中古車販売大手のIDOMの北島昇執行役員が同社を2019年1月末で退社し、MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)のスタートアップに移籍することが分かった。北島氏は月額契約でクルマを乗り換えられるサブスクリプションサービスなどの新規事業を推進してきた。MaaSスタートアップで地方の活性化に挑戦する。

MaaSスタートアップに転じる北島昇・元IDOM執行役員(写真:室川 イサオ)
MaaSスタートアップに転じる北島昇・元IDOM執行役員(写真:室川 イサオ)

 北島氏が移籍するMaaSスタートアップは徳島市の電脳交通。2019年2月中旬の取締役会での承認を経て、電脳交通の取締役に就任する予定だ。昨年12月に新設したモビリティ事業本部も統括する。北島氏は移籍の理由について「MaaSなどの移動サービス、従来型業界の変革、そして地方活性化。この3つに関わりたいという思いがあった。それらがそろっているのが電脳交通だった」と明かす。

 電脳交通は地方のタクシー会社の配車センターの業務を提供していることで有名なスタートアップである。2015年12月の創業で従業員は約50人。地方のタクシー会社にとって大きな負担となっている、配車業務のアウトソーシングを引き受けており、サービスを24時間365日提供している。サービスはクラウド型で提供しているが、「各社に出向いてローカルルールを聞き取って取り入れることで、従来と同様の配車を行えるようにしている」(電脳交通の近藤洋祐代表取締役社長)という。

 契約するタクシー会社は徳島県内や四国にとどまらない。東京、大阪、福岡、埼玉、香川、愛媛、高知、岡山、山口などに広がる。13都府県で約56もの事業者と契約している。全国から契約の依頼は増えているが、「現地調査もあるので、申し込みから開始まで半年程度お待ちいただいている」(近藤社長)との状況だ。

電脳交通はタクシーの配車支援を基盤にMaaSビジネスへの展開を視野に入れる(出所:同社ホームページ)
電脳交通はタクシーの配車支援を基盤にMaaSビジネスへの展開を視野に入れる(出所:同社ホームページ)

 電脳交通は各社のタクシーの位置や実車の状況を取得するためのプラットフォームを運用し、各地域の移動ニーズの把握に結びつくビッグデータを保有している。それらを分析することで、地方交通の課題解決やインバウンドへの適切サービス提供に生かすことが期待されている。また、同社のプラットフォームは、ライドシェアなど他のMaaSとも連携できるようになっているという。

 こうした点を評価し、日本交通グループのJapanTaxi、NTTドコモ、JR西日本グループのJR西日本イノベーションズなどMaaSの主要プレーヤーやその関連会社も出資している。例えば、JR西日本グループは鉄道と、電脳交通の構築するタクシー事業者それぞれのネットワークを連携させていく。

 電脳交通の近藤社長は、北島氏を迎え入れる理由について、「MaaSに本格的に取り組もうとすると、他業種の企業と広く連携できる人材が欠かせない。また、全国のタクシー事業者とのビジネスが増えており、大きな組織をマネジメントできる人材も必要になっていた。北島さんはこの両方を兼ね備えていたが、本当に来てくれるとは思っていなかった」と説明する。2019年中には東京に事務所も開設する。

 北島氏はスタートアップの経営を経て、2007年12月にガリバーインターナショナル(現IDOM)へ入社。経営企画やマーケティング、新規事業開発などに従事していた。16年から執行役員として新規事業を担当し、同年7月に在庫の中古車を利用したクルマのサブスクサービス「NOREL」を発表。直近は執行役員として、経営戦略室、人事、広報、カスタマーサクセスの4部門を統括していた。

2016年7月のイベントで発表直後の「NOREL」について説明する北島氏(左、写真:陶山 勉)
2016年7月のイベントで発表直後の「NOREL」について説明する北島氏(左、写真:陶山 勉)