機関流通商品として調剤薬局などで購入できる、タブレットや顆粒(かりゅう)タイプの「iMUSE professional」も販売している。
グミを使ったパーティー「グミパ」も流行しているそうで、今回クラッカーやヨーグルト、サイダーなどグミを使ったアレンジレシピも提案。色や形が豊富なグミだけに、工夫次第でSNS映えするだろう。仕事の合間などに何かつまむなら、体に良いものを選びたいと考える人も増えているため、女性を中心に人気が高まりそうだ。
(写真/酒井康治)