P&Gは食器用洗剤「ジョイ」を1996年の発売以来、初めて洗浄成分からロゴまでを全面刷新した。加えて、スプレータイプの製品を初投入するなどして、家事で最もストレスを感じる人が多いという食器洗いの「時短」に挑む。
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)が2019年2月28日に発表した「ジョイ」の新製品は、手洗い用洗剤「ジョイ」、食器洗い乾燥機専用洗剤「ジョイ ジェルタブ」、スプレータイプ「ジョイ ミラクル・クリーン泡スプレー」の3つ。いずれも従来製品よりも洗浄力を強化し、油汚れなどが短時間ですっきり落ちるという。発売はジョイとジョイ ジェルタブは3月上旬、ジョイ ミラクル・クリーン泡スプレーは3月下旬。
3製品の中で注目はシリーズ初のスプレータイプとなるジョイ ミラクル・クリーン泡スプレー。特許を取得した洗浄成分の配合で、スプレーした後、水でそそぐだけで頑固な油汚れなどを落とせるという。面倒なスポンジ洗いが不要なことはもちろん、スポンジが届かない汚れなどにも有効だ。
また、食器用洗剤で初めて、調理器具や食器の大きさに合わせて広範囲の泡と細い泡の2種類が出せるスプレーヘッドを使用し、1本で用途を使い分けられる。P&Gの執行役員でマーケットストラテジー&プランニング兼ホームケアのヴィリアム・トゥラスカ氏は、「2役のスプレーヘッドは史上初」と自信を見せる。
8割がストレス、「時短」進まない食器洗い
23年ぶりに全面刷新したジョイのターゲットは共働き世帯などの「家事に忙しい夫婦」だ。その背景には、日本人のライフスタイルが変化し、共働き世帯が発売当初(96年)の40%から70%と大幅に増えたことがある(厚生労働省「平成29年 国民生活基礎調査の概況」)。市場にも家事の負担を減らすことをアピールする「時短製品」が数多く登場しており、ヒット商品も生まれている。
P&Gでは、衣料用洗剤ではすでに時短に取り組んでいる。14年には衣料用洗剤の「アリエール」から初めてのジェルボール型洗剤「アリエール ジェルボール3D」を発売。3年間で1億個以上を売り上げた。
一方、食器洗いの時短ではライオンが、すすいだ後の食器を素早く乾かす成分を配合した「CHARMY Magica速乾+」を17年9月に発売した。とはいえ、P&Gは食器洗いの時短は進んでいないと見ている。同社が約400人に行った独自調査によると、食事に関する家事のうち、最も時短が進んでいない家事が「食器洗い」で、約8割の人がストレスを感じているという。ネットショップやミールキットなどの浸透で時短が進む買い物や料理に比べて大きな負担になっている実態が浮き彫りになった。
今回の新生ジョイでは、汚れ落ちという食器用洗剤の基本機能を強化して時短を目指す。時短効果を訴えるため「食器洗いストレス、ゼロへ」というスローガンを掲げてプロモーションに力を入れる。食器用洗剤に除菌という発想を取り入れるなどイノベーションを続けてきたジョイ。食器洗いにも時短という革命を起こせるか。
(写真/北川聖恵)