プロモーションの鍵は「ASMR」と「オタク」

スコーンのそしゃく音を「スコ音(おん)」と命名。このダジャレにも湖池屋らしさがにじみ出ている
スコーンのそしゃく音を「スコ音(おん)」と命名。このダジャレにも湖池屋らしさがにじみ出ている

 リニューアルと同時期にスタートした若者向けのプロモーション「スコ音BEATMAKER」が、現在注目を集めつつある。湖池屋はスコーンをかじる際に鳴る音を「スコ音」と命名し、そのスコ音だけで音楽作りが楽しめるWebサービス「スコ音BEATMAKER」を開発した。画面上に表示されるタイミングに合わせ、スコーンをかじって楽しむ“音ゲー”の要素を持ちながら、オリジナル音楽を制作できるサンプラーとしても活用できる。

 「スコ音BEATMAKER」は、最近急速に浸透している「ASMR」に着目して開発されたサービスだ。ASMRとは「Autonomous Sensory Meridian Response(自律感覚絶頂反応)」の略で、いわゆる人間の聴覚や視覚に対する刺激によるゾクゾク感や心地良さのこと。YouTubeにはこの反応を促すささやき声や、本のページをめくる音だけの快感動画が流行している。湖池屋はなぜ、このASMRに注目したのか。

 「若い人に刺さるプロモーションを作るため、クリエイティブチームと議論をしていた際、18年2月頃にASMRを見つけた。当時はブームの火も着いていなかったが、はやる可能性があるとにらんだ。これから世に広まって、多くの人が楽しむサービスの波に乗ってプロモーションを打ち出せたら、世間に広まる力はかなり強くなるだろうと。スコ音BEATMAKERの製作段階で、ASMRが多くのメディアに取り上げられたことも運が良かった」と内田課長は振り返る。

 ASMRをプロモーションに活用したのには、別の理由もあった。

 「その一方で、スコーンならではのプロモーションをやりたいと思っていた。ポテトチップスと違い、スコーンはクランチタイプのお菓子。かんだときの食べ応えとザクっとした音が特徴だ。そのスコーンならではの音と、この先はやるであろうASMRという“2つの文脈”を掛け合わせて、プロモーション効果を最大化できないかなと考えた。ASMRに着目して、『ただブームに乗っただけでしょ?』と捉えられたくなかった。『スコーンだからASMRを活用したのね』と、納得できる流れを作りたかった。スコ音(すこおん)という湖池屋特有のダジャレも入れられたのも良かった。オチ感があるというか……」(内田課長)

Web上で利用できる「スコ音BEATMAKER」。楽器と掛け合わせることで、オリジナルの楽曲を作れるなど、本格的にやり込めるサービスだ
Web上で利用できる「スコ音BEATMAKER」。楽器と掛け合わせることで、オリジナルの楽曲を作れるなど、本格的にやり込めるサービスだ

 さらにスコ音BEATMAKERで作成したスコ音ビートは、バンドの楽器と合わせたり、ダンスのBGMにしたり、好きな音楽と組み合わせて自分だけのオリジナルの楽曲を作れる。かなり本格的に使い込めるのだ。

 「SNSやWeb上には新しいものに敏感で、いち早くやり込んでくれる人がいる。いわゆる“オタク”の人々。プロモーションの狙いの一つは、彼らに注目してもらうこと。『ASMRを活用した面白いサービスがある!』と捉えてもらい、彼らが広めてくれて、そこから一般的な層に広まればいいなと。面白いものを求めている人にとっても、スコ音BEATMAKERはクオリティーが高く、楽しく遊べるサービスに仕上がっている」(内田課長)

 湖池屋らしさと最新のASMRを組み合わせた、「スコ音BEATMAKER」。多くの企業が若者に向けたマーケティングに悩む中、老舗の湖池屋が放った施策は示唆に富んでいるといえる。次回、湖池屋のプロモーションについて、さらに深く探っていく。


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