“美少年と野獣”だから期待できるプロモーション効果

 2019年2月、「私立スコーン学園」が開校した。これはプロモーション展開に伴い、Web上に開設された架空の学園。通称・スコ学が設立された背景は何か。

 「スコーンは『青春のパワースナック』を目指している。学生生活のド真ん中にスコーンを置いてもらいたいので、CMの設定を学園にした。ならば学園が必要だということになり、Web上に私立スコーン学園を作った。(小池孝)会長や(佐藤章)社長も協力している、全社的な取り組みの企画だ」(湖池屋マーケティング本部マーケティング部広報課の小幡和哉課長)

スコーンのブランドサイト上に設立された「スコ学」。課外活動や学園生活を垣間見られるコンテンツなどが用意されている
スコーンのブランドサイト上に設立された「スコ学」。課外活動や学園生活を垣間見られるコンテンツなどが用意されている

 現在展開されているプロモーションは、スコーン学園の教科という設定だ。前回取り上げた「スコ音BEATMAKER」はスコーン学園の音楽の授業である。そして保健体育の科目として打ち出したのが「抱きスコーン」である。これはスコーンの1粒を巨大化し、抱き枕にしたもの。裏面には野性爆弾くっきー、もしくは翔が等身大でプリントされている。

 この抱きスコーンをプレゼントするキャンペーンを2019年2月18日から3月17日まで実施した。それにしても、なぜ抱き枕なのか?

くっきーと翔の等身大の抱き枕「抱きスコーン」。抱きスコーンをゲットできる応募期間は3月17日までで既に終了
くっきーと翔の等身大の抱き枕「抱きスコーン」。抱きスコーンをゲットできる応募期間は3月17日までで既に終了

 「これは大掛かりなボケ(笑)」(小幡課長)

 「ダジャレが好きな湖池屋ならではのキャンペーン。今の若者がスナック離れを起こしている文脈を踏まえ、『スコーンに離れないように抱きついてよ』といった意味合いを込めた。サブテーマとして保健体育的な要素もある。高校生は授業に部活に忙しく、疲れていることが多い。抱きスコーンを抱いて、しっかり睡眠をとってもらいたい」(内田課長)

 狙いはそれだけではない。“美少年と野獣”という正反対のキャラクターを持つ翔とくっきーだからこそ、インパクトのあるプロモーション効果が期待できるのだ。

 「翔くんは若い女性ファンが多い。Instagramや過去の出演ドラマをきっかけに支持されている。くっきーにはお笑いファンや、彼の芸術的なセンスにほれ込んでいるファンが多い。ファン層が重ならない2人だからこそ、幅広い消費者にキャンペーンを訴求でき、スコーンを支持してもらうきっかけにつながる」(内田課長)

目に見えない「なんかいいよね」を獲得する

 現在、その他のスナック(※ポテトチップス以外のスナック)市場には2つの課題がある。1つは「1ブランド、1フレーバー買い」が進んでいる状況だ。ポテトチップスの場合、のり塩、うすしお味、リッチコンソメの3種類がバランスよく売れる。これは消費者が「湖池屋のポテトチップスだから買おう」と“ブランド買い”をしてくれるからだ。しかしその他のスナック市場ではそれが当てはまらず、「消費者は“フレーバー買い”をするようになる」と内田課長は指摘する。

 「『湖池屋のスコーンだから買おう』というのではなく、『バーベキュー味を食べたいからスコーンのバーベキュー味を買おう』という意味合いが消費者には強い。その結果スコーンは、とうもろこし味(どはまり濃いもろこし)とチーズ味(憧れのクアトロチーズ)と比べて、バーベキュー味(がっつきバーベキュー)の売り上げは2倍以上であった。こうした『1ブランド、1フレーバー』の状況は、その他のスナック市場ではよく見られる現象」(内田課長)

スコーンの一番人気はバーベキュー味。ただフルリニューアルをきっかけに、とうもろこし味やチーズ味の売り上げも伸びてきているという
スコーンの一番人気はバーベキュー味。ただフルリニューアルをきっかけに、とうもろこし味やチーズ味の売り上げも伸びてきているという

 さらに時代が進むにつれて2つ目の課題が出てきた。「スナックのコモディティー化」である。現在さまざまなメーカーから多様なブランド、フレーバーが日々送り出されている。新商品であってもたちまち新鮮味がうせ、埋もれてしまいかねない。そうした中で味を差別化し、抜きんでるのは非常に困難だ。

 「1ブランド、1フレーバー買い」と「スナックのコモディティー化」――この2つの課題を解決するのが、今回のリニューアルで重視された情緒的な価値だという。

 「味や値段といったスペック勝負を抜け出すことが、長く愛される商品の条件になる。だからこそスコーンに情緒的な価値を持たせ、買ってくれた人の思い出に“接続”できるようになりたい。スコーンが『コーンの粉から作った単なるお菓子』に成り下がってはいけない。『スコーンは味だけじゃなくて、なんかすてきだよね。なんかいいよね』という、目に見えない『なんかいいよね』を感じてもらう努力を常に続けなければいけない」(小幡課長)

 若者に絶大な人気がある「青春のパワースナック」を目指し、今後数十年愛され続ける商品になるため、スコーンのマーケティング戦略はさらに進化し続けるだろう。

(写真/酒井康治、写真提供/湖池屋)