メルカリと三菱総合研究所は、フリーマーケットアプリの利用者1642人を対象にアンケートを実施。アプリ利用前後の行動心理・購買内容の変化を分析した。その結果、モノに対する価値観が「所有」から「一時利用」に変わることで、新しい消費行動「SAUSE」が見て取れるようになったという。

新品購入の際、将来売却することを意識するかという問いに対し、新品洋服購入時では65%、新品化粧品購入時では50%の利用者が、「意識する」と回答。「後で売却する」という意識は、モノの選択に大きく影響を与えていた(注)
新品購入の際、将来売却することを意識するかという問いに対し、新品洋服購入時では65%、新品化粧品購入時では50%の利用者が、「意識する」と回答。「後で売却する」という意識は、モノの選択に大きく影響を与えていた(注)
[画像のクリックで拡大表示]

消費者は「売却」を意識して「新品を購入」する

 メルカリと三菱総合研究所が実施した「シェアリングエコノミーに関する意識調査」から分かったのは、半数以上のフリマアプリ利用者が「新品の購入時にフリーマーケット(フリマ)での売却を念頭においてモノを選択する」ようになったこと。

 シェアリングサービスについては、これまで個人の遊休資産を貸与・売買するというサービスの特性上、「節約」「新品購入頻度の減少」といったイメージがあった。しかし、アンケート結果からはむしろ購入頻度の増加、高価格帯への移行といった正反対の傾向が見受けられたという。同調査ではこの結果について、モノに対する消費心理が「所有」から「一時利用」に変わったことが原因だと分析している。

フリマアプリの利用後、36%が新品の洋服の購入頻度が変わったと回答し、うち19%は購入頻度が増加。化粧品の場合、28%が新品の購入頻度が変わったと回答し、うち14%は購入頻度が増加
フリマアプリの利用後、36%が新品の洋服の購入頻度が変わったと回答し、うち19%は購入頻度が増加。化粧品の場合、28%が新品の購入頻度が変わったと回答し、うち14%は購入頻度が増加
[画像のクリックで拡大表示]
フリマアプリの利用後、52%が購入する洋服の価格帯が変わったと回答し、うち28%が高価格帯に移行。化粧品の場合、33%が購入する化粧品の価格帯が変わったと回答し、うち18%が高価格帯に移行した
フリマアプリの利用後、52%が購入する洋服の価格帯が変わったと回答し、うち28%が高価格帯に移行。化粧品の場合、33%が購入する化粧品の価格帯が変わったと回答し、うち18%が高価格帯に移行した
[画像のクリックで拡大表示]

 調査の結果から三菱総合研究所ではシェアリングサービス普及後の新しい消費行動を「Search(検索)」「Action(行動)」「Use(一時利用)」「Share(再販売)」「Evaluation(評価)」の頭文字を取って「SAUSE(ソース)」と定義した。

シェアリングサービス普及後の消費行動「SAUSE」
シェアリングサービス普及後の消費行動「SAUSE」
[画像のクリックで拡大表示]

 「SAUSE」のポイントは以下の3点だ。

  • 1. 検索から始まる消費行動
    スマートフォンの普及によって意思決定までのプロセス(認知・興味・関心)が一元化され、リアルタイムで情報収集(検索)に至る
  • 2. モノの「所有」から「一時利用」に変化
    購入したモノを一時的に利用するものとして捉えることで、消費においてもその意識に影響された行動を取る
  • 3. モノの貸与・売却後に決まる評価
    シェアリングによるモノの貸与・売却を通じて、「利用対価(購入価格から売却価格を差し引いた実質の支払額)」という観点でモノを評価する

 購入頻度が増加した理由として上位に挙がった項目の1つに「フリマアプリでの売れ行きが良いから」がある。これは、「後で売却できる」という意識が、モノの購入に対する心理的ハードルを下げたと考えられる。また購入するモノが高価格帯に移行する傾向は、フリマアプリの利用率が高いと推定される20代、30代に強く表れているのが興味深い。

20代、30代で見ると、洋服の場合45%、化粧品の場合36%が高価格帯にシフトしたと回答した
20代、30代で見ると、洋服の場合45%、化粧品の場合36%が高価格帯にシフトしたと回答した
[画像のクリックで拡大表示]

 現状、「SAUSE」が定義した消費行動は、フリマアプリの利用者の一部に見られる傾向にすぎない。しかし、シェアリングサービスの普及に伴い、社会・経済全体に大きな影響を与えることが予想されている。企業のマーケティング活動においては、今後、消費者がシェアリングを通じて自社商品に接していることを考慮に入れたブランド戦略や販売戦略が重要となってくると考えられる。

注)ウエブアンケート「シェアリングエコノミーに関する意識調査」が実施されたのは2018年9月21日から27日にかけての1週間。調査対象はフリマアプリで洋服を売買した経験のある20歳以上の男女と、化粧品を売買した経験のある20歳以上の女性で、3カ月に1回以上アプリを利用していることが条件となっている。