国内最大規模の会員数を誇る楽天とスポーツ用品店最大手のアルペンが、共通ポイントカードやクレジットカードで連携を強化する。オンラインとオフライン(O2O=Online to Offline)のそれぞれで強みを持つ両社は、提携によってネットとリアルを行き来する顧客の購買行動の緻密な分析を目指す。

2019年3月18日の「楽天とアルペン、共同記者説明会」の壇上で、「楽天ポイントカード」の拡大パネルを抱える楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏と(写真右)と、「アルペングループ 楽天カード」の拡大パネルを掲げるアルペン代表取締役社長の水野敦之氏
2019年3月18日の「楽天とアルペン、共同記者説明会」の壇上で、「楽天ポイントカード」の拡大パネルを抱える楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏と(写真右)と、「アルペングループ 楽天カード」の拡大パネルを掲げるアルペン代表取締役社長の水野敦之氏

オンラインとオフラインの最強タッグが実現

 1億人以上の会員数を誇る楽天と全国に401店舗を展開するアルペンが、2019年3月18日、ポイントサービスや提携カードでの連携強化を発表した。

 同年4月1日から、アルペングループが運営するすべてのスポーツ用品店で、楽天の共通ポイントサービス「楽天スーパーポイント」のポイントの獲得やポイントでの支払いができる。また、同日から申込受付・発行を始める提携クレジットカード「アルペングループ 楽天カード」では、楽天スーパーポイントだけでなくアルペングループ独自のポイントも付与される。ちなみに楽天カードが小売業界と提携するのはアルペンが初となる。

スポーツ用品店最大手のアルペングループは、全国に401店舗(2019年3月18日現在)を展開
スポーツ用品店最大手のアルペングループは、全国に401店舗(2019年3月18日現在)を展開
楽天ポイントカードは、店舗での買い物200円につき1ポイント(1円分)還元。アルペングループ楽天カードでは、楽天カードとして100円で1ポイント、楽天ポイントカードとして200円で1ポイントが還元され、さらにアルペンポイントとして購入金額に応じた1~5%が付与されることで、最大6.5%のポイント還元率となる
楽天ポイントカードは、店舗での買い物200円につき1ポイント(1円分)還元。アルペングループ楽天カードでは、楽天カードとして100円で1ポイント、楽天ポイントカードとして200円で1ポイントが還元され、さらにアルペンポイントとして購入金額に応じた1~5%が付与されることで、最大6.5%のポイント還元率となる

 「これからはリアルとオンラインショッピングやマーケティングが密接に結び付く時代に突入していく」と楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は言う。「スポーツショップの最大手であり、さまざまな取り組みをするアルペンと組むことで、さらに新しい展開が生まれる」(三木谷氏)。

楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏
楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

 アルペン代表取締役社長の水野敦之氏は「リアルとデジタルをシームレスに連携させていくことは極めて重要。そこで、デジタルに知見と経験を持つ楽天との協業は欠かせない」と強調する。

 両社はこれまでもアルペンの楽天市場への出店や、楽天が提供するゴルフ予約・検索サイト「楽天GORA」などで連携してきた。今回の共同施策で、楽天は「楽天スーパーポイント」および「楽天カード」の新規利用者の獲得を目指す。一方、アルペンは同社が持つリアル店舗での知見に楽天が持つデジタルの知見と経験を掛け合わせることで、多様化する消費者の購買行動の詳細な分析に取り組める。

アルペン 代表取締役社長の水野敦之氏
アルペン 代表取締役社長の水野敦之氏

アルペンがTポイントから楽天ポイントに変えたワケ

 アルペンはこれまでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下の「Tポイント」や「JACCSカード」のジャックスと提携するほか、自社でもポイントプログラムを展開してきた。しかし19年3月31日をもって、Tポイントサービス、およびJACCSカードと自社ポイントプログラムの新規募集を終了する。なぜアルペンはTポイントまでも切り捨て、楽天ポイント一本に方向転換したのか。

