2018年まで10年連続で成長し、売り上げが約2倍に拡大するなど好調なRTD(ready to drink)市場で、アサヒビールが巻き返しを図る。特に人気のアルコール度数の高い“ストロングチューハイ”の主力商品を刷新し、存在感をアピールする。

2019年4月にリニューアルする「アサヒもぎたて」。350ミリリットル缶(税別141円)と500ミリリットル缶(税別191円)で発売
2019年4月にリニューアルする「アサヒもぎたて」。350ミリリットル缶(税別141円)と500ミリリットル缶(税別191円)で発売

 きめ細かなニーズへの対応とコミュニケーションで遅れを取り戻す――。成長の勢いが止まらないRTD市場に対し、アサヒビールが掲げる攻めの方針だ。同社RTDの製造能力を拡大するため、14億円を投資して福島に工場を新設。特に2016年の発売以来、伸び悩んでいた主力の缶チューハイ「アサヒもぎたて」シリーズをテコ入れし、19年4月2日に味とパッケージを刷新する。メインターゲットは「ストロングチューハイ好きの30~40代」だ。

 アサヒもぎたては、収穫24時間以内の果実の搾汁を使用した“鮮度”が売り。今回のリニューアルでは、製造時間短縮、抗酸化効果の強化に加え、容器形状を見直して酸素量を削減するなどの、“鮮度マネジメント”を取り入れたという。これによって果実の味わいを強め、飲んだ後の甘さや苦味を軽減して飲みやすさを高めた。

 「RTDに対するニーズは細分化している。(RTDでは)後発なので、きめ細かくニーズに合わせていかなければいけない。アサヒもぎたては9%という高いアルコール度数で人気だが、人工的なアルコール味が気になるという不満の声があった。そこで『鮮度マネジメント』をさらに徹底した」とアサヒビールマーケティング本部長の松山一雄氏は話す。

アサヒビールマーケティング本部長の松山一雄氏
アサヒビールマーケティング本部長の松山一雄氏

し烈なRTD市場で存在感をアップ

 アサヒビールによると、RTD市場の18年の売り上げは2億595万箱(ハイボール類は含まず)で前年比12~13%増、08年に比べて193%成長の見込みだという。特に“1本でも酔える”コストパフォーマンスに優れた高アルコール度数帯(高アル)は、直近10年間で約5倍も伸びている。

 高アルRTDで人気をリードするのは、「キリン 氷結」を発売したキリンと、「-196℃ ストロングゼロ」を発売したサントリーだ。キリンはRTD全体での販売数量は5990万箱で売り上げが前年比13.2%増となり、市場全体の伸びを上回った。サントリーも7922万箱(前年比11%増)で、14年連続で売り上げを伸ばしている。

 一方、アサヒビールはRTDでのスタートが2社に遅れたものの、アサヒもぎたてシリーズを発売した16年に、前年283億円だった売り上げを89億円増の372億円に伸ばし、18年には444億円に達した。勢いに乗って、19年は前年比13%増の500億円を目指すという。

 ただ新商品が次々発売される市場だけに、「存在感が薄れつつある」(松山氏)という問題に直面していた。さらに果汁を使っているため、「甘みがある」と誤解されがちだったという。その結果、「メインターゲットであるストロングチューハイが好きな層から敬遠されていた」と松山氏。

 そこで飲みやすさの向上とコミュニケーション戦略の見直しで、アサヒもぎたてシリーズの認知度アップとターゲット層への訴求を図ることにした。

 これまで大泉洋と蒼井優が務めていたCMキャラクターには、新しく山口智子を起用し、「ストロングチューハイ好き」へのメッセージをストレートに伝える。「男女ともに人気のある姉御肌の山口さんにストレートに言ってもらうことで、“信じられる”と思ってもらえる」と松山氏は起用の理由を話す。

 「競合他社と同じアプローチを取ってはだめ。一度飲んでもらえれば、いい商品だと分かってもらえる。一貫性のあるメッセージで伝えていく」(松山氏)

新CMキャラクターに起用された山口智子
新CMキャラクターに起用された山口智子

 デジタルでもCMを展開するという。「店頭でもCMを流すことで、ポイントオブセールスで思い出してもらえるようにしたい」(松山氏)。LINEで応募できるキャンペーンなど、SNSを使った販促活動も行う。

 こうした積極的な販促活動で、年間850万箱の販売を目指す。

2019年3月20~24日、六本木ヒルズの大屋根プラザにオープンした「もぎたて鮮度実感BAR」
2019年3月20~24日、六本木ヒルズの大屋根プラザにオープンした「もぎたて鮮度実感BAR」

その他のRTD商品も強化

 アサヒもぎたてシリーズ以外のRTD商品にも注力する。高アルコール度数帯では、アルコール度数9%の無糖RTD「ウィルキンソン・ハード」シリーズを「ウィルキンソン・ハードナイン」として、19年3月5日にリニューアル発売した。「ウィルキンソン タンサン」を使用した、炭酸が強めで甘くない味わいをアピールする。

 また18年に発売した果実1/2個分以上の果汁を使用した「贅沢搾り」は、アルコール度数が4%と低めで甘みもある。CMキャラクターは相葉雅紀と本田翼で、比較的若い層をターゲットにしている。

 これら“RTD主要3ブランド”で追撃態勢を整えたアサヒビール。新キャラクター効果の後押しも受けながら、激烈な市場競争に打ち勝てるかどうか注目したい。

(写真/中村 宏)