航空会社のスターフライヤーが、男性ファッションブランド「junhashimoto」とコラボレーションしたスーツ「+FLOW」を発表した。着るだけで“出張バテ”を軽減するとうたう100着限定のこのスーツ、発売の狙いは企業認知度の向上だ。
有名デザイナーとのコラボで認知度向上を狙う
北九州に拠点を置く航空会社スターフライヤーは2019年3月25日、大人の男のファッションブランドとして人気の高い「junhashimoto」とコラボレーションしたビジネススーツ「+FLOW(プラスフロー)」を発表した。このスーツは遠赤外線効果のある特殊な素材を採用し、血行を促すことで“出張バテ”を軽減するという。「+FLOW」を「junhashimoto」ブランドとして訴求することで、スターフライヤーの社名をファッションに関心の高い層にも広めていく考えだ。
「junhashimoto」は、ロックバンド「Mr.Children」のボーカリストである桜井和寿やサッカーの香川真司選手など、著名人のファンも多い人気ブランド。チーフデザイナーである橋本淳氏は、世界的なシガーブランド「ダビドフ」やヒルトングループのホテル「コンラッド東京」と協業するなど、ファッションの枠に収まらない活動を展開している。認知度向上で客層の拡大を目指すスターフライヤーにとって、最適な存在といえる。
「+FLOW」はスターフライヤーが提唱するコンセプト「スマート ラグジュアリーの1つの形」と説明するのは、同社営業本部マーケティング部の遠藤岳春氏。「スマート ラグジュアリー」とは、スターフライヤーが提供する商品やサービスを想起させるためのキーワードで、「知的で洗練された贅沢(ぜいたく)感」を表しているという。
「航空会社があまり関わりを持てない人たちにもスターフライヤーを知ってもらうために、福岡市美術館のゴジラ展とタイアップしたり、EXILEの『High&LOW』という映画を機内エンターテインメントプログラムに採用したりした。今回のスーツもその延長」(遠藤氏)
遠藤氏によれば、『High&LOW』の特設サイトを作ったところ、アクセス数が急増し、それはスターフライヤーを初めて利用する客の数にも反映されたとのこと。今回の「+FLOW」でも「認知度の向上につなげたい」と遠藤氏は意気込む。
出張時に感じる疲れを血行促進で軽減
「+FLOW」の最大のセールスポイントは、着るだけで“出張バテ”が軽減できるというもの。頻繁に飛行機で出張するビジネスパーソンにとっては、気になるスーツだろう。“飛行機の外”のマーケティング施策として、スターフライヤーが目を付けたのもうなずける。
同社の福岡線、北九州線の乗客は30~40代の男性が約6割で、その多くが出張利用。「+FLOW」はそのメインの客層に対し、「航空会社としてできることはないかと」(遠藤氏)との発想から開発された。
「最初は機内ブランケットを考えていたが、機内ブランケットの場合は『燃えない素材を使う』など制限が多い。議論を重ねていく中でビジネススーツという案が出た」(遠藤氏)
デジタルマーケティング事業を展開するタイムカレントの調査によると、約93.3%のビジネスパーソンが出張の際に普段とは違う疲れを感じているとのこと。また、その原因として約79.3%が「長距離移動」を挙げ、約70%がスーツでの移動を負担に感じていることが分かった。
「+FLOW」の開発を監修した医学博士の白濱龍太郎氏は、「“出張バテ”の原因は長距離移動というより長時間、同じ姿勢でいること」だと語る。「体を動かさないせいで血行が悪くなり、見えない疲れがたまっていく」(白濱氏)。それを受け、デザイナーの橋本氏も「長距離の移動中も快適に過ごせるスーツに仕上げた」と話す。
「+FLOW」の特徴は2つの素材にある。1つは伸縮性が高く、しわになりにくいjunhashimotoオリジナル素材「ソフトマテック」。こちらは表地と裏地に使われている。もう1つは中材に使われている植物性炭素繊維「メディカーボン」で、素材から自然発生する遠赤外線の効果で血行を促すという。
「『+FLOW』はマーケティング商品。限定の100着も売れれば(プロモーション効果としては)十分と遠藤氏は語る。企業PRやブランディングの一環だけに、「スーツで稼ぐ」ことが目的ではないが、“出張バテ”を軽減する効果がビジネスパーソンに認知されれば、人気に火が付く可能性もあるだろう。
(写真/酒井康治)