 この点について、楽天執行役員ポイントパートナー事業部ジェネラルマネージャーの笠原和彦氏は「『Tポイントと楽天ポイントを併用したい』とアルペンは言っていたが、先方はそれは受け入れられないと。今回の判断については、アルペン側もすごく考えられたと思う」と明かす。

 アルペンは提携クレジットカードとポイントカードも楽天との協業に切り替えて、ポイントプログラムの刷新に踏み切った。この思い切った決断について、アルペン常務執行役員戦略企画本部⻑兼マーケティング本部⻑兼店舗開発本部⻑の二十軒翔氏は「今回の新ポイントプログラムはリニューアルに近い」と言い切る。

アルペン常務執行役員戦略企画本部長兼マーケティング本部長兼店舗開発本部長の二十軒翔氏
アルペン常務執行役員戦略企画本部長兼マーケティング本部長兼店舗開発本部長の二十軒翔氏

 Tポイントから楽天ポイントへの全面切り替えの1つには、アルペンのマーケティングの変容という側面もある。

 「今まではマスマーケティング中心だったが、顧客データの獲得や蓄積、活用といった点で課題があった」(二十軒氏)

 消費者の購買行動も大きく変わりつつある。顧客にとって、これまで商品に関する情報収集の起点はリアル店舗だった。顧客は店に来て、実際に商品を試しながら何を買うか決めていた。

 しかし二十軒氏は、「ここ2年くらいで顧客の購買行動が変わってきたので、マーケティングの方法も変える必要があった。顧客の情報収集が、店舗に来るもっと前から始まっているからだ」と話す。今や顧客は楽天市場はじめ、ネット上のさまざまなサイトやSNSなどでリサーチし、欲しい商品をある程度決めてから店舗に来るという。

 「この変化は相当大きい。それも一部の若者だけでなく、50~60代の人も(情報収集や購買のスタイルが)そのように変わってきている」(二十軒氏)

 こうした購買行動の変化に対応するため、アルペンはリアルとデジタルの知見が豊富な楽天との連携強化に舵(かじ)を切ったといえる。

 「そういう意味では、デジタルでもリアルでもたくさん使える楽天スーパーポイントはすごく使い勝手がいい。そこが一番の決め手。楽天とはポイントプログラムの話だけで終わるのではなく、クレジットカードの話やO2O施策、楽天GORAなども含めていろんな話ができる点が大きい」(二十軒氏)

ネット・リアル双方の店舗データでマーケティング強化

 今回の提携により、アルペンは楽天市場のオンライン店舗に加え、リアル店舗での顧客の行動データの収集が可能となる。また、アルペン全店で「楽天ポイントカード」が利用できることで、オンライン店舗からリアル店舗への送客も狙える。

 それでは楽天にとって、今回の提携にはどんなメリットがあるのか。笠原氏は「お客さまのメリットが、われわれのメリットになる」と説明する。

楽天執行役員ポイントパートナー事業部ジェネラルマネージャーの笠原和彦氏
楽天執行役員ポイントパートナー事業部ジェネラルマネージャーの笠原和彦氏

 「楽天市場で買っていただているお客さまを、(リアルな)お店に送るのは利益相反になるという話もある。しかしいろんなところでテストしたら、そういう形でやることによって、他業界では楽天市場の売り上げも増えたケースがあった」(笠原氏)

 さらに楽天のポイントをリアル店舗で使ってもらうことで、オフラインの顧客の購買行動に関するマーケティング情報も収集できる。

 オンラインショッピングを武器とする楽天と、全国にリアル店舗を展開するアルペンの協業。ネットとリアルを行き来する顧客の行動分析の先に何が見えてくるのか、注目したい。

アルペン楽天市場店で情報収集した後、やはり実物を見て買いたいという顧客も存在する。アルペンは楽天との提携で、ネットとリアルをつなぐO2Oマーケティングの強化を図る
アルペン楽天市場店で情報収集した後、やはり実物を見て買いたいという顧客も存在する。アルペンは楽天との提携で、ネットとリアルをつなぐO2Oマーケティングの強化を図る

(写真/酒井康治)

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