アパレル大手のワールドがAI(人工知能)で測定したデータを基にした、パーソナライズアパレルに参入する。同社は2019年3月25日、2枚の写真からAIが身体測定する「Bodygram」を開発した米オリジナルの子会社化を発表。同社のもつ基盤と技術を使う。さらに、システムの外販で新たな収益にもつなげたい考えだ。

ワールドの上山健二社長(左)と、米オリジナルCEO(最高経営責任者)のジン・コー氏(右)
ワールドの上山健二社長(左)と、米オリジナルCEO(最高経営責任者)のジン・コー氏(右)

 ワールドが子会社化するオリジナルは、カスタムシャツブランド「Original Stitch」を展開する。シャツの製造を日本国内の工場で行い、日米約70万人の会員向けに通販を行っている。現時点では、Original Stitchはシャツだけの展開にとどまっているが、ワールドの傘下に入ることで、工場や店舗網といったリソースを使い、商品の幅を拡充する。子会社化が完了する4月以降は、ジャケットやスーツといったビジネス服にも商品の幅を広げる予定。さらに普段着や靴の販売へと拡大していく考えだ。

 また、オリジナルはスマートフォンで身長・体重などの情報を入力して、正面と真横の2枚の写真を撮影すると約30秒で精度の高い身体採寸ができる技術Bodygramを開発し、18年11月より企業向けに提供を開始している。

 アパレルのECサイトでは、ユーザーが自分のサイズを把握していないことによる購入意欲の減退や、購入後の返品率の高さが問題になっている。また、身体採寸をできるサービスは他にもあるが、専用スーツを着たり、背景を考慮するなどの手間がかかったり、精度が悪いことなどから、ユーザーが不満を抱えていることが多い。オリジナル社の技術はこうした問題の解決に役立つという。

 今後はワールドの販売網を活用することでBodygramで取得するデータを増やして精度をさらに高め、顧客の体形に合った商品を提案する、サイジング・プラットフォームへ発展させていく。洋服だけにとどまらず、例えば、個人の体格に合った寝具なども作れるようになるという。なお、Bodygramはオリジナルが新たに設立した米ボディグラムが中心となって展開する。ワールドはボディグラムにも少額出資をしているが子会社化する予定はないとしており、Bodygramのライセンスを受ける形で展開する。

 ワールドの上山健二社長は「ワールドが持つ基盤とオリジナル社の技術を組み合わせることで、物作りとユーザーをつなげるサプライチェーンを拡充させていく。また、ファッションにとどまらない企業サービスを拡大できる。オリジナル社は米国の重要拠点と位置付けており、将来的な米国マーケットへの参入にも繋げたい」と期待を語った。

 ワールドは2018年9月、13年ぶりの再上場を果たした。上場によって得た資金を合併・買収などの投資事業や、ワールドが展開する多業態・多ブランドを支える生産や物流の基盤をサービス化して、他社に提供するプラットフォーム事業などの成長分野への投資にあてる戦略を打ち出している。収益の多角化によって、アパレル一本やりからの脱却を図る。現在はアパレル事業がコア利益の多くを占めているが、3~5年の間に非アパレル事業の収益を5割まで高め、アパレル事業と並ぶ柱としたい考え。オリジナル社の子会社化もその動きの1つという位置づけだ。

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