アプリ利用2万件、パス購入1万人を目標

 続いて、予約については下田エリアで展開されるAIオンデマンド乗り合い交通に対応。Izukoアプリ上でタブを切り替えて配車予約することが可能で、こちらは国内で多くの実証実験を手掛けている未来シェア(北海道函館市)のシステムと連携している。その他、アプリからの外部リンクだが、レンタルサイクル(伊豆ぽた、ソフトバンク系のハローサイクリング)と、レンタカー(JR東日本レンタリース)の予約も可能だ。

 決済についてはクレジットカードに対応し、2日間有効のデジタルフリーパスが2種類用意されている。「Izuko イースト」(3700円)は、伊豆急全線と伊東市内、下田駅周辺の路線バスが乗り放題になるチケット。もう1つの「Izuko ワイド」(4300円)は、伊豆箱根鉄道の駿豆線全線、修善寺駅、下田駅周辺の路線バス乗り放題に加え、東海バス(修善寺―河津)、伊豆急線(河津―下田―伊東)が、一方向のルートのみ乗り降り自由になる。

伊豆MaaSの展開エリア。「Izuko イースト」(3700円)と「Izuko ワイド」(4300円)の2種類のデジタルフリーパスを販売する
伊豆MaaSの展開エリア。「Izuko イースト」(3700円)と「Izuko ワイド」(4300円)の2種類のデジタルフリーパスを販売する

 例えば、伊豆急の伊東―下田間だけで往復3240円かかるので、今回のデジタルフリーパスは割安な設定といえる。アプリ上でチケットを購入した後は、各交通機関に乗る際にアプリ画面を見せるだけ。有効期間中はアプリ画面の下側にある鉄道のアニメーションが動く仕組みになっており、駅員などはそれを確認するという。

 また、Izukoアプリでは小室山リフトや下田海中水族館といった対象エリアにある観光施設の入場券が事前購入できるのも大きなポイント。どれも最安値で、もちろん、こちらも入場時にアプリ画面を見せるだけだ。さらに、対象の観光施設でデジタルフリーパスを提示すると割引を受けられるサービスも提供する。単なる経路検索アプリではなく、移動の先にある「目的」もMaaSアプリに取り込むことで、地域観光の推進につなげる狙いだ。

 先述したように、今回の実証実験では、新たな交通サービスとしてAIを活用したオンデマンド乗り合い交通も導入される。伊豆急下田駅の南側2㎞程度のエリアを対象に、8~9人乗りのジャンボタクシーが平日1台、休日2台稼働。20~30カ所のバーチャル停留所が設定されており、ユーザーがIzukoアプリで乗車場所、降車場所を選ぶと、近くにいる車両をリアルタイムでマッチングし、最適な走行ルートをAIで決定する仕組みだ。運行は伊豆東海タクシー、ヒフミタクシー、栄協タクシーの3社が務める。

 この乗り合い交通の対象エリアには、病院や銀行、スーパーなど日常使いの施設の他、幕末に下田の芸子として人気を博した唐人お吉ゆかりの料亭「安直楼」、ペリー艦隊来航記念碑といった観光スポットが点在している。しかし、旧市街地のため道幅が狭く、地元の人にとっても観光客にとっても、交通至便とはいえない状況だった。ここに「タクシー以上、バス未満」のフレキシブルに移動できる乗り合い交通を導入することで、街の回遊性を高め、活性化を図る狙いだ。

 AIを活用した乗り合いタクシーは第1弾の実証実験(4月1日~)では無料で提供し、第2弾(9月1日~)では対象エリアを拡大し、有料で運行する計画という。「Izukoアプリを通して大量輸送を担う鉄道やバスと連携し、ラストマイルをきめ細かく面でカバーする2次交通サービスとして定着させたい。それが、地域交通を持続可能なものにし、街のにぎわいを生み出す原動力になる」(東急の森田氏)と話す。

 今後Izukoアプリでは、第2弾の実証実験に合わせてホテルや旅館の予約連携を行い、Izuko専用の割安な宿泊セットプランなども打ち出す構え。対象エリアに西伊豆も加える計画だという。東急とJR東日本は、合計6カ月にわたる実証期間中、Izukoアプリのダウンロード数で2万、デジタルフリーパスの利用者数は1万人と、意欲的な目標を掲げる。「観光型MaaS」の壮大な実験を通して、地域の課題解決につながることを期待したい。