世界中にMaaSブームを巻き起こしているフィンランド発のMaaSアプリ「Whim(ウィム)」。2017年11月の本格展開開始から1年半近くが経とうとしているWhimは、ヘルシンキの人々の行動や交通体系にどのようなインパクトをもたらしたのか。これまで漠然と語られてきたMaaS導入効果を初めて詳細に分析した最新レポート「WHIMPACT」を、日本総合研究所創発戦略センターの井上岳一シニアマネジャーがいち早く解説する。
MaaSグローバルが展開するWhimは、世界中でこれだけ注目されているMaaSアプリであるにもかかわらず、その導入効果についてはあまり多くを語られてこなかった。しかし、このほどWhimのインパクトを評価した報告書「WHIMPACT」が、19年3月28日に公表された。MaaSグローバルがWhim本格展開後のデータセットをデンマークのコンサルタント会社Rambolに提供し、同社が分析したものだ。筆者が確認したところ、意外な事実がいくつか明らかになっている。日本でもMaaSの導入機運が高まる中、その“内実”に興味のある読者も多いと思うので、早速共有したい。
報告書は、18年1~12月の1年間のデータに基づくものだ。17年11月の本格スタート当初の混乱を除いた丸々1年間のデータを選んだと説明されている。この事実から改めて痛感するのが、これだけ世界で騒がれているWhimは、データ分析に足る本格的な運用が始まってから、まだたった1年しかたっていないということだ。極めて黎明期にあるサービスだけに、この期間に見られた現象が普遍的なものとも限らないことは留意しておきたい。
しかし、だ。今回の報告書を読み解くと、MaaSグローバルがWhimのテスト段階での利用データを基に発表してきた「マイカーから公共交通へのシフト」「マイカー利用半減」という、衝撃的な行動変容とは別の姿が浮かび上がってきた。
Whimユーザーは高齢者が約1割に
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