エースコックがカレーのココイチと長崎ちゃんぽんのリンガーハットという人気チェーンと共同で、独自の低糖質麺を使ったカップ麺を開発した。チェーン側は店舗で提供する低糖質メニューの認知度アップに期待する。
エースコックが新開発の低糖質麺を使い、カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)、リンガーハットという人気外食チェーンの味を再現した低糖質カップ麺「ロカボデリ」を発売した。「スープはるさめ」や「わかめラーメン」といった女性を狙った商品や、「麺ごこち」など低糖質を前面に打ち出し、食事制限の必要な人に向けたヘルシー食品でヒットを飛ばしてきたエースコック。今回のロカボデリでは、男性や食事制限が必要ない人も視野に入れ、ターゲットを広げたという。
「(ロカボデリは)『モッチッチ』のような既存商品で培った特殊な製麺技術の向上で実現できた。人気店のラーメンかと思って食べたら、低糖質だったというように、楽しく気楽に食べていただきたい」とエースコックの村岡寛社長は話す。
エースコックによると、ココイチの壱番屋もリンガーハットも、既に店舗で低糖質メニューを展開していることもあり、共同開発に対する理解を得やすかったという。一方のチェーン店側も、低糖質カップ麺の発売で、来店客に自社の低糖質に対する取り組みをアピールできるという利点がある。
2019年2月19日発売のロカボデリは、北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が代表を務める一般社団法人食・楽・健康協会が提唱する「ロカボ」に賛同するエースコックと壱番屋、リンガーハットが共同で開発した。「ロカボ」とは、「おいしく楽しく適正糖質」というコンセプトの下、1食当たりの糖質量を「20~40グラム+間食10グラム」に制限するというもの。
「低糖質食は低カロリー食(脂質食や地中海食)に比べて体重の減量に有効。さらに糖尿病の発症や進行を抑えるために重要な、食後血糖値の上昇も低く抑えられる。低糖質さえ守れば、おいしいものを好きなだけ食べるという“不摂生”をしながら健康も増進できる。低糖質食を実施した患者へのインスリン投与量も減少したという結果もあり、医療費削減にもつながる」(山田悟氏)
新商品のロカボデリは、いずれも1食当たりの糖質量が、スープを飲みほしても25.1~30.2グラムに収まるという。
ココイチとリンガーハットの低糖質への取り組み
壱番屋は18年12月から全国のココイチで、ライスの大半を“カリフラワーライス”に置き換えた低糖質メニュー「CoCo de オフカレー」を販売している。
「低糖質メニューの開発は進めていたものの、カレーライスという(糖質の高い白米を多用している)性質上、うちでは低糖質は無理だという認識があった。今回のお話をいただき、背中を押される形で開発のスピードが上がった。ロカボデリでココイチにもロカボカレーがあるんだと、来店動機にもつながればいい」(壱番屋の葛原守副社長)
現在のところ、お客の反応は上々とのこと。「全部カリフラワーにしてほしい、メニューを増やして自由に組み合わせたいという声もいただいている。そういった意見を基に、今度も検討していきたい」(葛原副社長)と語る。
リンガーハットでも低糖質メニューへの取り組みを続けてきた。15年4月には糖質を60%カットした「野菜たっぷり食べるスープ」を発売したが、この商品には麺が含まれていなかった。そこで同社は“低糖質ちゃんぽん”の開発に力を入れてきたという。
その努力が実り、19年3月1日からプラス100円で自社開発の“低糖質麺”に変更できるサービスを始める。小麦粉のブレンドや麺以外の製法は従来のまま、特殊なでんぷん質を麺に加えることにより、糖質を抑えながらもぼそぼそとした食感にならないのが特徴だ。
「今回のロカボデリで低糖質のちゃんぽんがあるという認知度を高め、店舗でも低糖質メニューを展開していることを知ってもらえればいい。年間120万食を目指したい」(リンガーハットの佐々野諸延取締役)
「おいしく楽しく適正糖質」の“一石三鳥”を目指すロカボ商品。ロカボデリの開発に携わった3社は、企業(利益)、国(医療費削減)、消費者(健康増進)についても、“三方よし”を果たせるだろうか。
(写真/北川雅恵)