メルカリの全額出資子会社のメルペイは、2019年2月13日にスマホ決済サービス「メルペイ」を開始した。メルカリの売上金や銀行口座からチャージした電子マネーで実店舗での支払いができる。今春には購入額の後払いサービス「メルペイあと払い」も始める予定。利用者拡大の売りになりそうだ。
従来、メルカリで商品を売って得た売上金は、メルカリ内での購入に使うか預金口座に移して現金化することで使用できた。ただ、売上金が1万円未満だと210円の手数料がかかるため、少額のやり取りではメルカリ内に残すユーザーが多かった。
だが、メルペイが登場したことで、今後は売上金を電子マネーとして使えるようになる。銀行口座とひも付ければ、預金からチャージし、売上金と併せて支払うことも可能。現状、メルペイが使えるのは、NTTドコモの非接触決済サービス「iD」の加盟店約90万カ所だが、3月中旬にはコード決済に対応し、合計135万カ所に拡大する予定だ。コード決済基盤「スマートコード」を推進するJCB、4月に「au Pay」を開始予定のKDDIなど、複数企業と普及に向けた提携も進めており、「19年中には200万カ所(での導入)を目指す」とメルペイの青柳直樹社長は意気込む。
メルカリの1200万会員が基盤
メルペイの利用者や店舗拡大の武器になるのが、月間利用者1200万人以上、年間売上金5000億円以上というメルカリの基盤だ。メルペイはメルカリアプリの1機能として提供されるため、メルカリ会員なら新規アプリのインストールや利用登録が必要ない。既にたまっている売上金があれば、チャージも不要だ。使い始める際の障壁が他のスマホ決済サービスに比べて低い。
このため、既存のスマホ決済サービスが積極的に行っているキャッシュバックキャンペーンなどは「今のところ考えていない」と青柳社長。後発でありながら、あくまでも使いやすさで利用を伸ばそうという強気の姿勢だ。
メルカリの基盤は、加盟店拡大においても強みを発揮する。メルペイでは、メルカリやメルペイの会員の居住地域や利用履歴などを分析。メルペイが使われやすい地域から優先的に加盟を促進する。加盟店が少ない初期段階から、メルペイが使える地域を効果的に増やすのが狙いだ。また、会員の分析データを加盟店のマーケティングや集客、商品開発に生かせるような仕組みも用意する。
メルカリの信用をベースに後払いを導入
まずはメルペイの利用促進と加盟店拡大を進めるメルペイだが、目指しているのはさらに先、「一時流通と二次流通の連携」(メルカリの山田進太郎会長兼CEO)だ。その具体策として、19年春には「メルペイあと払い」サービスを導入するという。
メルペイあと払いは、メルカリで一部の利用者に提供している後払いサービス「メルカリ月イチ払い」をリニューアルし、実店舗での決済にも範囲を広げるもの。メルカリでの取引実績などに基づいた会員の“信用”を軸に、メルペイの残高が不足していても、翌月払いで商品を購入できるようにする。
想定しているのは、残高不足の状態で本を購入し、読み終えたらメルカリで販売して、その売上金を本の購入費に充てるといった使い方だ。「本をレンタルするような感覚で楽しめる。こうした体験はメルカリとメルペイならでは」と青柳社長。将来的には、ネット通販での決済にも対応する他、メルペイで決済した商品はワンタップでメルカリに出品できるようにする構想もある。
中古品の個人間取引を手軽にし、すそ野を一気に拡大したメルカリ。今や、メルカリの会員は「売ることを前提に商品を購入している」と山田会長兼CEOは言う。このサイクルにメルカリ以外の店舗も巻き込むことで、決済プラットフォーム自体を大きく変えようとしている。