2019年2月5日に開業したばかりの「星野リゾート BEB5(ベブファイブ)軽井沢」は、20~30代をターゲットにした宿泊施設。近年、国内に増加するライフスタイルホテルのようなカジュアルな雰囲気で、フロントは、DJブースのような造りになっている。星野リゾートによる若者マーケット開拓は成功するか?
BEB5 軽井沢開業のプレス発表会で、星野リゾートの星野佳路代表は「インバウンドよりも若者旅」と語り、新たなターゲットを強調。星野リゾート5つ目となる新たなサブブランドの可能性に言及した。
若年層獲得という新たな挑戦
星野代表によると、現在の日本の観光産業はインバウンドを主なターゲットと捉えているが、中長期で考えると若年層を獲得できていないことが不安材料だという。「国内旅行の8割は、日本人によるもの。どうすれば若年層にもっと旅行してもらえるかを研究しようと立ち上げたのが、BEB5 軽井沢。将来の旅行産業を支える20~30代に、もっと国内旅行の魅力を知ってもらえたら」(星野代表)。
BEB5 軽井沢の客室は定員3名の「YAGURA Room」やツインルームなど73室。コンセプトは「仲間とルーズに過ごすホテル」。これは、肩肘張らず、友人たちと自由な時間を過ごせる宿泊施設を意味する。その象徴である1階の共有スペース「TAMARIBA」を中心に、「卓上アイスホッケー」や「スウェディッシュトーチ」といったさまざまな遊びを、24時間いつでも楽しめるように用意している。
ターゲットが若年層であることをダイレクトに表現したユニークな施策が「35歳以下エコひいきプラン」だ。35歳以下なら365日いつでも、1室1万6000円で1泊できるという料金体系となっている。2名なら8000円、3名なら5000円強と、1部屋の宿泊者が増えるほど割安になる。数カ月前から予定を立てるのではなく、思い立ったときに出かける気ままな旅。割安な宿泊料によって、20~30代に重い腰を上げさせたい考えだ。
この料金体系には、もう一つの狙いがある。それは、曜日や季節で宿泊費が変動する「レベニューマネジメント」によって複雑になった、日本の宿泊料金の見直しだ。稼働率を上げ、収益を最大化するレベニューマネジメントが浸透した一方で、信頼感を失っているのではないか、と星野代表は考える。「同じ部屋、同じ体験なのに、曜日や季節で宿泊費が3~4倍になる。分かりやすい価格に戻していくことも、トライしていきたいことの一つ」と語った。
30歳の総支配人が語る「ターゲットを若者と呼ばない理由」
総支配人になった経緯は?
「星のや軽井沢」に約6年間勤務し、ここに来る直前までは、サービスチームのユニットディレクターをしていました。2018年9月に社内制度を利用して、星のや軽井沢の総支配人に立候補しました。最終的に、新たにオープンするBEB5 軽井沢の総支配人を任されることになりました。
若年層の旅のニーズを、どのように把握したのでしょうか?
私は1988年生まれでちょうど30歳。自分自身が宿泊客のターゲットに重なるものの、これまで星のや軽井沢という、BEB5 軽井沢とはかけ離れた環境で働いてきました。社内のマーケティング担当者と共にフォーカスグループインタビューを実施。20~30代の男女を対象に、3人1組のインタビューを複数回行いました。誰と過ごすかを最重視するなどの調査結果を、コンセプトづくりに生かしました。
調査結果を受けて変えたことは?
例えば、当初はターゲットを示すのに「若者」という言葉を使っていましたが、20~30代にとっての若者は、大学生くらいのイメージ。若者という言葉を使うと20~30代には、「自分たちが行くホテルじゃない」と取られかねないため、20~30代と表現を改めました。 2019年1月には開業に先立ち、スタッフやその友人を招いて運営オペレーションをテストするプレオープン日を設けました。朝、ソファにいた5~6人のグループが、持参したドリッパーでコーヒーをいれるなど、自由に過ごす姿を目の当たりにしました。1階の共有スペース「TAMARIBA」が深夜2時くらいまでにぎわっていたのも狙い通り。手応えを感じました。