NTTドコモは2019年3月8日、企業・団体に5G活用を呼び掛けるイベント「5G BUSINESS CAMP IN TOKYO」を開催した。そこでドコモの吉澤和弘社長が繰り返した言葉は、パートナーとの「協創」。既に2300以上の企業、団体、自治体が参画しており、今年9月のプレサービス開始時点からスタートダッシュを狙う。

NTTドコモの吉澤和弘社長
NTTドコモの吉澤和弘社長

 5Gは現在の4G(LTE)に比べて高速、大容量、低遅延が特徴の通信サービス。ドコモは5Gでの通信事業を推し進めると同時に、さまざまな領域で5Gがもたらす非通信事業にも力を入れている。主眼を置くのは、5Gの大容量と低遅延を生かしたライブ体験やスポーツ観戦体験といった“新しい体験の創出”と、医療介護問題や防災防犯、人手不足といった“社会的課題の解決”の2つだ。

 5Gではこれら非通信事業の対象分野が圧倒的に拡大するため、「ドコモだけでは何もできない」(吉澤社長)。そのため、パートナー企業・団体との協創を推し進めていく考えだ。既に2300以上の企業、団体、自治体が参画し、147件の試行を実施。会場ではその中の50件以上の事例を展示した。吉澤社長は19年9月のプレサービス開始に向けて、「初日から、しっかり使えるサービスやビジネスが始まっている。そういう状況を作る」と意気込む。

パートナーは2018年2月の約600から1年で2300以上に増加
パートナーは2018年2月の約600から1年で2300以上に増加
5G時代のドコモの事業は、これまでのようにプラットホームやサービスを提供する立場から、さまざまなサービスをパートナーと協創していくことになっていくという
5G時代のドコモの事業は、これまでのようにプラットホームやサービスを提供する立場から、さまざまなサービスをパートナーと協創していくことになっていくという

セキュリティーやマーケティングで実用レベルのものも

 会場の展示はアイデアや検証段階のものから、既に検証を済ませて商用サービスとして実用可能なレベルに達しているものまであった。実用段階の一例が、NECの「スマート街路灯」。これはLED街路灯にネットワークカメラやスピーカー、デジタルサイネージ、5G基地局、各種センサーなどを集約したもの。ネットワークを使った街灯の管理、ネットワークカメラと顔認証技術を使った迷子や不審者の検知、画像解析による人流の見える化の他、大規模災害時にはネットワークとサイネージを使って避難誘導や情報配信に使うなど、幅広い使い方を視野に入れている。商店街や自治体での導入を目指している。

NECのスマート街路灯
NECのスマート街路灯

 NTTテクノクロスの「インタラクティブサイネージ」は、これまでのデジタルサイネージに加えて、カメラに映った人の年齢や性別などを解析し、その人に合ったコンテンツを表示する。

 リアルネットワークス、ネットワンシステムズ、ネットワンパートナーズによる顔認証ソリューション「SAFR」は、高速で感情も読み取れる顔認証機能が特徴。将来的にはネットワークカメラにこの機能を組んで、5Gを使ってクラウドと通信を行うことで、シンプルかつ低コストで導入可能になる。顔認証によって自動で入館を管理したり、学校に設置して不審者の侵入を検知したりといったセキュリティー用途を想定。さらにホテルや店舗でお得意様を検知したり、コンビニに設置して訪れた客の年齢性別などを解析したりといった、マーケティング用途なども考えられる。いずれもクラウドとの接続に5Gを使うことで、遅延を抑え、レスポンスを高めている。

NTTテクノクロスのインタラクティブサイネージ。前に立った人を画像解析してコンテンツを表示する
NTTテクノクロスのインタラクティブサイネージ。前に立った人を画像解析してコンテンツを表示する

生中継・遠隔医療…拡大する5Gソリューション

 映像分野では、5Gの高速・大容量、低遅延に加え、多数接続という特徴を生かした中継システムなどを展示していた。パナソニックの「スタジアムエンターテインメントソリューション」は、スタジアムにいるカメラマンが背負ったバックパックから、5Gで4K映像を送信。それをスタジアム内に配信して、大勢の観客がスマートフォンやタブレットで視聴したり、遠隔地でライブビューイングを視聴したりといった事例のデモを行っていた。

 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの「Virtual Production」は、簡易的な生中継のソリューションだ。複数のカメラの映像をクラウドに送り、クラウド上のアプリケーションで編集や映像切り替えなどをして配信する。映像送信を有線から5Gにすることで、撮影者の自由度が高まるうえ、カメラとクラウドを利用するパソコンなどのデバイスさえあればいいので、運用コストが抑えられる。想定しているのは、一般企業での社内向けコンテンツ中継や、自治体による祭事の中継など。18年9月に提供を始めた欧州では、一般企業によるイベント中継などに使われているという。

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズのVirtual Productionのアプリ画面。複数カメラの映像とあらかじめ用意した映像を切り替えながら生中継できる
ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズのVirtual Productionのアプリ画面。複数カメラの映像とあらかじめ用意した映像を切り替えながら生中継できる

 NTTビズリンクの「遠隔医療ソリューション」は、遠隔地から患者の映像を5Gで都市部の専門医などに伝送し、医療をサポートしてもらうもの。医療格差の解消などに役立てられる。5Gの低遅延という強みもさることながら、高精細な患部画像やエコー動画なども送信でき、患者の状態をより正確に把握できるのがメリットだ。

 ヤマハは遠隔地にいるミュージシャン同士が、違和感なくセッションできるというソリューション「NETDUETTO」を紹介していた。メンバーそれぞれが自宅にいながらバンド練習をしたり、音楽教室が遠隔地の生徒に授業をしたりするなどの用途を想定している。光回線だと回線場所に制限されるが、5Gを使い、制約から解放する。

 ドコモは20年春の5G本格導入に向けて、海外を含む幅広いパートナー企業・団体とタッグを組み、事業展開や企業間のマッチングなどを支援していく。パートナーと5G技術を検証するための施設「ドコモ5Gオープンラボ」は、既にある東京、大阪、沖縄に加え、グアムにも開設するとのこと。

 ドコモの本気度は、会場を訪れた企業関係者向けのアンケートにも表れていた。配られた用紙に記入して提出すると、ドコモの支援部隊がそれをベースに5G導入を提案するという。「パートナーとともに5Gのソリューションを活用していきたい。アイデアベースから、すぐにサービスイン可能なレベルまで、さまざまなソリューションを用意している。興味がある人は、ぜひ手を挙げて参加していただきたい」と、吉澤社長は呼びかけた。