気になるお口のにおい。「スメハラ」という言葉も浸透し、オーラルケア関連商品の市場も伸びつつある。そこにあの「リステリン」から、新たな商品が投入される。今度は「かむ」タイプのタブレットだ。狙うのはオジサマではなく20~30代。なぜ、口をゆすぐ従来型のマウスウォッシュではないのか。
スメルハラスメント「スメハラ」などという言葉も生まれ、世の中にあるさまざまな不快なにおいに注目が集まっている。同時ににおい対策市場も拡大。特に気になるにおいの代表選手、口臭の予防などにも役立つオーラルケア市場は年々大きく伸びていて、歯磨き用品からミントタブレットに至るまで、どれも売り上げが好調だという。
そんなオーラルケア市場に2019年3月18日、台風の目になりそうな新製品が投入される。ジョンソン・エンド・ジョンソンのマウスウォッシュ「リステリン」のタブレット、「リステリンウォータリータブレット」だ。かみ砕くだけで、口の中をリフレッシュできるというタブレットで、水のない外出先でも口の中の爽快感を味わえるところが、従来の液体タイプとの違いとなっている。
「リステリン」は日本にマウスウォッシュを紹介した最古参ブランドの1つ。2018年に、ようやくシェアトップに躍り出たという。なぜ、そんなタイミングで新製品の発売に踏み切ったのか。そこには、日本ならではのオーラルケア事情がある。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの調査によると、日本でマウスウォッシュを使う人の割合(世帯浸透率)は28%ほど。年々増えているとはいえ、ほとんどの家庭の洗面所にマウスウォッシュが置かれている米国の63%とは、2倍以上の開きがある。その理由は、国民健康保険が整備されている日本と違い、米国では歯周病や虫歯の治療に莫大な費用がかかるからだ。マウスウォッシュで予防を徹底したほうが、はるかに安上がりといえるだろう。
では日本人はオーラルケアに興味がないのかというと、決してそうではない。歯磨きを1日2回以上する人や、歯周病について知っている人の割合で言うと、むしろ米国より多いのだという。ジョンソン・エンド・ジョンソンの浦崎里奈シニアブランドマネージャーはこう話す。
「オーラルケアに関心のある消費者は多いけれど、実際にはマウスウォッシュをしてまでケアしている人は少ない。日本の市場にはそうした“ギャップ”があり、ここに新製品の販売機会があるのではないかと思っている」
同社がもう1つ、新製品発売の背景に挙げるのは、年代別のマウスウォッシュ使用率だ。歯周病や口臭が気になる50~60代にはマウスウォッシュが比較的浸透しているのに対して、圧倒的に使用率が低いのは20~30代だ。今回の新製品では、特にこの世代をターゲットに、リステリンブランドを浸透させる狙いがあるという。
「20~30代の特徴として、人と積極的に関わり合いたい一方で、人にどう見られるかが気になるというインサイトがある。それも単なる見た目のオシャレより、口臭や体臭などの不特定多数への“エチケット”が気になる人が多い。オーラルケア商品に求めている便益も、歯周病や虫歯の予防を抑えて、圧倒的に口臭ケア」(浦崎シニアブランドマネージャー)
今回のタブレットという形状も、この世代に親和性が高い。働き盛りで外出時間も長く、自宅や会社の洗面所で、歯磨きからマウスウォッシュまでケアのフルコースに、じっくり取り組む時間のない人も多い。そんな彼らが手に取っているのは、この世代が好む「フリスク」や「ミンティア」などのタブレット菓子と思われる。
「口臭清涼剤市場は約100億円規模。その約7割が、口臭ケアの効果を求めているとされる。ここに一石を投じていきたいと思っている」(同社マーケティング本部の諸橋桜子氏)
20~30代に届くようにと、マーケティング予算の半分を、これまで中心だったテレビCM以外に割いた。スマートフォンの位置情報を活用し、その人がいる場所に応じてパーソナルな広告を配信するジオターゲティング広告も実施。例えば、渋谷ハチ公前で待ち合わせをしている人に、「デート前に、こういうタブレットはどう?」という広告が届いたりするらしい。
最後に、発売より一足先にそのタブレットを体験させてもらった。ゆっくりかめば口の中が、うるおいいっぱいのミント味に。口を水でゆすいだ後のようなさっぱり感がある。官能検査員のテストでは、きれいな息が4時間持続するとのこと。ポケットに入る新しい形態のマウスウォッシュとして、ターゲットの若者だけでなく、これまで「ぐちゅぐちゅペー」と口をゆすいできた、既存マウスウォッシュのお得意さまである40~50代にとっても注目の商品だろう。