「報酬」には2種類がある
金谷 信の視線の変化は面白いですね。最初の頃は、将軍になって「土地が欲しい」「いい家に住みたい」などというのがモチベーションになっていたと思います。しかし、王騎(おうき)や政などのキーパーソンと出会ったことで、ただエゴや野心で戦うのではなく、深い志を表に出すようになりました。
山野 報酬って、大きく分けて金銭報酬と意味報酬があると思います。金銭報酬とはその名の通り、お金などの物理的なものです。一方、意味報酬とは自己実現や仕事それ自体に価値を見いだすなど、金銭以外のものを指す。今、金谷さんがおっしゃったように、信はまさに目的が金銭報酬から意味報酬へと変わりました。
金谷 akippaを始めた当時、他の既存事業と両方を率いていたのですが、営業代理店の事業では1件契約を取るといくらといった頑張り次第で給料が上がりやすい金銭報酬主体でした。一方akippaの事業は、「困りごとを解決する“なくてはならぬ”サービスを通して社会を変える」というビジョンを掲げた。どちらを選ぶか聞いたら、多くの社員が「もし給料が下がっても、人のためになるakippaを選ぶ」と言ったんです。
山野 特に若い世代を中心に、価値観は変化していると思います。社会との関わりや絆、自己実現を重視する人が増えているのではないでしょうか。
久保田 仕事だけでなく、家庭や趣味などで、それぞれが求める比重は多様化しています。金銭だけで報酬を考えてはダメですね。
金谷 マネジメントの話を中心にしてきましたが、各ポジションで働く人でも腹落ちする部分が非常に多いのが『キングダム』の魅力だと思います。特に、大局観が養われる点。戦術が入り乱れる合従軍との戦いのように、各現場では自分がしている仕事にどういう意味があり、全体でどういう影響があるのか、イメージトレーニングにもなるんです。どんな階層にいても、その上の階層や大局が見えると、おのずと持ち場でやるべきことが見えてくる。視野を広げられる本だと思います。
山野 同感です。新しくマネジャーになる人だけでなく、メンバーが1人増えたとか後輩ができたとか、そういう人でもマネジメントは重要です。本格的なビジネス書が苦手な人でもとっつきやすくマネジメントを学べます。
久保田 自分のポジションが変わったときや、心境の変化があったときに読むのも面白いですね。その都度、気づくことが変わりますから。
山野 そうそう。私も繰り返し読んでいます。






©原泰久/集英社 (写真/竹井俊晴)